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相手を動かす魅力的プレゼン話術と分かりやすいスライド作成術

目次
はじめに – 製造業における「伝える力」の重要性
現代の製造業は、単にモノを作ればよい時代から大きく変化しました。
生産技術や自動化が進む一方で、プロセス改善や新規導入設備の提案、コストダウン戦略など、多くの「プレゼンテーションの機会」が社内外で増えています。
私自身も工場長や購買部門の管理職として数多くの会議、社内外折衝、サプライヤーとの交渉を経験してきましたが、実は“話のうまい人”が必ずしも“相手を動かせる人”ではありません。
本記事では、調達購買、生産管理、品質管理、工場自動化など、製造業の現場ならではの目線から、相手を動かすためのプレゼン話術と、わかりやすいスライド作成術について解説します。
なぜ今、「プレゼン力」が問われるのか?
昭和の現場からデジタル現代へ – 変わる製造現場の人間関係
かつての製造現場では「背中で語る」「言わなくても分かるのが職人」という文化が根強くありました。
しかし、グローバル化やIT技術の進展、ジョブローテーションの加速化により、部署や国籍、年齢、立場の異なる人たちと密にコミュニケーションを取る必要が出てきています。
それも、一度限りではなく、日常的に情報共有や提案を「分かりやすく、短時間で」行うことが求められるようになっています。
現場でプレゼン力が求められる3つのシーン
- 1. 設備導入や新技術採用の提案:経営層や他部門を説得し、予算や人員を確保する必要がある
- 2. サプライヤー選定・交渉:コストだけでなく品質、納期の優位性を論理的に説明し、有利な条件を引き出す
- 3. 品質問題やトラブル報告:再発防止策と共に、全関係者が納得できる説明・報告を行い協力を得る
これらはすべて「伝える力」「相手を動かす力」が問われる場面です。
相手を動かす話術 – 製造現場流“リアリティ”の持たせ方
1. 相手の立場でゴールを設計する
プレゼンを成功させるには、相手に「自分ごと化」してもらうことが重要です。
バイヤーならコストとデリバリー、製造現場なら安全性と作業負荷低減、経営層なら投資対効果。
それぞれのKPI(価値観)は異なります。
例えば「自動化設備」を導入したいなら、
・作業者には「楽になる」「ケガが減る」
・リーダーには「ラインスピードが上がる」「不良の原因を潰せる」
・経営者には「投資後1年でコスト回収できる」
といった、各立場“ごとのメリット”を冒頭で明確に述べることが第一歩です。
2. “現場実話”を織り交ぜる
特に昭和から続く製造業の現場は“理屈よりも実績”で人が動きがちです。
そこで、改善事例や小さな成功体験(現場の声やクレーム事例、現物写真など)をスライドや口頭で挟むだけで、説得力が段違いに増します。
例えば「この設備を入れた工場では欠品が半減、現場リーダーのAさんから『夜間に呼び出される頻度が激減しました』と声が上がっています」
こうした“体温のある言葉”は、どんなデータより相手の心に響きます。
3. 給与や評価につながる成果を具体化する
特に現場社員や協力会社の方を動かしたければ「この改善で●%工数が削減でき、ラインリーダーの負荷が減る。結果、他の業務に集中でき昇格や手当アップのチャンスが増える」と、現実的かつポジティブな未来像を描写してください。
分かりやすいスライド作成術 – 製造業のための基本原則
1. “1スライド1メッセージ”の鉄則
よくある失敗が、一枚のスライドに要素を詰め込みすぎて結局何が言いたいのか伝わらないプレゼンです。
1スライド=必ず1つの主張や結論に絞る、を徹底しましょう。
「なぜ今この設備が必要か」「この製品の競争優位は何か」などシンプルに打ち出してください。
2. 数字とグラフで“現状→改善”を可視化
口頭の説明や文章だけでなく、
・ビフォーアフターが一目で分かるグラフ
・歩留りや設計不良のパレート図
・コスト削減額の棒グラフ
を必ず使いましょう。
特に昭和的な現場では、過去実績や数字で話をすると納得感が高まります。
3. 写真とイラストでグッと伝わる
社内の標準化資料やサプライヤーへの説明資料でも効果抜群なのが“現場写真”や“イラスト”です。
床が散らかった状態と改善後の現場など「百聞は一見に如かず」を意識しましょう。
難しい仕組みや工程も、手書き風の図やアニメーションを使うだけでグッと理解が進みます。
4. フリガナ・やさしい日本語を心がける
高齢のベテラン社員、外国人スタッフ、他部門の人が読むことも考え、「●仕掛け品管理(Work-in-process)」「●ヒヤリ・ハット(Near-miss incident)」など説明語やフリガナ、簡単な日本語に言い換える配慮も忘れずに。
伝わるプレゼンテーションの進め方 – 段取りと進行のコツ
1. “概要→詳細→実績→次のアクション”で構成する
資料に流れがなく、話の意図が伝わらない…これはよく聞く悩みです。
定番ですが、
– 今回の目的/問題点(Why/What)
– 取り組み内容と改善施策(How)
– 実績・効果(Result)
– 今後のアクションと協力依頼(Next)
という順で進めます。
特に相手が上層部や取引先の場合は、先に結論や要件をもってきて、その後で粘り強く補足説明を足すのも有効です(ピラミッドストラクチャー)。
2. 質問タイムは“場を温める”チャンス
質疑応答=単なる答え合わせだと考えるのではなく「現場の意見や反論を拾い、よりよい改善案に仕上げる場」として活用してください。
反対意見が挙がったときも、
「それは想定していました。本日ご意見いただいた内容も加味し、より全員が納得できる案に仕上げます」と柔軟に受け止めることで、現場全体の動きを後押しします。
サプライヤー/バイヤーに伝わるプレゼン戦略 – 裏側の“本音”
サプライヤーの立場からみたバイヤー心理
バイヤーがプレゼンを受けるとき、真に関心があるのはコスト・納期・リスクの三大要素です。
しかし、実は
・その提案に“現場の声”が反映されているか?
・実際に自社工場に適合するか?
・万一トラブル時に責任対応してくれる信頼感があるか?
といった“目に見えない安心感”を重要視しています。
サプライヤーとしては、「実際の導入現場の状況」や「サポート体制」「実名の担当者」を紹介することで、バイヤーの懸念を払拭しましょう。
また、バイヤーもその提案を社内で“再プレゼン”しますので、“社内の他部署も説明しやすい資料”を用意することも重要です。
昭和アナログ業界の“染み付いたツボ”を押さえる
– “メールより電話”“本音は懇親会で”という文化は意外と根強い
– 横文字、IT用語で煙に巻くと年配層は萎縮する
– 資料はA3カラー、もしくは模造紙に手書きで流れ図を描くとウケがよい
– 「現物」や「実機」で示すデモは説得力抜群
これらアナログの“ツボ”を知っておくと、想像以上に案件がスムーズに進みます。
まとめ – 声が届くと、現場が変わる
製造業の現場で相手を動かすためには、カッコよく話すテクニックや派手なスライドよりも、“相手目線のストーリー”と“現場の事実に根ざした説得力”が何よりも効果的です。
特に、現場やバイヤーの“困りごと”を先回りし、成功への“安心感”を具体的に描くことが肝心です。
この視点を忘れなければ、世代や肩書きを越えて人は必ず動いてくれます。
あなたも、ぜひ明日からの現場で、相手を動かすプレゼン話術と分かりやすい資料作成術を実践してみてください。
製造業の発展は、あなたの「伝える力」次第です。
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