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工程FMEA実施手順事例故障モード抽出原因分析不具合未然防止留意点

目次
はじめに:なぜ今、工程FMEAが重視されるのか
製造業の現場は、かつて昭和から続く「経験則」と「勘」の世界から、いまやグローバル品質競争の中で「科学的・論理的な未然防止」に舵を切る必要性がますます強まっています。
その代表的な手法がFMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)です。とくに「工程FMEA」は現場の作り込み品質を支える生命線ともいえる存在となっています。
それでも、現場からは「形骸化した資料づくりに堕してしまっている」「具体的な気づきや効果が実感しにくい」「どこまでやればよいか分からない」といった声も根強くあります。
本記事では、現場の実情に即した「工程FMEAの実施ステップ」「故障モード抽出の思考法」「原因分析のコツ」「不具合未然防止に効果を発揮するための留意点」といった、実践的ノウハウを20年以上の現場経験をもとに徹底解説します。
また、バイヤー視点・サプライヤー視点でFMEAに何を求めるべきかも交え、これからの製造業改革・品質先取りのヒントとしてお届けします。
工程FMEAとは何か:形骸化を防ぐ本質理解
「FMEAとは何か」から現場で押さえておきたいポイント
FMEAは「どこが壊れるか」「その時どういう不具合が出るか」「なぜそうなるか」を体系的に洗い出し、リスク評価して「未然防止対策を決める」一連のプロセスです。
工程FMEA(Process FMEA)は、その名の通り”製造工程”に着眼します。設計FMEAとは異なり、「工程で起こりうる失敗」を現場目線で徹底的に洗い出すことが肝です。
形だけのFMEAが失敗する主な要因は、「紙の上の作業」だからです。
本来、FMEAは“現場の暗黙知”を形式知化し、真の「現場力の見える化」「伝承」「標準化」のきっかけとなります。
バイヤー・サプライヤーの双方が知っておくべき工程FMEA活用の意義
バイヤーにとっては、サプライヤーの「真に強い現場かどうか」「自律的な品質作り込み能力の有無」を評価する格好の材料です。
サプライヤーにとっては、FMEAに本気で取り組むことが「不具合ゼロ」「クレーム激減」「作業者スキルの平準化」「現場力強化」への近道となります。
工程FMEAの実施ステップ:現場で回る進め方
1. 分析対象工程の明確化:範囲設定が最初の肝
まず、どの工程単位でFMEAを行うかを明確にします。ここでのポイントは「分かる単位」で切ることです。
例えば、
– 1ライン全体でなく「要素工程」ごと
– 「プレス→溶接→塗装」と分ける
– さらに「ハンダ付け」「ネジ締め」といった1作業単位に分解する
現場に即して、トラブルの発生しやすい・品質がばらつきやすい「重点工程」から深掘りすると効果的です。
2. 構成要素の洗い出し:現実の作業・設備を「見える化」
対象工程が決まったら、その中の「設備」「作業」「治工具」「投入物」「標準条件」など全ての構成要素を抜け漏れなく棚卸しします。
昭和的アナログ企業では、頭の中のイメージだけで行ってしまいがちですが、実際には「現場に行って、物を見て、動きを観察する」ことが不可欠です。
可能であればラインウォークや現物写真を盛り込むことで、メンバー間の認識ズレ防止につながります。
3. 故障モードの徹底抽出:ラテラルシンキングの発想で
故障モード(=起こりうる不具合・失敗)の抽出は、FMEAの最重要作業です。
「過去トラブルはすべて事前に洗い出せる」これは現場20年超の結論です。
– どんな現象が起こりうるか?(短絡、亀裂、漏れ、寸法不良、組付けミス…)
– どの部位で起きるか?(設備ごと、作業ポイントごとに個別化)
– ユーザーにとってどう困るか?どんな二次被害が予想されるか?
「こんなこと滅多にないだろう」と思うことも、遠慮なくリストアップします。
ここでラテラルシンキング的発想が有効です。
– 類似ライン、他部署、過去別製品の失敗事例もヒントにする
– 作業者・保全員・品質スタッフと多様なメンバーでブレスト
– 「ありえない前提を敢えて考える」ことで潜在リスクをあぶり出す
昭和的な「職人気質による油断」「勘への過信」は排除し、論理的・多角的に洗い出しましょう。
4. 故障モードごとの影響と原因の分析:深掘り思考で見逃しゼロへ
「この故障モードが発生した場合、次工程・最終製品・エンドユーザーにどんな影響が出るのか?」を1つずつ丁寧に分析します。
バイヤー視点でいえば「ユーザー品質=最終製品価値」に影響する項目を優先的に特定する点が重要です。
さらに「Why-Why分析」「なぜなぜ分析」などで、
– なぜこの失敗が起こるか
– 発生起点、作業ミス誘発要因、設備起因、治工具設計ミス、環境要素
を根っこの部分まで深掘りします。
「人依存(スキルがないとできない)」も立派な故障要因です。
ここを丁寧に繰り返すことが、「表面的なFMEA」でなく「生きたFMEA」になります。
5. 発生度・重大度・検出度のリスク評価:優先順位付けのコツ
洗い出したリスクそれぞれ、「発生度」「重大度」「検出度」を評価して、リスク優先順位を決定します。
ここでは社内で基準・尺度を明確にしておくことが大切です。
– 発生度:どのくらいの頻度で起こりそうか(過去事例、推定値も活用)
– 重大度:不具合が出ることでどれだけ品質・安全に影響か
– 検出度:現行の検査・監視体制でどこまで発見可能か
点数化・ランク付けをしてリスク指数(RPN)を算出し、「すぐに対策すべき項目」を明確にしましょう。
6. 未然防止策・管理特性の立案と実施
リスク特定後は「何を(誰が・いつまでに・どのように)対策するか」を落とし込みます。
技術的対策(ポカヨケ・自動判別・管理図導入など)の具体化が未然防止には不可欠です。
また「管理すべき特性(CTQ)」すなわち品質管理ポイントへの反映、標準化、チェックシート化をすぐ現場落とし込むことが力の見せ所です。
現場で成果を出す故障モード抽出と原因分析のコツ
「現場の暗黙知」「ベテランの感覚」を見える化する
トラブルはベテラン作業者が「なんとなく」察知して回避しているケースが少なくありません。
「いつもはこうだけど、今日は違う」という現場感。
これを言語化し、「なぜそうなるのか」を解析できる組織がFMEAを生かせる現場です。
– 異常寸法の傾向分析
– 設備異音履歴の記録
– 非定常作業(段取り換え時など)の観察
現場ヒアリングとデータ分析を組み合わせましょう。
関係者全員で多様な視点を持つ
「設計」「品質」「製造」「保全」「購買」「広島の現場」「海外工場の事例」と多様な立場の情報を集め、同じ表を前にして議論することが本質的なリスク洗い出しにつながります。
– トラブル経験者の声
– 過去クレーム事例
– 品質改善提案を納入先から受けた履歴
昭和のヒエラルキーを超えた、全階層参加型FMEAが推奨されます。
不具合未然防止で必ず押さえたいポイント(留意点)
1. 机上だけで終わらせない、絶えず現場検証・実証する
FMEAは作成して終わりではありません。必ず現場で「対策が十分か」の検証を行いましょう。
限界事例・突発現象をあえて発生させて「再現フィールド試験」を実施することも有効です。「現場でフィードバックを得る→見直す」サイクルを回すことが肝要です。
2. 継続的な見直しとレベルアップ:FMEAは一度きりで終わらない
新製品や設備更新、作業手順変更に応じてFMEAを随時更新しましょう。
「最新の事故例・ヒヤリハット」を組み込むこと、「数値化」「グラフ化」「見える化」も進めましょう。
3. ドキュメントをただの紙にしない:作業教育と連動せよ
FMEAで洗い出したリスクを現場の「作業マニュアル化」「教育教材化」「標準作業」に即反映しましょう。
新人や派遣作業者へのOJT、リーダークラス教育もFMEAを教材に組み込むのが理想です。
バイヤー・サプライヤーに必要な視点:工程FMEAが強み・信頼になる
バイヤーが評価すべき「現場の見えるFMEA」とは
サプライヤーのFMEA実施内容を監査・現場見学で確認するとき、次がポイントとなります。
– FMEA内容が現場作業・標準に落ちているか
– 現場スタッフが「なぜこの管理項目なのか」理解しているか
– 未然防止のための独自工夫・工場独自のノウハウが盛り込まれているか
単なる帳票よりも、「本当に使われているか?」を見抜く目が求められます。
サプライヤー目線での「FMEAを経営資産に昇華する」発想
徹底的なFMEAは、ただの資料づくりを超えて「自社の現場力・品質力」の見える証拠となります。
– 「バイヤー要求への対応力」
– 「現場のばらつき低減」
– 「不良発生率の大幅削減」
といった差別化ポイントを数値で示せる材料になります。
最先端メーカーはFMEAを「組織の知財」として蓄積・伝承することで長期的競争力を高めています。
まとめ:工程FMEAで現場力を次のステージへ
工程FMEAは、昭和的現場の「経験」「勘」「暗黙知」を科学的に「組織の財産」に変える最強ツールです。
机上作業で終わらせず、
– 現場現物現実から始める
– 多様な視点で徹底的に洗い出す
– 原因を論理的に深掘りする
– 未然防止技術・標準化・教育と一体運用する
– 継続的な見直しと更新で「生きたFMEA」とする
このプロセスを着実に重ねることこそが、製造業の真の「競争優位」につながります。
バイヤーもサプライヤーも、工程FMEAの「本質的な価値」を再評価し、ともに現場改革の新たな地平線を切り拓いていきましょう。
現場からの声を集め、生きたFMEAを共に実現できれば、製造業のクオリティはまだまだ未知の領域まで高められるはずです。
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