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投稿日:2025年6月10日

効果的なFMEAとDRの活用法および未然防止の実践演習講座

はじめに:ものづくりの現場で求められる「未然防止」の重要性

ものづくりの現場において、不良やトラブルによる損失は計り知れません。
品質の問題が市場に出てしまった場合、単なる修理や返品コストだけでなく、顧客からの信頼、小さくはない社会的責任まで波及します。

では、問題発生後の「対策」だけで本当に良いのでしょうか。
現場経験を20年超持つ私が心から実感しているのは、「未然防止」すなわち、そもそも不良やトラブルの火種を消す仕組みづくりが、これからの製造業の競争力の源泉であるということです。

FMEA(故障モード影響解析)およびDR(デザインレビュー)は、まさにこの未然防止を実現する強力な武器です。
しかし、言葉では理解していても、昭和からの慣習やアナログ主義が色濃く残る現場では「形だけ」「帳票主義」で止まってしまいがちです。
本記事では、現場目線での実践的なノウハウと工夫を交えつつ、FMEAとDRを本当に使いこなすためのポイントを掘り下げてご紹介します。

FMEA(故障モード影響解析)の基本と落とし穴

FMEAとは何か?形骸化しないための本質

FMEAは、設計または工程に潜む「故障モード(何がどう壊れるか)」を洗い出し、それが発生した場合の影響や原因、それらの発生確率、検出性を評価し、未然防止策を立案する手法です。

多くの現場で見られるのは、単なる「お作法」としてFMEAシートを埋めて終わりになるパターンです。
「このリスクは評価点が高いから対策必要」と数値化するものの、その本質は“リスクの顕在化前に具体的アクションを取る”ことにあります。
現場でのFMEA活用の要は、「現場のリアルな知見(現物・現場・現実)」が反映されているか、口だけ対策に埋もれていないか、常に問い直すことにあります。

FMEAを現場で効果的に進める具体的手順

1. 現場の多職種メンバーを巻き込み、「全員参加」で洗い出す
一人や机上での分析では見逃されるリスクも多いものです。
異なる職種・経験年数のメンバーが集い、それぞれの視点で「なぜ、何が起こるのか」を議論することで、意外なリスクが見えてきます。

2. 過去トラブルの「再発リスク」を掘り下げる
多くの現場では「前も起きたから気をつける」レベルで止まっています。
記録やヒヤリハットなどの情報を基に、「なぜ繰り返してしまったのか」まで深掘りし、類似ケースも含めてリストアップしましょう。

3. 対策は“実効性”にこだわる
「2人確認する」「手順書を見直す」といった形式的な対策に留まらず、「なぜ人がミスしたのか」の背景(教育不足・設備不具合・作業環境など)に遡って根本対策を検討します。

4. 定期的なアップデート
工程変更や設計変更があった際にはFMEAの見直しを忘れずに。
業界動向や新しい技術の情報も取り込み、常に“生きたFMEA”を維持しましょう。

FMEAの活用失敗例から学ぶ!ありがちな落とし穴

・過去資料をコピペし流用ばかりで、現場独自のリスクが埋もれる
・RPN(リスク優先数)評価が単なる数値遊びで、対応が優先順位通りになっていない
・対策実施日や責任者、具体的内容が不明確。結果、施策が空文化し未然防止されていない
今一度、自分たちのFMEAが“単なる書類作成作業”に陥っていないか、棚卸ししてみてください。

DR(デザインレビュー)の現場密着活用法

DRの役割と現場の課題

製造業では“ものづくりは評価・検証が命”と言われます。
デザインレビュー(DR)は、設計の節目や量産開始の前に、設計内容や工程設計などを多角的に点検し、潜在リスクを事前に摘み取るための重要イベントです。

しかし、昭和的な「先輩が口頭で流すだけ」「根拠なき勘と経験頼り」が根強い現場も未だに珍しくありません。
DRを「忖度ゼロ」「現場実態直視」で真に機能させる極意を紐解きます。

DRを強力な未然防止ツールにするための現場実践ポイント

1. DR参加者のダイバーシティを意識する
設計者、品質担当、生産現場、調達購買、時には社外サプライヤーも巻き込みます。
彼らがそれぞれの「立場」「痛み」を持ち寄ることで、抜け漏れのないレビューとなります。

2. 「なぜ」「どうして」をあえて繰り返す
見過ごされがちな細部や現場固有の事情について、「なぜこの設計仕様にしたのか」「上流検証だけで済むのか」など、繰り返し掘り下げることで、思い込みによる事故を未然に防ぎます。

3. レビュー内容は「アクションプラン」として必ず定着
見つかった課題や、要改善事項については、その場で実施責任者と期限を明確化。
後日フォローアップまでセットで仕組み化します。

4. DR そのものを「育てる」文化を作る
結果論にならず、「この指摘はきつかったけど助かった」と思えるような、オープンで本音の議論ができる場と風土づくりにも注力します。

サプライヤー・バイヤー両者にとってのDRの意味

最近はサプライヤー側から「こういうリスクがあるのでは?」と積極的に提案されることも増えました。
バイヤー(調達側)は「サプライヤーの現場をよく理解」し納得・共創すること、サプライヤーは「なぜその指示・確認を求められているか」の意図と背景を知ることが、真のパートナーシップを生み出します。

FMEA×DR×現場力で実現する未然防止の実践演習

演習1:実際の過去トラブルからスタート

FMEA・DRを使いこなす本当の力は、自分たちの身近な事例をベースにすることです。
例えば、輸送中に部品が傷ついたトラブルがあったとしましょう。

まずその故障モード(輸送中の振動・衝撃→部品表面の傷)をFMEA手法で分析します。
「どこで・誰が・なぜこの工程で不具合が発生したのか」
現場作業者、工程設計者、品質管理、サプライヤーにも意見を求め、「人・設備・材料・方法(4M)」のどこにリスクがあったかを多角的に洗い出します。

その対策に関しては、「単なる注意や追加検査」ではなく、梱包設計自体の抜本的見直しや、出荷用搬送治具の導入といった“仕組みの強化”まで踏み込みます。
さらにDRのタイミングで再発防止対策内容を審査し、現場の実行力・持続力まで確認・フォローすることで、類似のトラブル発生を根本から減らしていくのです。

演習2:新規設計品へのFMEA・DR反映

新しい製品の設計では、「これまで問題がなかったから大丈夫」となりがちです。
しかし新素材や新工程を採用する場合は、必ず過去の類似リスクと未知のリスク両面からFMEAを実施し、直感や前例主義を越えて論理的なリスク抽出を行います。

DRでは設計者だけでなく、購買バイヤーから「将来の部品入手困難化リスク」や、サプライヤーから「生産スキルの違いによる品質ばらつき」など、多様な観点で課題抽出を行います。
このプロセスを実践演習としてやり切ることが、現場力と人材育成にも直結します。

昭和からの「アナログ主義」脱却のために今できること

日本の製造業は、基礎技術や現場力において世界でも高水準ですが、その分過去の成功体験に縛られ、紙・口頭・精神論主義を引きずりがちです。
「帳票」や「やっていますという証拠主義」ではなく、「誰が・どの段階で・何を・どう確認したか、それが事実としてどれだけ品質やコスト、納期に効いていたか」をデータで裏付けられる現場作りが今求められています。

FMEA・DRの各記録をデジタル化、PDCAサイクルと連動し、中長期での成果分析・フィードバックに活かす取り組みも少しずつ広がっています。
ここでもサプライヤーと情報をシームレスに共有し、お互いの現状と課題を透明にし、不良やコストだけでなく、工程革新や新技術導入など新たな価値共創へ連携していきたいものです。

まとめ:強い現場・強いサプライチェーンは「未然防止」から生まれる

これからの製造業は、単なる「安く、早く」だけでなく、お客様・社会が求める「価値と安全」をどれだけ安定して提供できるかが問われています。
FMEAとDRは、未然防止のカギを握るツールでありつつ、人と組織の知恵・現場力があってこそ真価を発揮します。

現場の小さな声や失敗事例、サプライヤー現場のリアリティにも耳を傾け、バイヤーはサプライチェーン全体と共に「一歩踏み込んだ未然防止」に取り組むべきです。
数十年現場を見てきた身として、形だけで終わらせず、新世代のものづくり現場に“生きたFMEA”“機能するDR”が根付くことを願っています。

変わることを恐れず、過去に学び、現場で試し、繰り返し改善する。
その積み重ねが、あなたの工場、サプライヤー、取引先の誰にとっても強い武器になります。

さあ、今日から一歩前進しましょう。

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