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投稿日:2025年7月7日

FMEA FTAを使ったトラブル未然防止実践法

FMEA FTAを使ったトラブル未然防止実践法

はじめに

製造業の現場では、日々さまざまなトラブルや不具合が発生しています。

特に昭和から続くアナログな業界構造が色濃く残る日本の製造業では、「昔ながらのやり方に頼りがち」「属人的な経験や勘に頼る」といった実態が今なお存在します。

しかし、グローバル競争の激化や品質要求の高まりが進む現在、後追いの対応(いわゆる「事後対応」や「火消し型対応」)だけでは、顧客クレームの増加、納期遅延、最悪の場合はリコールなど多くの損失を招きかねません。

そこで注目されているのが、FMEA(故障モード影響解析)やFTA(故障の木解析)などを活用した「未然防止」の実践的手法です。

本記事では、20年以上の現場経験を持つ筆者が、FMEAとFTAを単なる「お作法」や「資料作りのためのツール」に終わらせず、実践的に活用しトラブル未然防止につなげる方法を、現場目線で解説します。

サプライヤーやバイヤーの立場からも、FMEAやFTAをどのように使いこなせば良いのか、具体的なヒントを提供します。

なぜ今、FMEA・FTAなのか?日本の製造現場の「落とし穴」

まず、日本の製造業では今なお「問題が起こってから動く」というマインドセットが根強く残っています。

現場では「人の勘や経験に頼る」「標準書にはないが、昔からのやり方を信じる」という声も多く聞かれます。

たしかに、経験豊富なベテラン作業者の知恵や勘はとても貴重です。

しかし「標準化」や「仕組み化」なしでは、世代交代のタイミングや技能伝承の失敗で、重大な品質トラブルや納期リスク発生の温床になりかねません。

また、コロナ禍以降、サプライチェーンの断裂や深刻な人手不足もあり、従来のやり方では早晩立ち行かなくなる現場も増えています。

こうした「属人的・アナログ」な現場を変革し、「仕組みでトラブルを防ぐ」カルチャーを根付かせるうえで、FMEAとFTAは非常に強力なツールとなります。

FMEA(故障モード影響解析)とは

FMEAの基本と、その“落とし穴”

FMEAは「Failure Mode and Effect Analysis」の略で、製品や工程の中に潜む“故障モード”や“異常発生パターン”をあらかじめ洗い出し、それが発生した場合の影響度を評価したうえで、重大なリスクに優先的に対策を打つための手法です。

具体的には、以下のステップで進めるのが一般的です。

1. 対象工程・製品をブレークダウンする
2. 各プロセスで起こりうる故障モード(異常の種類)を出し切る
3. 故障が起きた場合の影響を明確にする
4. 発生頻度・検出可能性・影響度をスコアリングしてリスク優先度(RPN)を算出する
5. 優先度の高いリスクから対策を立てる

一見すると、「形式的な資料作り」「プロジェクトの最初にやるだけのもの」として、表面をなぞるだけの作業になりがちです。

特に多いのが「コンサルの指導でFMEAフォーマットだけ作ったけど、普段は誰も見返さない」「FMEAワークショップを一度きりで終わらせる」というものです。

現場で生きるFMEAのポイント

現場で本当に役立つFMEAにするには、以下の2点がカギです。

1. 「どこまで掘るか?」— “なぜなぜ分析”で根本原因まで深掘りする
2. 「誰がやるか?」— 多様な関係者を巻き込む(設計、製造、調達、品質、生産技術、現場作業者)

表や数値化のためだけでなく、実際に「見落としやすい部分」に対して現場経験者の知見を集積し、潜在的なリスクの掘り起こしに注力しましょう。

また、定期的な見直し(プロセス変更時、新製品投入時)が重要です。

この“掘り下げ”と“現場巻き込み”が、アナログ業界特有の属人化を減らし、暗黙知を形式知化=ナレッジ化する第一歩となります。

FTA(故障の木解析)の基礎と現場活用法

FTAは「なぜ起きたか?」を論理的に洗い出すための手法

FTA(Fault Tree Analysis)は、特定の「致命的トラブル」がなぜ起こるのか、その根本原因をツリー構造で論理的に深堀る手法です。

端的に言えば「特定の問題の原因究明」にフォーカスしており、FMEAと対になるアプローチです。

たとえば「納品先で異物混入が発覚」というトラブル発生時、
– 「どんなルート」で
– 「どんな制御漏れ」で
– 「どんな要因が重なって」
事故につながったのか、AND/ORの論理ツリーで分解し、再発防止に有効な「ピンポイント対策」を選びやすくします。

FTAの実際的なアプローチ

FTAは「思い込み」や「習慣」に左右されがちな現場に、論理の力を持ち込むのに優れた技法です。

たとえば「人の目視検査ミス」も、
– 検査標準書が曖昧だった
– 手順所の運用がバラバラ
– 人が疲れている時間帯に偏在

など、複数要素が重なって発生します。

この“なぜ?”を細分化していくことで、単なる「ヒューマンエラーのせい」にしない再発防止策が見えてきます。

FTA実践時のポイントは、「現場のボトムアップ情報」と「管理職や技術者の俯瞰視点」の融合です。

例えば、
– 作業者の“作業日報”や“口頭での気づき”をFTAに反映する
– 工場長や生産技術者が「どの段階で制御を挟めるか」を徹底議論する

こうすることで「現実的で実行可能な再発防止策」へと落とし込みやすくなります。

FMEAとFTA、どちらをどう使い分けるのか?

2つのアプローチの違いと補完関係

– FMEA:予防的に「起こりうる不具合」を徹底的に洗い出して、リスクの高いものから管理する
– FTA:実際に起きたトラブル(または重大事象)ごとに、「なぜ起きたか」を根本原因まで論理的に分解する

FMEAは「未然防止」「設計段階や事前検討」に強い。
FTAは「再発防止」「問題発生時の原因解析」に強い。

両者を組み合わせることで、「抜け漏れのない事前防止」「問題発生時の再発防止」という“守りと攻め”の二刀流が可能となります。

現場では「新製品立ち上げ前にFMEAで危険箇所を網羅し、現場で実際にトラブルが起きた時にはFTAで徹底して原因究明&対策立案」、これが基本サイクルです。

実践に役立つ!現場発・FMEA/FTAのすすめ方

1. FMEA・FTAの「勉強会」から始めない

現場でありがちなのが、「まず管理職や品質部が勉強会や座学をやって終わり」というパターンです。

本当に重要なのは、「実際の現場課題」や「過去のヒヤリハット事例」を題材に、現場の作業者から管理職、購買・品質・技術まで全ての関係者を巻き込み、ワークショップ形式で進めることです。

例えば、
– 実際に過去1年間のクレームを全てリストアップする
– その一つ一つを題材に、FMEAやFTAを現場で一緒に考える
こうした“実地検討”が、紙上の知識を現場力に変えるカギです。

2. 「なぜ?」を5回繰り返す癖を持つ

これはトヨタの「なぜなぜ分析」にも通じる考えですが、FMEAやFTAでも、「なぜこの異常が起きるのか?」を最低5回は繰り返し問い続けることが重要です。

例えば「納入品の寸法違い」というトラブルの背景にも、
1. なぜ寸法違いが発生? → 測定漏れ
2. なぜ測定漏れ? → チェックリスト未記入
3. なぜ未記入? → 現場が忙しく後回しに
4. なぜ忙しい? → 繁忙期の人員計画ミス
5. なぜ人員計画ミス? → 売上見通しの情報が間接部門と共有されていない

このように、「現場の本当の問題」は、表面的な事象に隠れています。
FMEA/FTAを使って深掘りするクセを持つことで、“真の未然防止”へ繋げられるのです。

3. サプライヤー/バイヤー双方で活かす

受注側(サプライヤー)でのFMEA・FTA活用例としては、
– 取引先の品質監査や新規開拓時に、自社のFMEA運用事例を見せる
– 「貴社の工程FMEAはどこまで現場の声が反映されていますか?」とバイヤーに逆質問する
などが挙げられます。

一方、バイヤー(調達担当)は
– 仕入先監査で「FMEA/FTAが実際の現場改善に活きているか?」
– 「形だけでなく、最新の現場情報で棚卸し・見直しがなされているか?」
を必ずチェックしましょう。

バイヤーが現場目線の質問を投げることで、サプライヤーの未然防止能力や改善カルチャーを見抜けます。
逆に、サプライヤーが具体的なFMEA/FTA活用プロセスを開示することで「安心して取引できる仕入先」との評価にもつながります。

4. 管理職が主導し現場の壁を越える

工場長や生産管理の管理職は、FMEA/FTAを「現場まかせ」にせず、自ら旗を振ることが肝要です。

たとえば
– 「月例会議で1件、FMEA/FTA事例を必ず取り上げる」
– 「1現場1改善運動」にFMEA/FTAプロジェクトを組み込む

こうした仕組み化・見える化で、「やらされ感」ではない自発的な未然防止風土を育むことができます。

まとめ:昭和流から脱却し、仕組みで未然防止を実現しよう

FMEAやFTAは、「資料作成や監査対策のため」だけのものではありません。

昭和流のアナログな現場・属人的な運用から脱却し、組織として「仕組みでトラブルを未然に防ぐ」モダンマニュファクチャリングへの転換点でもあります。

バイヤー・サプライヤー双方にとって、FMEA/FTAを実践的に使いこなすことは、
– 品質トラブル・納期遅延リスクの低減
– 品質力・技術力のアピールと差別化
– ESG・サステナブルなものづくり現場の確立

に直結します。

ぜひ本記事をきっかけに、あらためて「FMEA FTAの本当の価値」を現場で再発見し、実践の一歩を踏み出していただければ幸いです。

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