月間93,089名の
製造業ご担当者様が閲覧しています*

*2025年6月30日現在のGoogle Analyticsのデータより

投稿日:2025年7月4日

FTA FMEA連結解析と逆ETAで信頼性安全性を強化する新手法

はじめに:製造業における信頼性安全性の新たな課題

製造業、特に日本の大手メーカーは長年にわたり、高品質と信頼性を武器に世界市場をリードしてきました。
しかし、IoTやDX時代への突入とともに不確実性が増し、多品種少量生産や工程の複雑化が進む中で、従来型の安全性アプローチだけでは対応が難しくなっています。

一方、現場には「昭和的なアナログ重視」の空気も根強く残っています。
この状態を打破するには、FTA(Fault Tree Analysis)、FMEA(Failure Mode and Effect Analysis)、そして逆ETA(Event Tree Analysis)の最新連結解析という新手法を現場目線で再定義し、実践していく必要があります。

本記事では、私が20年以上現場で培った実経験を元に、これらの解析手法の違いと連携ポイント、さらに逆ETAという視点を加えた「攻めの信頼性安全性強化策」を徹底的に解説します。
特にバイヤー志望者やサプライヤーの皆さまにも役立つ、“行間”を読んだ思考法を展開します。

FTAとFMEA:今や古くも見える王道手法を再確認する

FTA:発生リスク低減のためのトップダウン解析

FTAは「故障の木解析」と訳されます。
主な流れは、「システム全体で起こり得る望ましくない事象(トップイベント)」を起点に、原因となる事象や故障をツリー状に掘り下げて論理的に展開し、最終的なリスク低減策を検討します。

最大の特徴は、“トップダウン型”のアプローチです。
たとえば設備の「停止」や「爆発」といった重大インシデントをゴールにおき、現場の各部品やヒューマンエラーをロジックゲート(AND/OR)で因果的につなぎ、事故や品質問題の根本要因を可視化します。

FMEA:現場で磨かれたボトムアップ改善手法

一方、FMEAは部品や工程単位で「どんな不具合や故障が?」をボトムアップで列挙し、発生頻度・影響度・検出のしやすさをスコア化(リスク優先数:RPN)する手法です。
最大の強みは“現場目線”で緻密に潰しこみができる点です。

現場では「この部品のこの加工、こんな壊れ方しやすいよね…」という実感値が最もリアリティを持ちます。
現代的には、材料ロットのバラツキや作業者の習熟不足、IoTセンサの不具合など、時代の変化も織り込んでいく必要があります。

FTAとFMEAはなぜ単独では限界があるのか

現実のものづくりはFTAだけ、FMEAだけでは解決できない場面が少なくありません。
その理由は主に3つあります。

1. 組織の壁と情報の分断

FTAは設計やシステム開発の上流工程で、FMEAは現場や調達、品質保証などの下流工程で使われがちです。
両者の間に情報の壁ができやすく、対策や情報共有が十分に機能していません。

2. 状況変化への即時対応力の不足

従来は設計完了後にFMEAをやるケースが多く、現場やサプライチェーンでの小さな兆候(マイクロ不良やヒヤリ・ハット)がFTAへフィードバックされにくいのが現実です。
そのため、工程変更や仕入れ先の切り替えなど「予期せぬ変化」を見逃しやすくなります。

3. アナログ文化の根強さとブラックボックス化

紙ベース・属人化・場当たり対応の文化が根強いと、何が本当のリスク要因なのか“ブラックボックス化”しやすくなります。
この点で、FTA・FMEAの「本来補完し合うべき関係性」が十分に活用されていません。

業界トレンド:FTA FMEA連結解析へのシフト

時代の潮流を受けて、多くの企業がFTAとFMEAを連携させる「FTA-FMEA連結解析」へと動き始めています。
このアプローチには以下の特徴があります。

課題のピンポイント化と対策の全体最適化

たとえば、現場FMEAで“検知されにくい異常”が特定された場合、それがFTAツリーの中でどの重大インシデントにどう影響するか、その経路を即座に逆参照します。
これにより、バラバラだった現場の懸念と全体システムの重大リスクを「一気通貫」で紐付け、効率的な改善を実現できます。

熱力学でいう“経路依存性”を意識する

FTA-FMEA連結は、「あるエラーが別の故障の引き金となって重大事故につながる」経路依存性を炙り出せます。
従来の縦割り運用では取りこぼしていた“リスクの網の目”を現場でリアルに可視化できるのです。

逆ETA(逆イベントツリー解析)の戦略的活用

もう一つ現代的な発想として注目したいのが「逆ETA」です。
従来のETA(イベントツリー解析)は、ある異常現象が連鎖的にどのような結果(事故や損害)につながるかを分析します。
これを逆方向、すなわち「望ましい最終アウトカム」から逆算して、「もし逸脱が起きたらどの経路を辿っているか」「どの時点で介入できるか」を洗い出します。

逆ETAのユニークなメリット

・設計や調達段階で、「どこが逸脱ポイントか」「どの工程で先手の介入が可能か」を事前にイメージしやすい。
・サプライヤー間で工程連携の弱点/責任の所在を明確化できる。
・不具合波及や再発防止策の“抜け道”をエビデンスと共に提示でき、現場納得感も高めやすい。

たとえば、ある重要部品で想定性能を満たせていない(例えば規格外寸法)があった場合、各工程・各材料調達でどの時点から逸脱が始まったのか、逆ETAで段階的因果関係を遡って特定可能となります。

“逆擦り合わせ”で昭和アナログ文化から脱却する

製造業は「とりあえず現場で対応」「現場の熟練者頼み」の暗黙知・属人的文化に頼りがちです。
逆ETAは、この“常識”をデータと論理でひっくり返し、標準化・予防メンテナンスにつなげる力があります。
現場ベースで「ここまで対応したら絶対にOK」という過信も、逆ETAで冷静に逆検証できます。

具体的連結解析の流れと現場実践ポイント

では、FTA-FMEA連結と逆ETAを組み合わせて、実際の現場でどう使うかを流れで見てみましょう。

1. 現場FMEAによる異常検出とボトムアップ改善

まず工程・部品単位でFMEAを実施し、潜在的不具合モードと検出困難ポイントを洗い出します。
ここで「現場対応だけでは詰めきれない不安要素」は必ずリスト化します。

2. FTAでシステム全体への波及をマッピング

FMEAから出た“取りこぼし不良”をFTAツリーに逆流させ、重大インシデントへの経路を網羅的に整合させます。
この過程で、非効率な検査工程のボトルネックや、ヒューマンエラーの影響範囲が明確になります。

3. 逆ETAで工程・調達・サプライヤー間の因果を逆参照

望ましい最終品質や安全基準をゴールにおき、逸脱ケースの各分岐点を逆分析します。
最も早い段階での予防介入(設計変更、工程再構築、サプライヤーチェンジなど)を現場横断で割り出します。

4. 改善策立案・現場実装・再評価サイクル

連結解析+逆ETAで抽出したボトルネックや責任分界点を、現場の実情(作業負荷/現有設備/流通リードタイム)に落とし込みます。
一度対策したら、改善後の運用データを使って再度のFMEA・FTA・逆ETAを実施し、継続的改善サイクルを回します。

業界トレンドとの連動:バイヤー・サプライヤーが知るべき観点

この新手法は、調達・購買やバイヤー、サプライヤーにも強烈な武器となります。

調達バイヤー視点

・単なるコスト比較ではなく、サプライヤーごとの「潰し込み力」「潜在故障予防力」を評価できる。
・部品ごとに、どこで逸脱が起き得るか“逆ETA”で見渡せるので、交渉時の材料にできる。
・FTA-FMEA連結結果を品質監査や新規採用時の基準書に活用できる。

サプライヤー視点

・バイヤーが重視している“品質保証体制の見える化”に直接役立つ。
・他社との差別化として「連結解析・逆ETA切り口で自社工程分析をして納品」するPRができる。
・万一トラブル発生時も、因果経路と是正点を論理的に説明でき、信頼残高を落とさずに済む。

現場導入時の課題と突破のヒント

理想的な手法でも、導入・運用には現場なりの壁があります。
主なハードルとその突破方法を簡単にまとめます。

データ不足・属人化への対応

現場ヒヤリ・ハットや微小不具合情報も含め、徹底して“現場からデータを吸い上げる工夫”が必要です。
今ならIoTやモバイルアプリなど、デジタル小道具を使って作業者の“気付き”をリアルタイム記録する仕組み作りが重要です。

アナログ文化を乗り越える“巻き込み術”

「この手順は面倒」「今さら変えたくない」という声も無視できません。
現場作業者が納得するには、「自分たちの職場・生活がラクになる」「安全になる」裏打ちデータを地道に示し、“見える成果”を小さく積み上げるしかありません。

多拠点連携の強化

分散生産やグローバル調達では、拠点ごとのFTA・FMEAが“縦割り紙芝居”になりがちです。
オンライン会議やクラウド共有ツールを活用し、FTA-FMEA-逆ETAの「横軸情報」を社内標準としてストックする運用が推奨されます。

まとめ:未来志向の信頼性安全性へ

FTA、FMEA、逆ETAの三位一体となる新手法は、昭和アナログ文化の殻を破り、現場力をより強く高める“攻めの信頼性安全性”を実現します。
現場のリアル、設計の論理、サプライチェーン全体を“眼前”でつなぎ、顧客・取引先・現場全員が納得する強固な品質体制を築く道標です。

今こそ、現場に眠る知恵・経験と、最新ロジックを掛け合わせ「ものづくり大国・ニッポン」の底力を取り戻す時代です。
この手法を現場で試し、ぜひ“成果の再発明”を一緒に目指しましょう!

資料ダウンロード

QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。

ユーザー登録

受発注業務の効率化だけでなく、システムを導入することで、コスト削減や製品・資材のステータス可視化のほか、属人化していた受発注情報の共有化による内部不正防止や統制にも役立ちます。

NEWJI DX

製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。

製造業ニュース解説

製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。

お問い合わせ

コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)

You cannot copy content of this page