昇格論述試験を突破するための論文構成力と評価される書き方演習

はじめに：論述試験はキャリアの分岐点

製造業の現場でキャリアアップを目指す上で、避けては通れないのが「昇格論述試験」です。

調達購買、生産管理、品質管理といった部門でマネジメント職を志す方には、論理的に考えをまとめ、組織や現場に貢献する意見を文章で表現する能力が強く求められます。

この記事では、長年現場で培った知見と最新の業界動向を踏まえつつ、論述試験を突破するための「論文構成力」と「評価される書き方」のコツについて、徹底的に解説します。

バイヤーを目指す方や、サプライヤーの視点でバイヤーの考えを知りたい方にも役立つ内容です。

論述試験が求める“価値”とは何か？

単なる知識披露では不十分

昭和的な現場主義が色濃く残る製造業では、いまだに「気合と根性」「暗黙知」「長年の勘」に頼る組織が多くみられます。

しかし、論述試験で重要なのは“単なる知識”や“経験”の披露ではありません。

「現場の課題をどう捉え、根本要因を明確化し、論理的に解決への道筋を示せるか」という『構造的思考』と『他者を巻き込める説得力ある言葉』が真に評価されます。

会社が論述試験で評価するポイント

1. 課題設定力
2. 因果関係の明快な分析力
3. 論理的で一貫性のある構成力
4. 具体性のある提案力（数字や固有名詞を用いる）
5. 組織視点・ビジネス視点（顧客・会社の利益）で語れること
6. 読み手への配慮と納得感

現場経験が長いほど、どうしても“自分語り”に偏りがちです。

“なぜその課題が重要なのか”“会社・社会にどんな価値をもたらすのか”という軸を忘れずに構成しましょう。

論文構成の基本：PREP法＋現場型フレームワーク

論理的に伝える定番：PREP法

製造業の現場でも使いやすい論述の型として、PREP法が挙げられます。

– Point（結論・主張）
– Reason（理由・背景）
– Example（具体例・エビデンス）
– Point（再結論・まとめ）

まず主張を明言し、理由や背景を論理的に整理。

その上で自身の現場経験や成果、業績データなどの「具体例・根拠」を示し、最後に再度結論で締める流れです。

課題解決の頭脳：現場型フレームワーク

バイヤーやサプライヤーの方が論述を書く際には、下記フレームワークを補助として使うとより説得力が増します。

– 現状把握（As is）
– 課題抽出（Gap整理、要因分析［5whyなど］）
– 目指す姿（To be）
– 解決策立案（現実的なアクションプランやコスト意識、関係部署との連携など）
– 効果・期待される成果（定量化、KPI設定、組織全体への意義）

“なぜその課題？”、“どうすれば現場・組織にベネフィットが生まれる？”といった「一歩先」の視点を織り込むことが必須です。

昇格論述“あるある”失敗例と、その回避策

①自分語りだけのエピソード

「私の現場経験では…」「若手の〇〇くんが…」と局所的な話に終始し、組織全体への波及や会社の方向性との接続が弱いケースが頻繁に見られます。

回避策：
「この取り組みは私の現場だけでなく、工場全体に水平展開できる」「全社方針〇〇とも連動する」など、組織視点を織り交ぜましょう。

②根性論や精神論で締める

「もっと努力すべき」「みんなで頑張ろう」といった精神論で結論をぼかすと、実務的な説得力に欠けます。

回避策：
「“見える化ツールで進捗管理を徹底”し、各工程ごとに責任者会議を設ける」など、誰が何をどうするのか“行動”ベースで提案しましょう。

③理想論・抽象論で終わる

「品質の向上」「コスト削減と効率化」など、抽象的な総論だけで終わるとアピール力は大きく下がります。

回避策：
「歩留まり〇％改善＝年間コスト〇〇万円削減」や「〇〇ツール活用で検査時間×分短縮」など、数値とセットで語りましょう。

実践演習：評価される論述の書き方例

では実際に、論述試験で評価される文章の流れを例題を用いて紹介します。

お題：『工場の生産性を高めるための取り組みと今後の課題』

Point（結論）
「生産性向上のためには、現場の見える化とデジタルツールによる工程管理の強化が不可欠です。」

Reason（理由・背景）
「当工場では、手書き日報や口頭伝達がいまだ多く、都度生産状況を集計するなど、情報伝達のムダが多い状況です。
データの非効率な管理は、不良品の兆候やボトルネック発見の遅れにつながります。」

Example（具体例・エビデンス）
「実際に昨年、AラインでIoT機器を導入したことで、ダウンタイムの記録や不良率解析をリアルタイムで現場共有できるようになりました。
その結果、リカバリー対応の初動時間が20分短縮し、歩留まりが前年比で2%向上しました。」

Point（まとめ・再結論＋今後の課題）
「今後は、全ラインへのDX展開を加速しつつ、現場スタッフのITリテラシー教育も強化して、さらなる生産性向上を目指します。
また、システム導入だけでなく、ベテランと若手が連携しボトムアップで課題を発見できる仕組み作りもあわせて推進すべきです。」

—

このように「結論→背景→具体例（データ・実績）→展望と行動」で論理的思考と現場目線を両立させると、評価につながります。

昭和からの脱却：これからの論述試験で求められる力

現場発・データ発・そして全社発信

かつては“職人技”や“目利き”を讃える風潮が強かった製造現場ですが、今や「標準化」「データ活用」「組織間連携できる人材」がマネジメントの要件となっています。

論述試験では、「個人の能力」より、「仲間を動かし組織を変革するマネジメント力」、「全社的に価値を生み出せる提案力」をアピールする時代です。

バイヤー・サプライヤーそれぞれの視点

サプライヤーであっても、バイヤーがなぜその品質要求やコストダウン施策を重視するのか、「サプライチェーン全体最適」「事業視点」から想像し、言葉にできることが大きな武器となります。

一方バイヤーサイドは、現場の声や改善事例、自社・顧客双方の利益を織り込んだ“論述力”が求められています。

仕事のやり方改革時代、論述力が武器になる

工場自動化やDXの潮流はとどまることを知りません。

「自分で考え、主体的に提案・発信できる人材」が管理職として昇格の条件にどんどん組み込まれています。

デジタルでもアナログでも、現場と経営の“真ん中”で言葉を使って価値を生み出す。
これこそ、これからの製造業における“論述力”の本質と言えるでしょう。

まとめ：現場で価値を出せる人材へ

論述試験を突破するには、「自分の業務経験」＋「会社方針や業界動向」＋「構造化された論理展開」の三点セットが必須です。

一貫性・具体性・組織貢献の視点を意識して、ぜひ“評価される論述”にチャレンジしてください。

現場経験が豊富な方も、若手でこれからキャリアを築きたい方も。
論述を通じて、一歩先の製造業の未来を自らの言葉で切り拓きましょう。