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車載デバイスの信頼性向上に向けた評価技術と加速試験の実践事例を学ぶノウハウ

目次
はじめに:車載デバイスの信頼性が問われる時代
自動車業界は100年に一度の大変革期を迎えている、と言われて久しい時代になりました。
エレクトロニクス化や自動運転、EV(電気自動車)へのシフトなど、車載デバイスにはかつてない高い信頼性と性能が求められています。
その一方で、従来の部品と比べて電子デバイスは経年・環境変動に対する脆さを併せ持っています。
こうした流れの中、製品の信頼性をいかにして定量化し、設計や製造にフィードバックするかが、バイヤーやサプライヤーにとって生命線とも言える要素になってきました。
本記事では、「評価技術」と「加速試験」というキーワードを軸に、実践的なノウハウや業界動向、さらに現場で感じる課題への新しいアプローチを紹介します。
製造業に従事される方・調達担当者・サプライヤーの皆様が、信頼性技術を次のステージへと進めていけるヒントをお伝えします。
車載デバイスの信頼性評価とは何か
信頼性設計の基礎:なぜ評価が必要か
車載デバイスは苛酷な温度変化、振動、湿度、長期使用などの環境下にさらされます。
重大事故にもつながるため、「壊れにくさ」「予測できる寿命」「不具合の少なさ」という観点での信頼性確保が必須です。
評価技術は、その製品・部品が「十分に信頼できるか?」を予測・保証する一連の手法です。
設計段階から信頼性を考慮する「フロントローディング」、量産移行前の「デザインレビュー」、実機を使った「評価試験」まで、多段階でのチェックが必要になります。
定量評価のための主要な指標
代表的な信頼性指標には、以下があります。
– MTTF(平均故障時間)
– FIT値(10億時間あたり故障回数)
– B10寿命(10%が故障するまでの時間)
これらを測定・算出するためには、現実的な負荷よりも強い環境を再現する「加速試験」が不可欠です。
加速試験の全体像と具体的な種類
加速試験で解決できること
通常環境下では長期間かかる劣化や不具合も、加速条件下では短期間(数週間~数カ月)で発生させることができます。
開発期間の短縮、市場投入までのリスク低減、隠れた不具合モードの早期発見につながります。
主要な加速試験の種類とその着眼点
1. 高温高湿試験
高温・高湿度環境下にデバイスを置き、内部腐食や樹脂劣化などの不具合を早期に観察します。
2. サーマルサイクル試験
急激な温度変化(-40℃⇔+125℃など)を数百~数千サイクル繰り返し、はんだ割れ、クラック発生などの機械的ストレス耐性を評価します。
3. 振動・衝撃試験
自動車特有の振動(周波数や加速度パターン)を再現し、構造部・接続部の耐久性を確認します。
4. 高加速寿命試験(HALT/HASS)
より過酷な条件下でデバイスを早期劣化させ、潜在的な弱点を見出す開発現場向け評価です。
大量品のスクリーニングにも用いられます。
各社独自の組み合わせ、客先指定規格への準拠が求められる場合も多く、業界経験者のノウハウが物を言う場面が増えています。
現場から学ぶ:加速試験の実践的ノウハウ
昭和的な「型」からの脱却と、データ重視の「現場DX」
これまでの製造業は、「経験と勘」のアナログな現場力に支えられてきました。
しかし、品質不具合の根本的な解決には論理的な根拠と再現性が求められます。
加速試験でも、「なぜその条件を設定するのか」「その故障メカニズムが量産品にフィードバックできているか」に注目しなければなりません。
例えば、はんだクラックの再現実験をする際、表面実装部の熱膨張係数(CTE)や基板材料の物性をきちんと把握し、「設計想定の2倍以上の温度差を与える」など、独自の基準を設定します。
経験的に「このくらいやればOK」ではなく、CAEによる解析や実機データとの突合を繰り返して現象解明し、設計改善案を導き出す。
これが現代的な加速試験運用の要諦です。
調達バイヤーから見た信頼性評価のポイント
調達部門の役割は、「QCD(品質・コスト・納期)の最適化」。
しかし自動車業界では、「Q(Quality)」の中でも特に信頼性が重要視されています。
サプライヤー評価や採用判断の際、バイヤーが特に注視するのは以下のポイントです。
– 客先基準だけでなく、サプライヤー独自の加速試験ノウハウがあるか
– 試験データだけでなく、発生故障の「メカニズム」まで解明されているか
– 加速試験で得た知見を設計・量産工程へ「フィードバック」しているか
– 万が一の品質問題発生時、再現性・再発防止をどこまで掘り下げているか
社内の評価体制だけでなく、開発~出荷までのトレーサビリティ体制、カスタマーへの説明力も試されています。
成功するサプライヤーの実践例
ある車載コネクタメーカーでは、客先要求以上のオリジナル加速ストレス試験を導入しています。
開発段階で頻発した不具合(異常発熱→樹脂焼損)が、市場で本当に再現するのかを確かめるため、実車搭載で「再現性検証」を複数回実施。
さらに、異常発熱の発生メカニズム(電流値×摩耗度・接触抵抗上昇)を徹底的に解析。
加速試験の設定値を独自基準で文書化し、設計部門と現物ベースで情報共有。
この仕組みが評価され、バイヤーからは「試験・解析力が一流」との評価を得て、次世代車向けにも多数採用されています。
「加速試験イノベーション」現場の未来とは
IoT・AI技術の進展で、「加速試験」の世界も大きく変わり始めています。
例えば、ネットワーク化された試験装置で「リアルタイム監視」「試験データの自動収集・解析」が可能となり、人手による計測やチェックが自動化されつつあります。
異常検知アルゴリズムや画像解析技術の導入により、従来見逃されていた微細な不具合も早期に発見できるようになっています。
また、設計段階からシミュレーションによる故障予測を行い、「加速試験結果との突合により設計を改善する」という“シミュレーションベース開発手法”も急速に普及しています。
こうした先端技術の導入で、人的コストやリードタイムを大幅に削減する“現場DX”の動きが、国内アナログ工場にも波及し始めています。
車載デバイス信頼性の未来と、現場に求められる新しい視点
従来の枠を超えて:多様な視点で信頼性を創り出す
従来、「加速試験=設計部門や解析部門が担当」と考えられてきましたが、本来は現場全体で取り組むべき課題です。
– 設計→解析→製造→検査→購買→現場フィードバックまで、全工程のデータを統合し、一貫した設計改善につなげる
– バイヤーや現場管理者が、加速試験の意義・実験条件への理解を深め、協創し合う関係を築く
– データに基づき“昭和の勘”を超えた現場力を創る
高効率化されるデータ解析やAI支援ツールを単なる「楽をするため」の道具にするのではなく、「次の品質課題を見抜くための武器」として使いこなす視点が求められています。
バイヤー・サプライヤーとして持つべき心構え
調達・バイヤーの方は、「サプライヤー評価」で定量データ=数字やグラフだけを鵜呑みにせず、「なぜ・どのように評価したか」といったストーリーや実験哲学・現場の声に着目することが、これからのアドバンテージにつながります。
サプライヤー側も「客先要求を満たすためだけ」の信頼性試験にとどまらず、「顧客とともに新しい価値を創るパートナー」という発想へ転換することが、次世代への競争力となります。
まとめ
本記事では、自動車業界の現場で実践されている評価技術・加速試験について、その背景や最先端の動向、現場で役立つノウハウをお伝えしました。
車載デバイスの信頼性向上が、メーカー・サプライヤー双方のパートナーシップ強化、現場変革の起点となることは間違いありません。
読者の皆様が、ご自身の現場や組織で新しい評価技術・加速試験の運用に挑戦し、一歩先の製造現場を築かれることを願っております。
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