投稿日:2025年11月10日

竹製箸印刷で細文字を鮮明に出すための露光照度とマスク密度管理

はじめに:竹製箸印刷の現場が抱える“細文字”の厄介さ

製造業の現場で、竹製箸への印刷品質向上は年々シビアになっています。
中でも店舗名やロゴ、アレルゲン表示、メッセージ印刷などで求められる「細い文字を、誰が見てもはっきり認識できるように印刷したい」という要望は、現場にとって昔から大きな課題です。

「細文字印刷がにじむ」「読めない」「文字がかすれる」──
こうした問題の大半は、版(感光性樹脂版など)の作成工程における露光照度とマスク密度管理の徹底がカギとなります。

では、現場目線で細文字印刷をクリアにするための実践的ノウハウ、デジタル化の波が遅いと言われる業界固有の“昭和アナログ魂”を交えつつその本質に迫ります。

竹製箸印刷の工程とよくあるトラブル

基本工程の概要

竹製箸への印刷は大別すると
1. デザインデータ作成
2. 版下フィルム出力(マスク作成)
3. 版材への露光(製版工程)
4. インクの選定
5. 箸への印刷(パッド印刷、シルク印刷、転写 等)
となります。

特に2と3の「版下マスク」および「露光工程」は、細文字品質に大きく影響します。

現場でよく起こる失敗事例

– マスクの黒色の抜け(濃度不足)で露光が漏れ、細い線が消える
– 露光量不足でソリッド部がガタつく
– 露光過多で線が太る、細部が潰れる
– 版材とマスクの密着性が悪く、光漏れで印刷がぼける

こうした失敗が少しでも起きると、現場は何度も刷り直し・版の作り直しとなります。
「ここが甘いと管理職は夜寝られない」──それが露光照度とマスク密度管理です。

細文字をクリーンに出す技術的要点

露光照度の正確な設定とは?

竹製箸の印刷に最適な露光照度は、以下3要素で決まります。

1. 版材(感光性樹脂、フィルムなど)の特性
2. 使用する露光機の光源(UV、ハロゲン等)
3. 版下マスクの密着性と濃度

感覚や過去の“勘”に頼りがちですが、現場力を強化するなら照度計を使って物理測定すべきです。

多くの現場で推奨される感光樹脂版の場合、適正露光は
「所定照度 x 露光時間 = 推奨積算光量(mJ/cm2)」
で決定します。
例えば、メーカー推奨積算光量250 mJ/cm2なら
– 光源照度: 2.5 mW/cm2、露光時間: 100秒
– 光源照度: 5.0 mW/cm2、露光時間: 50秒
など条件を設定します。

紫外線カットフィルムや光源劣化(昭和の現場ではランプのまま10年以上使い続けることも多い)も踏まえ、
「定期的に照度を測り、ランプ交換や位置調整を行う」ことが重要です。

細文字・微細パターン再現で意識すべきマスク濃度

フィルム型マスク(感光フィルム、インクジェット透明シート等)を作る場合、
– 黒部の透過光を限りなくゼロに近づける(OD=2.5以上を理想)
– 文字(線)が細くても切れ・かすれが発生しない出力機材選定
– プリンタ・現像液等の安定運用

これらが求められます。
一般的な家庭用インクジェットプリンタで作ったマスクでは、黒ベタがうっすら光を通し、細文字の線や点が抜けたり、にじんだりします。

商業用フィルム出力サービスや製版会社へ外注する場合、「最低でも濃度2.5以上にしてほしい」と発注時に必ず伝えましょう。

マスク-版材の密着管理で線のにじみを防ぐ

意外と多いのが、「マスクと版材がピタリと密着していない」ために、細部の抜けや線の太りが発生するケースです。

– 真空吸着付き露光機で密着力を増強
– マスクと版材を完全脱気した状態で密着
– ゴミ・ほこり混入を徹底的に除去

こうした管理は、設備投資や作業手順の見直しといった“地味で昭和的”な部分からこそ始めるべきです。

バイヤー・サプライヤー視点で知っておくべき品質管理のリアル

なぜ工程管理が“昭和”のまま続いてしまうのか

日本の製造業、とりわけ竹箸や箸袋印刷といった伝統的工程では、「昔からこのやり方なんだよ」「感覚でやれ」が根強いのが現実です。

バイヤー、サプライヤーとも「どこで品質が落ちているかわからない」まま個人の裁量で対処してしまうと、納期遅延や再生産リスクが跳ね返ってきます。
この部分をデジタル管理、物理測定といった“見える化”で解決する方向に仕組みを変える提案が、現場力を底上げします。

発注時に伝えるべき“再現性”へのこだわり

バイヤーからサプライヤーへの発注指示書や会話で、「細文字がつぶれやすいので、何ミリ以下・ODいくつ以上の版下出力で」「定期的にテストプリントして確認してほしい」など具体的な数字や物的チェックポイントを交えます。

サプライヤーの立場でも「どの部分で品質が落ちやすいか?」を共有し、クレーム前の“未然防止”という考え方に転換することが、信頼関係構築の近道です。

最新トレンド:工程のデジタル化と自働チェック

最近では、露光照度やマスク濃度のデジタル管理ツールが登場するなど、昭和型現場にもITの波がじわじわと押し寄せています。

– 露光積算量データの自動保存
– マスク濃度管理のバーコード運用
– 細文字データに特化したAI画像解析による出荷検査

こうした技術を導入することで、属人的な品質ばらつきが削減され、サプライチェーン全体でムダやロスが減ります。

長期的発展のために現場で心がけるべきこと

“なんとなくやっていた”を数値で語る

細文字印刷という繊細な工程こそ、「これくらいで大丈夫だろう」ではなく、「この光量、この濃度、この密着」という定量的な管理に徹しましょう。

現場リーダーは、
– 露光時ごとの検証結果の記録・見える化
– 印刷後のサンプルを保管・ナレッジ化
– 固有設備ごとのクセ・劣化傾向に合わせた管理基準の策定
こうした地道なPDCAを推進します。

アナログ業界を変える“現場からの提案力”

バイヤーやサプライヤー間のコミュニケーション力が現場改革のカギとなります。
下請けや現場担当の立場からも
「この工程をこう変えたい」
「こうすれば再現性が上がり、コストも下がる」
と技術面・コスト面で根拠のある意見発信を続けることで、“昔ながら”の壁を突破することができます。

まとめ:印刷現場の真価は“管理力”で決まる

竹製箸印刷の細文字品質はまさに「見えないけれど超大事」なポイントが多い現場です。
露光照度もマスク密度も、属人的な曖昧さを捨てて現場の全員が共通認識を持って数値管理していくことこそ、持続的な品質改善・サプライチェーン発展の原動力となります。

製造業に勤める方には「感覚とデータ、両方を武器に」、またバイヤーを目指す方・サプライヤー視点でも「どこで品質が下がりやすいか」をきちんと押さえて、現場全体のレベルアップ、信頼関係づくりに努めていきましょう。

品質で差がつく時代──
細文字が“鮮明に映る”箸は、現場の小さな積み重ねが日本のものづくりの粋を示す証となります。

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