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経営層へのアピール力不足が原因で採用されない失敗事例

目次
はじめに:経営層へ伝わらない、現場の熱意
製造業では、日々現場から多くの改善提案が生まれています。
しかし、それらが実際に採用される割合は決して高くありません。
特に工場現場などアナログ色の強い部門では、技術的な新しさや現場目線の合理化が、経営層へうまく届かず、惜しくも「不採用」となるケースが後を絶ちません。
本記事では、中小から大手まで実際に現場でよく起きている事例をもとに、「どうして経営層に届かないのか?」について深掘りします。
更に、バイヤーや調達購買担当者、また彼らの視点を知りたいサプライヤーの方に向けても、「アピール力」の鍛え方や実践ポイントを現場のリアルな目線で解説します。
経営層が重視する「会社の未来」と、現場が守りたい「現状維持」
経営層が気にするのは「全体最適」
経営層は、企業の持続的発展、利益率、リスクコントロール、投資回収の早期実現を軸に意思決定をします。
一方で、現場の提案はしばしば「目の前の課題解決」や「既存業務の改善」に主眼を置きがちです。
この「視座の差」が、意思疎通のミスマッチを生み、せっかくの提案が「会社にとって優先度が低い」と判断されてしまう主な原因です。
具体的な失敗事例1:目先コスト削減が招いた新規投資の却下
ある生産管理担当者は、ラインの手作業を自動化する装置導入を提案しました。
年間1,000万円の人件費削減効果が見込め、その想定投資額は約800万円。
現場としては「即採用だろう」と期待していました。
ところが経営層では、「自動化投資は他工場の老朽設備更新を優先すべき」という意思決定により、提案は却下。
どうしても直近しか見えない現場提案とは、「会社全体の資源配分」で見ている経営層とで、論点がすれ違い続けてしまった典型です。
現場メンバーが陥りがちな思考パターン
・「現場が困っているから経営も理解してくれるはず」
・「数値(コスト削減額や投資回収年数)を並べれば十分説得力がある」
・「競合工場がやっているから追随すべき」などの根拠の弱い主張
こうした「自分本位」「業界慣行頼み」なアピールでは、多忙な経営層の目に留まるのは難しくなります。
昭和的コミュニケーションが、提案価値を半減させる
会議体文化の弊害と見えない壁
多くの日本の製造業では、「稟議書文化」や「形式ばった会議体」が依然として根強くあります。
誰が言うか(役職・年次)という属性重視の組織風土では、若手や中堅のフラットな提案が軽んじられがちです。
また「声の大きい人」に押し切られたり、前例のない施策は「事なかれ主義」で一蹴されてしまうことも珍しくありません。
失敗事例2:現場管理者の過度な自己満足プレゼン
工場長クラスのA氏は、新設備導入のために30枚を超えるスライドを用意し、専門用語を多用しつつ長々と説明しました。
結果、経営層からは「要点が分かりにくい」「結局何が言いたいのか?」という反応。
現場目線には刺さった資料も、経営層には「本質が伝わらない」「導入メリットと会社戦略との整合が見えない」と評価され、採用されませんでした。
このように、情報量を増やせば良いという発想や、専門化・細分化の罠に陥ると、アピール効果を自ら半減させてしまうのです。
経営層は「WHY」を問う。現場は「HOW」ばかり語る。
ロジックとストーリーを意識した提案が求められる
これまでの失敗例を分析すると、決定的に不足しているのは「なぜ今これが必要か?」という“WHY”の視点です。
現場からは、どうやって良くするか(HOW)、どんな結果が期待できるか(WHAT)は出てきても、会社にとって・経営者にとって「なぜそれが今やるべきことか?」の答えが抜け落ちています。
経営層は常に「経営課題(利益創出、持続的成長、企業価値の向上)に直結するか?」を起点に判断します。
従って、提案する際には「会社全体の戦略と紐付いたストーリー」がなければ強く刺さりません。
ストーリーで動かすプレゼンのポイント
・自部署や現場の課題を、どう会社全体の成長・競争力に結びつけるのか
・数字(損益、ROI、キャッシュフロー改善)をウリにするだけでなく、その先の企業ビジョンへの貢献度を語る
・競合や他社事例を引きつつ「会社が進みたい方向」に寄せて表現する
この三点が重要になります。
バイヤーやサプライヤーの視点でも必須の「経営層目線」
購買・調達の現場でもアピール力が問われる理由
バイヤー(調達購買の担当者)はしばしば「単価交渉」や「納期・品質強化」ばかりに目を奪われがちです。
しかし一歩上のレベルを目指すなら、「どうやって自社の付加価値を高めるか」「経営層の経営戦略へどう貢献するか」を常に念頭に置くことが求められます。
この視座はサプライヤー側にも同様に必要です。
単なる安売りや納期改善よりも、「御社の経営課題を解決できる本質提案ですよ」と言えるかどうかが、今後のビジネスパートナー選別に大きく影響します。
失敗事例3:コストダウン一辺倒が「安かろう悪かろう」と判断されたケース
原材料価格高騰を背景に、ある購買担当者は新興サプライヤーへ切り替えを提案。
見積もりでは10%のコストダウンが可能で、現場にも短納期・フレキシブル対応をアピール。
しかし経営層は「一時的削減は魅力だが、リスク管理、将来の安定供給、品質担保が不透明」として却下しました。
バイヤー・サプライヤー双方が、「単なる目先の数字」だけでなく、「経営層が重視する会社全体の中長期リスク、安心、競争力強化」といった“Why Company?”の観点でアピールできていなかったことが原因です。
“昭和”から脱却するためのラテラルシンキング
提案の「形式」ではなく「本質」で勝負する
日本の製造業には、未だに「稟議書の体裁」「上意下達」など旧態依然とした文化が残ります。
しかしこれから先、世界に伍して戦うためには「発想の転換=ラテラルシンキング」が不可欠です。
型通りの伝え方に終始せず、本質的な価値(経営課題解決、未来への投資ストーリー、自社にしか出せないオリジナル性)を持った提案が評価される時代です。
突破口は“現場 × 経営” の“共通言語化”
経営層は現場の泥臭い課題も知りたがっています。
一方で、現場も経営層の会社戦略や将来ビジョンを「自分事化」する努力が欠かせません。
数字や具体的な改善アイデアだけでなく、
・「先進工場としてのブランド価値向上」
・「省人化による人材不足への対応=雇用の質向上」
・「納期短縮や品質安定で顧客志向を強化」
こうした“会社全体の課題解決像”を提示し、両者間で共通言語として可視化できれば、採用率も格段に上がります。
まとめ:「なぜ、今、それをやるのか?」を語れる現場へ
経営層へ響かない提案、アピール力不足で不採用となる失敗事例は、日本製造業現場に共通する“課題の宝庫”です。
多忙な経営陣の心に刺さるのは、「WHY(会社のためになぜ今これか)」の理由と、「全体最適」にコミットする熱意です。
昭和のワークスタイルから一歩進め、現場感覚と経営センスの両輪で、「これしかない」と思わせる本質提案を目指しましょう。
そして、サプライヤーや購買バイヤーの皆様も、「取引価格だけ」「生産性だけ」にとどまらず、「会社の未来」や「経営ビジョン」までを射程に入れたアピール力を磨くことが、製造業全体の進化につながると確信します。
現場の声が会社の未来を動かす。
その第一歩は、アナログ色の強い現場でも「経営のことば」で語るラテラルシンキングと、勇気ある発信から始まります。