投稿日:2025年12月6日

不具合の真因が“複合要因”で特定不能になる恐怖

はじめに:不具合の真因特定が難しい理由

製造業の現場では、日々さまざまな不具合やトラブルが発生します。
しかし、不具合の「真因」を突き止めるのは一筋縄ではいきません。
とくに現代の生産現場では、複雑な工程や多層なサプライチェーン、多機能な設備が絡み合い、不具合が「複合要因」となって現れるケースが年々増えています。

「真因は何ですか?」と問われても、単一の原因に収束できず、全体像が霧の中に包まれてしまう…。
そんな恐ろしさに直面した経験が一度や二度ではない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、現場経験20年以上の視点から、なぜ“不具合の真因が複合要因で特定不能になる”のか、その背景や現場で実感する空気感、今の業界にありがちな落とし穴、そして実践的な対策について、深く掘り下げていきます。

なぜ不具合の真因特定が難解化しているのか

現場の変遷:複雑化する製造ライン

昭和の時代、ものづくりは手作業や単純な機械制御が中心でした。
不具合が発生しても、「これだ!」と一つの原因に絞りやすい傾向にありました。
それが今や IoT化・自動化・ラインの多機能化が進み、装置・部品・工程・人、サプライヤーなどの要素がまるで蜘蛛の巣のように絡み合っています。

例えば、ある製品の傷不良一つをとっても、
– 部品供給元のわずかな寸法ばらつき
– 加工機の微細な振動
– 検査機の設定不適応
– 作業員の経験値や熟練度
これらそれぞれが単独では問題視されないレベルで微妙に重なり合い、初めて現象として現れるケースが多数あります。

「アナログ文化」と「データドリブン」のはざまで

現場にはいまだ昭和のアナログ文化が色濃く残っています。
人の勘や経験値に頼り過ぎて「気付き」や「現場力」に甘えると、本質的な要因解明から遠ざかってしまいます。
一方、デジタル化の波も押し寄せ、膨大なデータを集めたからといって「原因が自動的に見つかる」わけではありません。
デジタルとアナログ、両方の強みをいかに組み合わせるかが問われる時代です。

サプライチェーンの多層化とグローバル化

可視化困難な多層下請け、グローバル調達も特定不能化の一因です。
サプライヤーが海外にまたがり情報伝達が遅れる、工程ごとにトレーサビリティが断絶する。
「現場が見えない」「責任の所在がぼやける」結果、不具合の全体像が分かりにくくなっています。

複合要因がもたらす現場のリアルな“恐怖”

「ババ抜き」リスクの顕在化

一つ一つの小さなミスや勘違いが、時間軸や工程を超えて積み重なり、最後の工程や顧客で大きく顕在化することがあります。
まるで工場間・工程間で“ババ抜き”をしているような危機感。
「本当の原因が分からなければ、また再発するのでは?」という不安が常につきまとうのです。

品質保証部門の板挟み

調達・生産・品質保証・サプライヤーそれぞれが、「自分の部門ではない」と責任転嫁が発生する状況もたびたび見受けられます。
品質保証部門は各部署の間で板挟みになり、十分な調査協力が得られず対応に遅れることも…。

「部署ごとの最適化」が生む“見えない壁”

工程個別の効率化やコスト削減が優先される一方で、全体最適の視点が欠如しがち。
部門間の“サイロ化”が進んだ結果、情報の横断的な連携が取れず、真因特定への最大の壁となっています。

過去の失敗事例に学ぶ:複合要因特定の盲点

実際の現場では、どんな落とし穴があるのでしょうか。
以下、よくある失敗パターンを紹介します。

Case1:工程変更が引き金に? 計測条件が噛み合わない罠

ある製品で寸法ずれが発生したケースです。
調査開始当初は、加工機の狂いを疑い調整・点検を実施。
しかし現象は収束せず。
よくよく検証すると、数ヶ月前に計測工程の装置を入れ替えていたことが判明。
旧機器と新機器で微妙に測定圧が異なり、その微差が原材料の特性変化によって初めて不良として表面化していたのです。
「測定」vs「加工」vs「材料」 の複合的な変化が絡み合ったパターン。
担当者が自工程のみを見ていたため、本質的原因に気付くまで数週間を要しました。

Case2:サプライヤー交代で「見えない」要因が潜む

コストダウン目的での部品サプライヤー切り替え直後に、組立時の不良率が急増。
組立現場は「部品寸法公差内だから問題ない」と判断。
だが部品メーカーの工程をよく追うと、新しいサプライヤーは材料のばらつきがやや大きく、さらに組立ラインの自動機も「ばらつきに弱い」設計だったことが判明。
「材料」+「新部品」+「自動機設計」という三要素のクロスが想定外の現象を生んでいた例です。

バイヤー・サプライヤーのスタンスで見る「複合要因」

バイヤー目線では

調達(バイヤー)が「価格」「納期」「品質」のバランスをどう取るかが問われます。
不具合発生時には「仕様通りか」「工程監査が十分か」などサプライヤー管理の徹底を追及されますが、現実には「個々の要因だけでなく、複合的な仕組み不全」が背後にあるケースが増えています。

即応的に「サプライヤー責任」を問う前に、工程横断的な視点で“現場のリアルな変化”に目を向けることが重要です。
「安易なコストダウン」や「短納期要求」がサプライヤー現場でどんな複合リスクを生んでいるのか、肌で感じ取る力が求められます。

サプライヤー目線では

一方、サプライヤーからすると、「バイヤーが現場を本当に理解しているか」「単に“仕様どおり”しか見ていないのでは」と感じる場面があります。
不具合の再発リスクを最小化するには、工程条件の変化や新旧設備の違い、緊急のライン切替対応による“揺らぎ”なども含めて、現場の現実をしっかり共有・報告できる関係構築が鍵です。

複合要因による“不具合特定不能”を防ぐには

1. データと現場感覚の「合わせ技」

デジタルツール(IoT、ビッグデータ解析など)で膨大な工程データを可視化しつつ、「異常値の前後で現場で何が起きていたか」を徹底把握すること。
データだけ、勘だけに頼るのではなく、両方のアプローチを繋いだ「現場⇔データ相互フィードバック型」の問題解決力が不可欠です。

2. サプライヤー現場も含めた“オープンな調査文化”の醸成

真因究明のためには、垣根を越えた「現場合同調査」「工程の見える化会議」などを習慣にすることが有効です。
バイヤー・サプライヤー間に「責任帰属」より「課題共有」や「共創」の認識が根付いている企業は、重大クレーム発生時の対応も迅速です。

3. マルチポイント観測・仮説思考の徹底

一工程・一担当者の“主観”に依存せず、複数工程・複数角度から、仮説を広げて検証できる体制が重要です。
たとえば異常発生時には「材料・部品受け入れ」「設備」「作業者の動き」など多角的なデータをタイムラインで突き合わせること。
昭和の現場力にデジタル多面観測手法がブーストされ最大の成果を生みます。

まとめ:未来の“不具合撲滅”への道

不具合の真因特定が“複合要因”で極めて難解になる時代です。
解決の決め手は、「現場とデータの連携」「部門・企業の壁を越えたオープンな対話」「多角的な観察と仮説思考」の融合です。

現場最前線にいる皆さんにこそ、従来型の“ババ抜き体質”から脱却し、全体最適、現場横断、新旧の知恵の融合による課題解決力を磨いてほしいと願っています。

「真因は一つ」という先入観を捨て、「複合要因の霧」を晴らす壮大な旅路にともに挑みましょう。
製造業の明日は、今この現場にいる皆さん一人ひとりの不断の探究心からしか始まりません。

繰り返される「特定不能」の恐怖の先にこそ、新たな価値創造、持続可能なものづくりの未来が広がっています。

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