実地棚卸を早く終わらせるには——数える量を減らし、締めを前に寄せる4つの工夫 | newji
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投稿日:2026年10月8日

実地棚卸を早く終わらせるには——数える量を減らし、締めを前に寄せる4つの工夫

この記事のポイント(結論先出し)

実地棚卸を早く終わらせる効果が大きいのは、当日の手を速くすることではなく、当日に数える量を減らすことと、締めの作業を前に寄せることである。数える量は、期中に区切って数えておく(循環棚卸)、税務上取得時に費用にできる消耗品を対象から外す、といった方法で減らせるが、期末日以外に数えた分は期末日までの増減を記録で加減できることが前提になる[2]。なお、帳簿の数を写す、箱を開けずに数える、前回の数をそのまま使う、相手の負担を考えずに外注先に無償で数えさせる、といった近道は精度か法令のどちらかを壊すので使わない[5]。外注先に報告を頼むなら、範囲・頻度と、その作業の対価(または無償とする根拠)を事前に協議して書面で決める。

時間がかかる場所は、当日ではなく前後にある

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実地棚卸が終わらない、という相談の多くは「当日に人が足りない」という形で出てくる。しかし時間を測ってみると、当日の数える作業より、前日までの片づけの遅れと、翌日以降の集計・差異の確認に時間を取られていることが多い。数え始めてから「これは数えるのか」で止まる、数え終わってから入力に何日もかかる、差異の原因を探すのに決算の直前までかかる、という形である。

法人税法施行規則は、青色申告法人に対し、各事業年度終了の日において棚卸資産の棚卸その他決算のために必要な事項の整理を行い、その事績を明りょうに記録すること、棚卸表には種類・品質・型ごとに数量・単価・金額を記載することを求めている[1]。早く終わらせる工夫は、この「期末日の数量を、根拠を残して確定させる」という目的を崩さない範囲でしか使えない。

当日の数え方の基本(置き場の順に並べたシート、数え終わった区画の印、単位の印字、小物の数え方の事前の取り決め)は棚卸のやり方と手順に、棚卸表とカウントシートの分け方は棚卸表の作り方にまとめてある。この記事では、そのうえで時間を縮める工夫を、数える量を減らす、前日までに終わらせる、当日の分担、締めを早めるの 4 つに分けて書く。

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工夫ごとの効き方と条件

工夫 縮まる場所 精度への影響 使える条件
期中に区切って数える(循環棚卸) 当日の品目数 記録が正確なら下がらない 数えた日から期末日までの入出庫を加減できる
消耗品を対象から外す 当日の品目数 対象外なので影響なし 毎期おおむね一定量を取得し経常的に消費するものを、継続して取得時に費用にしている
前日までに数えて封をする 当日の作業量 封が守られれば下がらない 封をした後に出し入れしない品目に限る
番号付きの票(タグ)で数える 集計と入力 回収の管理をすれば上がる 票の配布と回収を番号で管理する
差異の線と再カウント担当を先に決める 翌日以降の確認 下がらない 当日のうちに再カウントできる人を残す
外注先の在庫は書面の報告で受ける 移動と立会い 照合をすれば下がらない 支給の記録と照合する。報告の範囲・頻度と、その作業の対価(または無償とする根拠と相手の負担の程度)を事前に協議して書面で決める

1. 当日に数える量を減らす

期中に区切って数えておく

品目を区切って年間を通じて数える循環棚卸を組み合わせると、期末日に数える品目を減らせる。ただし、期末日以外の日に数えた数量は、そのままでは期末日の数量にならない。監査の基準は、実地棚卸が期末日以外の日に実施される場合、実地棚卸日と期末日の間の棚卸資産の増減が適切に記録されているかについて監査証拠を入手する手続を求めており[2]、期末日以外の日に実施することが適切かどうかは、増減に係る内部統制の整備と運用の有効性に基づいて判断されるとしている[2]。

発注側の実務に置き換えると、循環棚卸で期末日の数を代えられるのは、受払いが日々正確に記録されている品目だけということになる。前回の循環棚卸で大きな差が出た品目、入力が後追いになっている品目は、期末日に数える側に残す。差が出たこと自体が記録の運用の弱さを示すので、差の出た品目は期末の対象に戻す(差の扱いと監査の基準の考え方は棚卸差異の調べ方で書いた)。

どの品目を期中に回すかは、金額と動きの速さで決める。金額が大きく動きの遅い品目は期中に数えて封をしやすく、金額が小さく出入りの激しい品目は期末日に数えたほうが加減の手間が少ない。循環の組み方そのものより、「どの品目を、いつ、誰が数えたか」を記録して期末日に加減できる形にしておくことが条件になる。

消耗品を対象から外す

工場の事務用品、作業用の手袋やウエス、包装材料などを毎回数えている会社は、これらを数える必要があるかを確かめる。法人税基本通達は、消耗品その他これに準ずる棚卸資産の費用は消費した期の損金にするのが原則としつつ、事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料などで、各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ経常的に消費するものについて、継続して取得した期の損金にしている場合はこれを認めるとしている[4]。

施行規則第 56 条は「消耗品で貯蔵中のもの」も棚卸の対象に挙げているが[1]、2-2-15 の扱いを採って取得時に損金にしている消耗品は期末の在庫金額に入らないので、実務ではこれを数える対象から外すことが多い(施行規則第 56 条の棚卸の扱いが気になる場合は、顧問の税理士に確かめる)。この扱いを継続して採っているものは、期末の在庫として数える対象から外せる。注意点は 2 つある。ひとつは、条件が「おおむね一定数量」「経常的に消費」「継続して」であることで、まとめて大量に買い込んだものや、その年だけ取得時に費用にするものは当たらない。もうひとつは、その費用が製品の製造のための費用の性質を持つ場合は製造原価に算入する、と同じ通達の注が念を押していることである[4]。数えないことにしても、科目の置き場所は正しくしておく。

どの品目を外したかは、棚卸の実施要領に一覧で書いておく。毎年その場で「これは数えるのか」を判断していると、その時間がそのまま当日の遅れになる。

手元にない在庫は、出向かずに書面で受ける

外注先に預けている材料や仕掛品を、毎回こちらから数えに行く必要はない。第三者が保管する在庫は監査でも確認状や実査で確かめる対象である[2](詳しくは棚卸差異の調べ方の 6 段目)。発注側でも、外注先から書面の報告を受け、自社の支給の記録と照合する形にすれば、移動と立会いの時間を省ける。報告の期日は、相手の準備に要る時間を見込んで早めに伝える。

ここで注意したいのが、外注先に棚卸の作業をさせることの扱いである。次の節で書く。

外注先に無償で数えさせるのは近道にならない

預けた材料や金型の数量確認を外注先に任せること自体は普通に行われている。問題になるのは、相手の負担を考えずに無償で繰り返させ、相手の利益を不当に害する場合である(例は次に挙げる、長期無償保管の金型の棚卸)。取適法の第 5 条第 2 項第 2 号は、自己のために経済上の利益(金銭や役務を含む)を相手に提供させ、それによって相手の利益を不当に害する行為を禁じている[6]。

公正取引委員会のテキストには、旧下請法の時代に勧告された事例として、長期間発注がないなどの事情があるのに、自社が所有する金型を下請事業者に無償で保管させ、あわせて金型の現状確認などの棚卸し作業を 1 年あたり 2 回行わせていたことが、不当な経済上の利益の提供要請にあたるとされたものが載っている[5]。この事例では、勧告の前に、無償保管等の費用相当額として 1,136 万 9,160 円が下請事業者に支払われている[5]。

受託中小企業振興法に基づく振興基準も、型等を保管させる場合には、あらかじめ覚書を締結するなど、保管費用の支払等に係る明示的な合意に努めるものとしている[7]。棚卸を早く終わらせたいからといって、相手の負担を考えずに作業を無償で増やすのは近道ではなく、別の問題を作るだけである。報告をお願いするなら、報告の範囲・頻度と、その作業の対価(または無償とする根拠と相手の負担の程度)を事前に協議して書面で決めておく。金型の保管費用の扱いは有償支給材と金型代の禁止行為で扱っている。

2. 前日までに終わらせておく

動かない品目は、先に数えて封をする

保守用の部品や、量産が終わって出荷待ちになっている製品のように、棚卸の数日前から期末日まで出し入れしない品目は、前もって数えて封をしておける。箱や棚に「数量・数えた日・数えた人」を書いた札を貼り、期末日には封が破られていないかだけを確かめる。封を破って出し入れしたものは、当日に数え直す対象に戻す。

封をする品目は、出し入れの予定がないことを現場と確認してから決める。「たぶん動かない」で封をすると、当日に封が破られている箱を一つずつ数え直すことになり、かえって時間がかかる。

伝票の締めを前日に終える

当日の差異の確認が長引く最大の原因は、基準時点までの入出庫が入力し切れていないことである。前日までに入力を終え、当日の朝に未入力の伝票がないかを確かめる。検収が終わっていない入荷品は、置き場を分けて「数えるが、帳簿との照合は検収後」と札を付けておく。差の原因を調べる段階で、検収待ちの品を探し回る時間がなくなる。

カウントの票を番号で管理する

品目ごとに紙のシートを配る方式では、当日の夕方からシートの回収と入力に時間がかかる。区画ごと・箱ごとに番号付きの票(タグ)を配り、数えた数を票に書いて現物に付け、票の控えを回収する方式にすると、回収漏れを番号の欠けで見つけられる。監査の基準も、実地棚卸の指示と手続の評価にあたって、使用された記録用紙の回収、未使用の記録用紙の取扱い、カウントと再カウントの手続が適切に定められているかを見る項目に挙げている[2]。番号で管理すれば、早さと精度の両方が上がる。

3. 当日の分担を決める

数える組と、確かめる組を分ける

数える人と記録する人を分けた二人一組で区画を受け持つのが基本である。そのうえで、数える組とは別に、差異の再カウントを受け持つ組を最初から残しておく。全員が数える作業に入ると、差異の確認が翌日以降に回り、その間に現物が動いて原因が追えなくなる。

差異の線を先に決める

当日のうちに再カウントする品目を、差の金額と率で決める線を事前に決めて共有しておく。線を決めずに「大きい差は数え直す」としておくと、どれが大きいかの判断でその場が止まる。線の上の品目だけをその日のうちに数え直し、線の下はまとめて集計後に見る。差異の調べ方の順番は、同じ時期に書いた棚卸差異が出たら何から調べるかにまとめる。

入力しながら数える

バーコードや携帯端末を使い、数えた場所で数量を入力できるなら、当日の夕方に集計結果がそろう。出庫と在庫の入力を日々の業務に組み込めば帳簿と実在庫の差がすぐ見える、という例は財務報告の内部統制の実施基準にも載っている[3](中身は棚卸差異の調べ方で引いた)。期末の棚卸だけ端末にするより、日々の入出庫から入力する形にしたほうが、期末日に数える量そのものも減らせる。

4. 締めを早める

数え終わってから決算の数字が確定するまでの日数を縮めるには、締めの作業の順番を決めておく。

当日中に、票の回収を番号で確かめ、線の上の差異を再カウントで潰す。翌日に、残った差異を原因の段ごとに振り分け、基準時点の前後の伝票と未入力の伝票を当てる。翌々日までに、原因の分からない差を期限付きで「原因不明」として確定させ、帳簿を実地に合わせる。決算の仕訳の形は棚卸の結果を決算でどう仕訳するかで扱う。

締めを早めるために「差の小さいものは調べない」と決めるのは構わない。ただし、どこで線を引いたかを記録に残す。線の位置が毎年変わると、翌期に差の推移を比べられなくなる。

精度を落とす近道は使わない

時間を縮める方法の中には、数字の根拠を失わせるものがある。次の 4 つは、早く終わっても棚卸をした意味がなくなる。

1. 帳簿の数をシートに印字して確認させる
見えている数に合わせて書いてしまう。数え漏れも紛失も隠れる。シートには品番・置き場・単位だけを印字する。

2. 箱を開けずに箱数で数える
開封済みの箱、入数の違う箱が混じる。入数が確定している未開封の箱だけ箱数で数え、開封済みは中身を数える、と事前に決めておく。

3. 前回の数をそのまま使う
封もしていない品目に前回の棚卸の数を入れるのは、数えていないのと同じである。循環棚卸で数えた品目でも、数えた日から期末日までの増減を加減する[2]。

4. 相手の負担を考えずに外注先に無償で数えてもらう
前節のとおり、無償で繰り返させて相手の利益を不当に害すれば取適法の問題になる[5][6]。報告をお願いする作業は、範囲・頻度と対価(または無償とする根拠)を事前に協議して書面で決めたうえで依頼する。

よくある質問

棚卸の日を期末日からずらしてよいか

ずらすこと自体はできるが、期末日の数量を出すには、数えた日から期末日までの入出庫を記録で加減する必要がある。監査の基準も、その増減が適切に記録されているかを確かめる手続を求めている[2]。記録が後追いになっている会社がずらすと、加減の根拠が弱くなり、かえって確認に時間がかかる。

生産を止めずに数えられないか

止められない場合は、基準時点を決め、それより後の入出庫の伝票を別に分けておき、後から加減する。数えている区画への出し入れだけは一時的に止め、区画ごとに数え終わったら出し入れを再開する、という順番にすれば、工場全体を止めずに済む。

人を増やせば早く終わるか

慣れていない人を増やすと、数え間違いと再カウントが増え、締めがかえって遅くなることがある。増やすなら、数える組ではなく、票の配布と回収、検収待ち品の仕分けなど、判断の要らない作業に回す。

毎年同じ区画で時間がかかる

その区画は、置き場が決まっていないか、似た品番が混在していることが多い。棚卸の当日に解決しようとせず、期中に置き場を整理し、次回は前日までに数えて封をする対象に入れられないかを検討する。実施要領に「時間がかかった区画」を申し送りとして残しておく。

消耗品を数えないことにしたら、税務調査で問題にならないか

通達の条件(毎期おおむね一定数量を取得し、経常的に消費し、継続して取得時に費用にしている)に当たっていれば、取得時の損金として認められている[4]。条件に当たるかどうかの判断と、どの品目を外したかを実施要領に残しておく。条件から外れる品目まで外していないかを、毎年見直す。

まとめ

実地棚卸を早く終わらせるには、当日の手を速くするより、当日に数える量を減らし、締めの作業を前に寄せる。数える量は、記録の正確な品目を期中に数えておく、継続して取得時に費用にしている消耗品を外す、外注先の在庫は書面で受ける、といった方法で減らせる。前日までに動かない品目を数えて封をし、伝票を締め、番号付きの票を用意する。当日は差異の線と再カウントの組を先に決め、その日のうちに大きな差を潰す。帳簿の数を見せる、箱を開けない、前回の数を使う、相手の負担を考えずに外注先に無償で数えさせる、の 4 つは、早くても使わない。

出典・参考資料

  1. 法人税法施行規則(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
  2. 監査基準報告書 501「特定項目の監査証拠」(日本公認会計士協会 監査・保証基準委員会/2024 年 9 月 26 日最終改正)
  3. 財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準(金融庁 企業会計審議会/令和 5 年 4 月 7 日改訂)
  4. 法人税基本通達 第2章第2節第2款 販売費及び一般管理費等(2-2-15 消耗品費等)(国税庁)
  5. 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
  6. 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
  7. 振興基準(受託中小企業振興法第 3 条第 1 項に基づく)(経済産業省/令和 8 年 6 月 24 日)

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