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折りたたみハードシェルラゲージOEMが帰路荷物増加に対応する2段階拡張ジッパー機構

折りたたみハードシェルラゲージOEMが帰路荷物増加に対応する2段階拡張ジッパー機構
はじめに ― 変化する顧客ニーズと製造現場の現実
令和の時代に入っても、製造業、とくにトラベル用品やバッグ業界は昭和のアナログ気質が色濃く残る業界です。
しかし、グローバル化・ECの急速な拡大、週末旅行・ワーケーションの一般化など、旅行スタイルの多様化に伴い、ユーザーが求めるラゲージの機能も大きく変化しています。
とりわけ、「出発時はコンパクトに。帰りはお土産や資料で荷物が増えても楽々収納できるスーツケースが欲しい」というニーズは年々高まっています。
こうしたトレンドを背景に、OEM(Original Equipment Manufacturer)メーカーが開発を進める“2段階拡張ジッパー機構”を搭載した折りたたみハードシェルラゲージが注目を集めています。
本記事では、筆者の現場経験と業界動向を交えながら、この新しいラゲージ技術とOEM開発現場の裏側、そしてバイヤー・サプライヤー目線からの戦略について解説します。
2段階拡張ジッパー機構とは――仕組みと技術的課題
従来のスーツケースでは、容量アップは1段階が主流でした。
「1段階拡張ジッパー」は、本体のファスナーを一周開けるだけで約20%程度容量拡大できるシンプルな拡張機能です。
これに対し、2段階拡張ジッパーは、通常よりさらに1段上の拡張段階を設け、本体形状を保ちつつ2段階にわたり容量アップを実現する仕組みです。
極力フレームの歪みやバランス崩れ、ジッパー部の破損、耐久性低下を防ぐため、設計上は次のような配慮が必要になります。
– メインジッパー→第一拡張ジッパー→第二拡張ジッパーの正確な配置とクリアランス管理
– 本体シェルとジッパーの連結部で求められる高強度の樹脂/合金パーツ
– 反復開閉耐久をクリアするための高品質ジッパー選定
– 拡張時の形状保持を支える内部プレートやフレーム設計
– 拡張時でも転倒しにくい重心設計 など
OEMでこれを実現するには、図面精度、部品調達クオリティ、組立工程管理など現場の厳しい品質管理が不可欠です。
なぜ「OEM」ラゲージなのか――業界の進化と供給構造
OEMとは、ブランドオーナーが企画・デザインし、生産自体は専門メーカー(OEMメーカー)が担う製造方式を指します。
トラベルラゲージ業界では、多くの有名ブランドが自社工場を持たず、OEMメーカーやODM(設計含む受託生産)メーカーに依存しています。
これは、下記のような理由で業界標準となりました。
– 製造技術の高度化・部品専門メーカーの台頭による分業化
– 設備投資負担の削減
– 品番・数量のフレキシブルな展開が可能
– ブランド価値と生産コスト最適化の両立
とくに折りたたみハードシェル、2段階拡張機構のような複雑構造では、現場の生産技術・工程設計力の差が品質・耐久性に直結します。
都度変化するオーダー内容、革新の速さ、グローバルバイヤーの要求水準。
ここに適応できるOEMは、今や “サプライヤー生命線の力” といえる時代です。
ユーザーのリアルな悩みと帰路問題 ― 扱いやすさ×拡張性×耐久性
製造業現場でヒアリングすると、「帰りに荷物が入りきらない…」にまつわる不満やトラブルは枚挙に暇がありません。
– 出張で書類・サンプルが増えた
– レジャー・お土産で冬物衣類がかさばった
– 余裕を見て大きなスーツケースを持っていくと、往路は嵩張る・無駄に重い
– 1段階拡張は意外と足りない。荷物が多い年末年始や長期旅行ではパンク寸前
その点、2段階拡張ジッパーなら、
「通常時:スリムで機内持ち込み」
「現地で中サイズに拡張」
「帰路は最大に拡張して大容量」
と、状況に合わせ3WAYに調整可能です。
なおかつ、ハードシェル(樹脂成型胴体)のため耐久性やガッチリ感も保持できます。
旧来型の布製ソフトラゲージでは真似できない新進機軸です。
現場目線から見るOEM開発プロセスとバイヤー/サプライヤー戦略
2段階拡張機構を開発導入する際、OEM・バイヤー(発注者)・サプライヤー(実製造側)で力点や課題感が異なります。
OEM(製造側)の視点
– コスト以上に“量産性の再現性”を意識
– 新型金型、治具、組立工程の追加投資が必要
– モールド成型→加飾→ジッパー縫製/溶着→組立と高精度連携
– 拡張耐久テスト・連続開閉評価が不可欠
– バイヤーからの短納期・多品種小ロット要求への柔軟対応
バイヤー(ブランド側)の視点
– 小売り現場の差別化=「多機能」「驚き」を武器にしたい
– 店頭やECの商品写真で3段階の違いを効果的に魅せる必要
– 返品リスクが高まるため品質トラブル回避が最重要
– 納期・コストだけでなく、販促サポートや設計ノウハウ共有も重視
サプライヤー(部品・資材側)の視点
– ジッパーやフレームなど特殊仕様部品のカスタマイズ力
– 組立品の歩留まり改善(不良低減)のため精度安定化
– 試作から本生産までの短縮スケジュール対応力
– OEM先とのサプライチェーン連携と情報共有
ここで重要なのは、どこか“一方通行”な発注-納品関係に留まらず、
設計レビュー・現場混乱の早期フィードバック・チームアップを重視する点です。
「あ、これ設計段階で詰めが甘いと現場で必ず苦労するな…」
そんな“現場目線”を開発初期からクロスファンクションで連携できる組織こそ、今後の製造OEM成功企業といえます。
アナログ業界の壁――変化を阻むものと突破のポイント
ラゲージ業界は未だに、
「昔からやってきた方法が一番」
「大きな投資は控えたい」
「品質は熟練工の手作業頼み」
…といった昭和型気質が根強いところです。
しかし、2段階拡張ジッパー機構のような新商品開発では、
– 徹底した作業工程の標準化(QC七つ道具の活用)
– CADデザインと現場加工技能の連携強化
– ISO・IATF等の最新品質規格への準拠
などの“現場革新”なしには安定した量産品質は生まれません。
実際、従来型の手工業的な段取り・暗黙知だけでは、微妙な厚み・強度バラツキから組立時トラブルを招きやすいです。
ここで業界の大手バイヤーやサプライヤーからは
「IT化・自動化を前提に、新しい仕組みを積極的に評価できる現場リーダー」
「品質はもちろん、ヒューマンエラーの芽を出す前に徹底的な工程FMEA*で先手管理」
という“変革型人材”への期待が高まっています。
(*:Failure Mode and Effects Analysis/故障モード影響解析)
まとめ ― 調達購買・サプライヤー双方に求められる「進化への意識」
折りたたみハードシェルラゲージの2段階拡張ジッパーは、単なる消費者向けの便利ギミックではありません。
市場トレンドと現場革新、そして“つくる側”“売る側”“支える側”が三位一体で進化するOEM開発の好例です。
– バイヤー・調達担当は「新付加価値=2段階拡張機構」の技術理解と、現場からのフィードバックを経営判断に生かしましょう。
– サプライヤーや部品メーカーの方は、従来の慣習や個人技術だけではなく、組織での標準化・デジタル化推進こそ今後の生き残り戦略です。
そして製造業すべての現場で問われるのは、“どうやって工夫し、差別化し、失敗から学び、現場と市場の間をつなぐか”という姿勢です。
新旧織り交ぜた「昭和の良さ」と「令和的革新」の融合――
2段階拡張ジッパーの挑戦は、製造業に働くすべての方へのヒントと言えるでしょう。
今こそ現場の智恵と現実的な改革の力で、ものづくりの新たな地平線を切り開くときです。
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