月間93,089名の
製造業ご担当者様が閲覧しています*

*2025年6月30日現在のGoogle Analyticsのデータより

投稿日:2025年6月23日

レオロジーの基礎と流動性物質の管理および測定解析応用

レオロジーとは何か? 製造業での重要性を理解する

レオロジー(Rheology)とは、物質の「流れる」性質や「変形」する性質を科学的に捉え、定量的に評価する学問分野です。

液体や半固体、ペースト、ゲルなど、形を変えて動く“流動性物質”が対象です。

製造業では、塗料、樹脂、接着剤、食品、化粧品、ゴム、潤滑油、インクなど、多種多様な工程で流動性物質が用いられています。

従来の「モノづくり」現場では、感覚や経験則で管理されがちな分野でもありましたが、高度な品質要求や生産性向上、生産の自動化・DX推進、そしてグローバル競争力強化の観点からも、レオロジーが果たす役割は年々重要になってきています。

それでは、レオロジーの基礎知識と、現場目線の実践的な管理・測定・解析応用について順を追ってみていきましょう。

レオロジーの基礎知識:粘度と弾性の意味

レオロジーの世界の基本用語として、まず「粘度」と「弾性」を押さえておく必要があります。

粘度(Viscosity)とは

液体の粘りけの強さを表す指標で、主に「抵抗の大きさ」として捉えられます。

例えば、水や溶剤は粘度が低く、サラサラと流れやすいです。

一方、ハチミツやグリス、塗料などは粘度が高く、トロリとした流動が特徴です。

粘度の測定はJIS規格やISOなどで標準化されており、工場の現場では回転式粘度計やキャノン・フェンスケ式などさまざまな機器が使われています。

弾性(Elasticity)とは

弾性とは、物質が力を加えられて「変形」したとき、元に戻ろうとする「復元力」です。

ゴムやゼリーのように、押したり曲げたりしても元の形に戻る性質が“弾性”です。

流動性物質のなかには、この弾性(バネの性質)と粘度(摩擦の性質)を併せ持つものが多数あります。

こうした粘弾性(ビスコエラスティシティ)の評価は、特に機能性材料や高分子材料、食品の食感開発などで不可欠です。

ニュートン流体・非ニュートン流体

液体には、力のかけ方(せん断速度)が変わっても常に同じ粘度を保つ「ニュートン流体」と、かけ方によって粘度が変わる「非ニュートン流体」があります。

製造現場で扱われる物質の多くは非ニュートン流体です。

たとえば、塗料やスラリー、プリンターインク、調味料などは、混ぜたり塗布したりする力の大きさによって流れ方が大きく異なります。

この「力と流れ方の関係性」こそ、レオロジーの真骨頂です。

現場で活きる!流動性物質の管理ポイント

従来、流動性材料の管理は「配合比」「温度」「撹拌時間」「経験値」で成立してきました。

しかし、生産ラインの自動化やIoT化、高付加価値商品の製造には、より定量的な管理が求められます。

温度管理と粘度変動

多くの流動性物質で見逃せないのが“温度”です。

一般的に、温度が上昇すると粘度は低下し、逆に温度低下で粘度は上昇します。

工場の現場では、数度の温度差が「塗りムラ」や「固化不良」「ブリード」などのトラブルに直結するケースも多発します。

温調管理を徹底し、「管理点サンプリング(抜き取り)」などルーチーン業務のデジタル化により、ヒューマンエラーや感覚値依存からの脱却が求められます。

サプライヤー間のバラツキ管理

複数サプライヤーからの原材料調達が当たり前となった現代では、入荷ごとに粘度やレオロジー特性に微妙な差が生じるのが現実です。

管理する立場のバイヤーは「ロット間バラツキ」を予め想定し、スペックでの明確な定義、測定装置校正の確認、Lot品証・異常品対応フローを構築する必要があります。

また、生産現場では“どこまでが許容範囲なのか”“工程で吸収しきれるのか”を現場と調達で常にギャップなく共有することが現場安定化の要となります。

撹拌・供給・充填プロセスでの粘度監視

塗布や混練、ペーストの供給、充填工程など、流動性物質の「粘度監視」は不良品を未然に防ぐための鍵になります。

具体的には、生産設備や自動ラインで「インライン粘度計」を設置し、リアルタイムでプロセス粘度をモニタリングできます。

これにより、材料の異常流動やライン詰まり、過剰・過少充填といったライン停止リスクを大幅に削減できます。

ハンドワーク中心だった昭和型の現場から、こうした自動化IoTが現代工場の競争力となっています。

粘度・レオロジー測定の実際と先端解析技術

レオロジー解析の方法は多様化しており、次のような機器や測定手法が業界で広く用いられています。

回転式粘度計(Brookfieldなど)

伝統的な粘度測定装置で、カップ内の液体にスピンドルを回転させて、その「抵抗トルク」から粘度を測定します。

食品、薬品、塗料、化粧品と汎用性が広いです。

安価で操作も簡単ですが、単一せん断速度での恒常粘度しかわからず、非ニュートン流体には限定的です。

レオメーター(高精度せん断測定装置)

せん断応力・せん断速度を自由に変えながら、物質の粘度・弾性・応力緩和・破断点など複合的な解析が可能です。

「流動曲線(shear-rate curve)」や「コール・コールプロット」など先端解析もでき、学術分野・現場双方で重要性が増しています。

ラテラルシンキング的観点では、レオメーターのデータを「原材料受入検査」「工程異物分析」「製品開発(食感・塗布性)」そして「エンドユーザーの使い心地」の全段階に渡り活用することが差別化戦略になります。

プロセス粘度計・インライン粘度監視

温度・せん断速度の違いによる粘度変動や、材料充填中の粘度変化をリアルタイムで追跡できるのがインライン粘度計です。

「数秒ごとに測定し、ライン側で自動調整処理する」など完全自律型ライン実現のため、近年の自動化・スマートファクトリー構想で必須のツールとなりつつあります。

画像解析・AIによる異常検知

最近では流動映像やパターン解析、AIを使った「レオロジーパターン」で異常粘度や流動変化を検出する手法も出現しています。

事後測定だけでなく、「プロセスの流れをリアルタイムで見守る」という新たな地平が拡がっています。

ケーススタディ:バイヤー・現場・サプライヤーそれぞれの視点

バイヤー(購買担当)の視点

高い品質基準・納期遵守・トータルコスト最適化・持続性(SDGs)を求められる中、バイヤーはサプライヤーのレオロジー特性をどれだけ深掘りできるかで全体最適が決まります。

「粘度の合格範囲」「季節・ロットごとの変動幅」「サンプル時のレオロジー曲線データの開示」などまで条件に組込むと、安定生産・クレーム削減につながります。

更に、QCD(品質・コスト・納期)のバランスを取りながら「現場フィードバックを迅速にサプライヤーへ伝える」役割も非常に重要です。

現場(工場オペレーターや生産管理)の視点

現場では「想定と違う粘度」「機械詰まり」「吐出不良」で苦労する事がよくあります。

現場が自分たちの感覚だけに頼ると、“あのときは大丈夫だった”という昭和的経験則に陥りがちです。

そこで、計測データの蓄積や異常値判定の仕組みを明確化し、「異常発生時に誰が、どの工程で、どんな対策を取るか」をルール化してください。

また、粘度管理の定量化は工程の標準化・技能伝承にもつながり、異動や退職による技能断絶リスクも抑えられます。

サプライヤー(供給側)の視点

サプライヤーは、「自社の材料がどのような工程で使われ、何がトラブル原因になるか」を深く知ることが、ロングタームで選ばれる条件となります。

バイヤーの要求(スペック・標準偏差・納入タイミング)に対し、サプライヤー側でもバッファ管理や再現実験、バリデーションデータなどを見せ合うことで、本当のパートナーシップが育まれます。

また、安定供給のための工場間連携やバックアップ生産の仕組みも競争力の源泉です。

今後の業界動向:デジタル連携とレオロジーDX

AIやIoT、ビッグデータ解析が進化するにつれ、レオロジー管理も飛躍的に変わろうとしています。

今後、材料メーカー・サプライヤー・工場・バイヤーすべてが同じプラットフォーム上で「計測データをシームレスに共有」「異常傾向を市況・工程・シーズン単位で自動分析」する世界が見えてきます。

各社は現場に残る“アナログの壁”を越え、ラテラルシンキングでレオロジーのイノベーションを起こし、製造業全体の競争力を高めていく必要があります。

まとめ:流動性物質管理はラテラルシンキングで深化する

レオロジーは単なる「測定技術」ではなく、購買・生産・品質・開発・サプライヤー全体の最適化を実現する“つなぐ力”です。

「現場の勘」に頼る昭和的管理スタイルから一歩踏み出し、データ化・標準化・自動化・予測管理の時代へと突入しています。

読者の皆さんが粘度・レオロジーを新たな地平線から見つめ直し、自社・自現場の改革とイノベーションに活かしていただけることを期待しています。

資料ダウンロード

QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。

ユーザー登録

受発注業務の効率化だけでなく、システムを導入することで、コスト削減や製品・資材のステータス可視化のほか、属人化していた受発注情報の共有化による内部不正防止や統制にも役立ちます。

NEWJI DX

製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。

製造業ニュース解説

製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。

お問い合わせ

コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)

You cannot copy content of this page