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*2025年4月30日現在のGoogle Analyticsのデータより

投稿日:2025年4月25日

高度なサイバーセキュリティ技術に関する合併会社設立と共同開発方法

はじめに:ものづくり現場に押し寄せるサイバー脅威の現実

かつて製造業の最大リスクは設備の故障や品質不良でしたが、今やサイバー攻撃が最優先リスクに躍り出ています。
2022年には国内外の自動車部品メーカーがランサムウェア被害で数日間の操業停止に追い込まれました。
OT(制御系)とIT(情報系)の境界が曖昧になる中、昭和型のスタンドアロン設備や紙帳票が残っている工場ほど盲点が多いのが実情です。
この課題に真正面から取り組む手段として、「高度なサイバーセキュリティ技術に特化した合併会社(ジョイントベンチャー)を設立し、共同開発を進める」動きが国内外で活発化しています。

なぜ合併会社なのか:内製と外注のジレンマを超える選択肢

自社でセキュリティ人材を採用し内製化するには、競争激化の人材市場で年収1000万円超を提示しても奪い合いになるのが現状です。
一方、既存ベンダーに丸投げすると自社のOT特有のリスクを理解しきれず、汎用的な対策止まりになりがちです。
そこで、製造業とセキュリティ専業企業が株を出し合い、合併会社を設立することで両者のDNAを融合し、長期視点で技術を資産化できるメリットが生まれます。

ジョイントベンチャーで得られる主なメリット

・OT現場のリアルデータを合法的に共有し、PoCを短期間で回せる。
・自社専用ソリューションの開発でも出資比率に応じて他社展開し、投資回収が見込める。
・経営者同士が同じテーブルに座るため、予算獲得や意思決定が迅速。

設立プロセス:調達購買担当が押さえるべき7ステップ

1. パートナー選定とデューデリジェンス

相手企業の脆弱性診断実績、ICS/SCADAへの対応歴、財務健全性をリストアップし、統合的に評価します。
単なるITセキュリティベンダーではなく、ISO 62443認証サポート経験を持つ企業かどうかが分水嶺です。

2. 出資比率と議決権の設計

製造業側が過半数を取ると意思決定は早い一方、イノベーションの幅が狭まる恐れがあります。
45:55や50:50で共同代表制を採用し、技術ロードマップと資金計画で互いにコミットメントを明確にする形が増えています。

3. 知的財産権とライセンスモデル

合弁内で生まれたコードや特許の帰属先を明確にし、共同出願か単独出願かを事前に合意します。
後工程でM&AやIPOを狙う場合、IPクリーンネスが評価額に直結するため、法務部門との連携は必須です。

4. ガバナンス体制とセキュリティ水準

取締役会にCISO経験者を含め、リスク委員会と開発委員会を二層で設置します。
ISO/IEC 27001とNIST CSFを両輪に据え、四半期ごとに成熟度をセルフアセスメントすることで投資家からの信頼を確保できます。

5. 資金調達と補助金活用

経産省の「サイバーセキュリティ対策促進税制」やNEDOの実証支援金を組み合わせ、最大で投資額の3割を公的資金でカバーした事例もあります。
金融機関には環境・社会・ガバナンス(ESG)ローンの枠組みで低利融資を打診するのが最近のトレンドです。

6. 開発ロードマップとマイルストン設定

ゼロトラスト・アーキテクチャ導入、AI異常検知、量子暗号対応の三段階フェーズに分け、12か月ごとにKPIを設定します。
初年度は「ダウンタイムゼロの侵入検知」にフォーカスし、実績を作ってから拡張機能へ進むのがリスク最小化の鍵です。

7. エコシステム構築とオープンイノベーション

大学やスタートアップ、設備メーカーを巻き込んだ協業プログラムを設置し、外部APIを公開することで周辺サービスを呼び込みます。
結果として自社ソリューションだけでなく、サプライチェーン全体のレジリエンス向上につながります。

共同開発の実践方法:昭和型工場でも機能するアプローチ

アジャイル×ウォーターフォールのハイブリッド

制御系はハードウェア更新サイクルが長いため、ソフト側だけアジャイルで回すと整合が取れなくなります。
そこで、機能要求定義まではウォーターフォールで固め、ソフト実装とUI/UXは2週間スプリントで改善するハイブリッド型が最適解です。

デジタルツインを活用した高速フィードバック

実機を止めずにPLC、ロボット、MESを仮想環境にコピーし、攻撃シナリオをシミュレーションすることで開発スピードが3倍向上したケースがあります。
特に高価格帯の半導体装置や医薬品ラインでは、停止コストが1時間数千万円になるためデジタルツインは欠かせません。

セキュア・バイ・デザインとSBOM管理

開発初期段階から脆弱性検証を自動化し、ソフトウェア部品表(SBOM)を生成・更新しておくことで、後工程でのリスク対応コストを70%削減できます。
調達購買部門は部品仕様書だけでなくSBOM提出をRFP要件に組み込み、サプライヤーに義務付ける必要があります。

品質管理と認証:製造業ならではの視点

ISO 9001×ISO 27001の統合監査

品質マネジメントと情報セキュリティを別々に運用すると監査負荷と工数が倍増します。
統合監査に切り替えることで、手順書の共通化や教育コストの重複排除が可能です。

IEC 62443-4-1/4-2適合試験

制御システムのセキュリティ要件を満たすことで、海外顧客からの信頼を獲得し、輸出審査を円滑化できます。
試験結果はマーケティング資料としても強力な武器になります。

サプライチェーン視点のリスク共有と契約モデル

ペナルティよりインセンティブ型SLAへ

従来の罰金中心のSLAではサプライヤーが情報を隠蔽しやすくなります。
セキュリティインシデントを24時間以内に報告した場合、改善費用の一部を共同負担する「インセンティブ型」へ移行することで情報連携が活性化します。

サイバー保険と相互免責条項

合弁会社が開発したソリューションを使っていてもゼロリスクにはなりません。
サプライチェーン全体でサイバー保険を一括契約し、被害額補填と再発防止費用をカバーするスキームが欧州で実績を上げています。

導入効果の測定:KPIとROIの可視化

・MTTD(平均検知時間)を24時間から5分へ短縮。
・MTTR(平均復旧時間)を72時間から4時間へ短縮。
・ランサムウェアによる生産停止損失を年間3億円削減。
これらの定量的成果を財務報告書に反映させることで、経営陣のコミットメントが強化され、新規投資が継続的に確保できます。

ケーススタディ:自動車Tier1企業の成功事例

A社は国内セキュリティベンダーと50:50で合弁会社を設立し、創業2年目でIEC 62443適合ソフトを量産ラインに導入しました。
稼働1年でサイバーインシデント件数を85%減少させ、北米OEMへの納入シェアを10%拡大。
さらに自社開発したネットワーク監視装置を外販し、売上高50億円の新規事業に成長させています。

最後に:製造業の未来を守るのは現場と経営の共闘

サイバーセキュリティはIT部門だけの課題ではなく、品質・生産・調達・経営が一体で取り組むべき全社アジェンダです。
合併会社の設立と共同開発という手法は、人材不足と投資リスクを同時に解決し、昭和型のアナログ文化からデジタルシフトを促進する強力なレバーになります。
読者の皆さまも、自社だけで抱え込む時代から、エコシステムでリスクと成果をシェアする時代へ踏み出してみてください。
現場目線の実践的アクションこそが、ものづくり日本の信頼と競争力を次世代へ繋げる道しるべになります。

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