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フレッティング摩耗損傷メカニズム解析と締結部防止技術

目次
はじめに:フレッティング摩耗がなぜ問題なのか
フレッティング摩耗は製造業、とりわけ締結部を多く持つ機械装置や構造体で厄介な課題となっています。
この現象は、「目に見えない摩耗」ともいわれ、定期交換が難しい部品や、分解しづらい装置内部で静かに進行します。
締結ボルト、ピン、キー、さらにはベアリングなど、摩擦でわずかに動く「微摺動(びしゅうどう)」箇所で発生しやすく、結果として大きな損傷や構造破壊につながります。
製造現場では、「なんで定期的に締めなおしているのに緩むのか」「ボルト周りが黒ずんで壊れている」と疑問を持つことが多いですが、その根本原因のひとつが、実はこのフレッティング摩耗です。
本記事では、メカニズムの深堀りや、具体的な防止策まで、現場視点で徹底解説します。
フレッティング摩耗損傷のメカニズムを現場目線で解説
フレッティング摩耗の発生条件
フレッティングは、密着面同士のごく僅かな相対運動によって発生します。
代表的なのは、以下の3つの条件です。
・大きな荷重やバイブレーションにさらされている
・表面が密着して動けるスペースが小さい(数μm〜数十μm)
・繰り返し荷重や振動が長時間かかる
たとえば、軸とハブ、板金を連結するボルト、振動を受ける構造物などが該当します。
一見しっかり締結されていても、金属同士はミクロには完全な密着は難しく、微小なズレが生じます。
これが振動や繰り返し加圧で磨耗、酸化、剥離を誘発します。
メカニズム:表面損傷のステップ
フレッティング摩耗のプロセスは、主に以下の段階で進行します。
1.
荷重・振動による微動
2.
金属表面の微小破壊
3.
摩耗粉(酸化皮膜や金属粉)の生成と蓄積
4.
摩耗粉による二次摩耗・表面損傷拡大
最初はほぼ見えませんが、摩耗粉が蓄積されると、これ自体が研磨剤のようになり摩耗損傷を加速させます。
また、この摩耗粉はしばしば赤茶色や黒色の酸化物となり、「赤錆」や「黒染み」として現れます。
この段階になると、締結部の弛み、ガタ、破断など大きな事故のリスクが急増します。
摩耗の進行を加速する3つの要因
現場経験を踏まえると、以下の3つは特にフレッティング摩耗を加速させる「現実的要素」です。
1.
設計での精度不足(クリアランス過多や面粗さ)
2.
過信された締結(定期的な増し締めだけで対策しない)
3.
現場環境(粉塵、高温、高湿度など)の悪化
設計段階からの配慮、製品寿命を意識した部品選定やメンテナンス習慣が、そのままトラブル発生率に直結します。
昭和から続く「現場の常識」が抱える限界
「増し締め神話」と向き合うべき理由
多くの工場現場では、「ボルト締結部は定期的に増し締めすればいい」という昭和の常識が根強く残っています。
実際、振動や衝撃で緩みやすい箇所ほど、この方法が選ばれる傾向がありますが、実はフレッティング摩耗には不十分です。
むしろ、締結部の初期締付け力や、部材特性(弾性・剛性)、摩擦面の品質管理など、物理的要因の管理こそが本質的な対策です。
「頻繁な増し締め=延命」ではなく、「正しい締付け設計+対策材」が重要であることを広く認識すべきでしょう。
設備老朽化が摩耗トラブルを増幅させる
昭和から稼働し続けている設備には、明らかな摩耗痕跡やガタが多数見られます。
ネジ穴が変形している、表面が焼き付き気味、ベアリングの嵌め合いに遊びがある――こうした症状は、次なる大事故や品質クレームの予兆です。
昔は部品交換を「気合と勘」で乗り切れた現場も、今や納期短縮やリードタイム厳守、安定品質が求められます。
そのためには、フレッティング摩耗を「古い設備の宿命」ではなく、現場の真剣な技術課題として再認識しなければなりません。
フレッティング摩耗の現場的な予防・対策ノウハウ
1. 表面処理と潤滑剤の活用
摩耗を防ぐ最も手軽な手法として、「表面処理」と「潤滑」が挙げられます。
硬質クロムメッキやニッケルメッキ、固体潤滑被膜(モリブデン、PTFE)などは有効な方法です。
また、フレッティング専用のグリースやオイル、導電性潤滑剤も近年増えています。
ただし、定期的な再塗布や現場での塗りムラ、拡散リスクなど、単独活用では長期的な効果は難しいことも事実です。
2. 締結設計の最適化:バイヤー&サプライヤー両者の視点から
調達・購買担当としては、図面や仕様書から「本当にこの材料、設計が現場耐性を持つか?」を見極めるべきです。
・推奨される表面粗さ・嵌め合い公差を遵守しているか
・メンテレス化のために自己潤滑素材や防錆材を提案できているか
・市場のトラブル共有(異業種や他社事例)を設計部門と情報連携しているか
サプライヤー側も、コストと品質の両立で「どこまで現場ニーズに応えるか」を実践提案できるかが問われます。
たとえば納入後の初期点検や、フレッティング摩耗リスク部位の重点監視(IoTセンサー活用など)も競争優位のカギです。
3. 動的負荷のコントロールと現場教育
いかに摩耗対策を設計・材料に落とし込んでも、やはり最終的なキーポイントは「運用の現場力」です。
運転条件の見直し、過度な振動やサージ荷重の低減化、設備台数分散やメンテナンス周期の見直しなど、運用側でできる工夫も多数あります。
また、現場スタッフへの教育も重要です。
「なぜこのボルトだけ何度も緩むのか」
「なぜ摩耗粉が出る現象が起こるのか」について“なぜなぜ分析”や、異常現認訓練にも組み込むことで未然防止率は大きく向上します。
4. 製造業のDXと摩耗対策の新境地
IoTやビッグデータ解析が進む今、摩耗トラブルへの先制管理も現実的なアプローチになりつつあります。
たとえば、振動センサーや荷重センサーを活用したリアルタイム監視、摩耗予測AIの導入事例も徐々に増えています。
バイヤーにとっては、こうした最新技術に積極的なサプライヤーとの連携が将来の安心につながります。
サプライヤーとしても、トータルソリューション提案が採用率・リピート率アップの武器となるでしょう。
まとめ:製造現場の進化は摩耗トラブルとの戦いから始まる
フレッティング摩耗損傷は、一見些細な現象であっても、長期的には大事故や品質不良へとつながる怖い課題です。
現場では「気合と勘」だけではなく、設計・材料・現場運用・DXまで総合的な視点で取り組むことが求められます。
「なぜ緩むのか」「なぜ摩耗するのか」を追求することで、製造現場の生産性向上や安全性確保が大きく前進します。
バイヤー、サプライヤー両方が“現場目線”で情報共有し合うことこそが、製造業の永続的進化のカギです。
昭和から続くアナログ思考の転換点を、新たな地平として切り拓き、摩耗トラブルゼロの製造現場をともに目指しましょう。
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