投稿日:2025年12月31日

曲げ加工機で使う位置センサ部材の誤検知に悩まされる従業員の本音

はじめに―現場を悩ませる「曲げ加工機の位置センサ誤検知」問題

近年、AIやデジタル化の波が工場にも押し寄せ、IoTや自動化が大きなテーマとなっています。
しかし、現場で実際に導入されている設備の多くは、依然として昭和〜平成初期に導入されたものが主流です。
その中でも、曲げ加工機というプレス・板金現場には欠かせない工作機械では、「位置センサ誤検知問題」が根深く存在します。

私は20年以上の現場経験と工場長としての立場から、この問題に何度も直面してきました。
この記事では、実体験を交えて“現場目線”でこの問題を深堀りします。
装置メーカーやサプライヤー側の方、またバイヤーや購買担当者を目指す方にとっても、「なぜ現場が困っているのか」「どこに改善の糸口があるのか」という生の声やリアルな状況を知る参考になるはずです。

曲げ加工機における位置センサの役割とは

なぜ位置センサが必要か

曲げ加工機では、金属板を複雑な形状に曲げる工程において、寸法精度や加工の安全性が極めて重要です。
そのため、加工材料や金型、可動部の正確な位置把握や、材料投入・排出の検知に位置センサが不可欠となっています。

実務の現場では、主に下記のような用途で使用されています。

– テーブル(ベッド)の原点検知
– プレス位置のストローク確認
– 材料セット完了・排出確認
– 金型交換の位置あわせ

これらのセンサが正しく動作することで、正確・安全・効率的な生産が実現できるのです。

現場でよく使われるセンサのタイプ

曲げ加工現場で多用されるのは、主に以下のセンサです。

– リミットスイッチ(有接点)
– 光電センサ
– 近接センサ(誘導型、静電容量型)

近年は磁気センサや、IoT連動センサも増えつつありますが、大型案件や保守契約上、古いタイプがずっと使われているケースも多いのが実情です。

現場を困らせる“位置センサ誤検知”の実態

誤検知はなぜ起きるのか?主要原因を深掘り

誤検知が起きる要素は多岐にわたります。
経験則を交えて、その主な原因を整理します。

1. 油ミストや水分・粉塵の付着
金属加工現場では、油や水、金属粉が日常的に飛散します。
これがセンサ部分に付着すると、光の通り道が遮断されたり、ノイズが生じたりして、正しい判定ができません。

2. 電波ノイズ・周囲機器との干渉
新しいインバータ機器や溶接ロボットなどから発生するノイズがセンサ回路に混入することで、反応が不安定になります。
特にアースが弱い設備では、ノイズの影響を受けやすいです。

3. 機械的な取り付けズレや金具の緩み
繰り返しの加振や金型交換作業によって、センサの固定が緩み、わずかに位置がずれただけで誤作動するケースが後を絶ちません。

4. 経年劣化(配線のサビ・内部コンタクトの酸化)
長年使っているセンサ自体、または接続配線が劣化すると接触不良となり、結果として誤検知が多発します。
昭和時代から使っている装置では特にリスクが高いです。

5. 材料側起因(表面状態・反射・材質変化)
素材の表面がサビていたり、油まみれの場合や、素材ロットが変わって反射率が異なる時などにも見落とされがちです。

“現場目線”で見たセンサ誤検知がもたらす本当の困りごと

こうした誤検知は、表面上は「センサ交換」「調整」で回避可能に見えます。
ですが、工場現場で実際に発生している困りごとはより深刻です。

– 繰り返す作業停止と「原因不明」の調整作業(作業員の負荷増、手待ち時間の発生)
– 不安定な稼働の連鎖による「生産計画の乱れ」
– センサー不調なのか機械異常なのか判別困難な故障対応
– エラー解決のために余計な金型や材料を何度も交換・調整される無駄
– サプライヤーに対する“品質苦情”や信頼低下

現場の従業員は、不具合発生の度に緊張したり「またか…」と無力感に苛まれることも多く、離職や生産性低下、人材育成の悪循環さえ引き起こしています。

課題の背景—昭和・平成の“アナログな伝統”に起因

古い設備文化と保守体制がもたらすジレンマ

古くから「壊れたら現場対応」という現場力頼みの文化や、「純正品以外は禁止」「改造はNG」というルールが、技術革新や改善施策を阻んできました。
また、現場の声が本社や装置メーカーの設計部門まで正確に伝わりにくいのも、構造的な課題です。

保守部材の標準納期が長く、緊急時には互換品の使用や配線の“仮修理”でしのぐことが常態化し、「本当の根治」が遅れる悪循環があります。

“位置合わせ”職人技が求められるアナログ作業の限界

加工精度やトラブル対策を“職人の勘”や“現場の神対応”で切り抜けるという現実もまだ多いです。
例えば
「この材料は油っぽいから、あそこのセンサはあてにするな」
「今日は湿度が高いから光電センサをウエスできれいにしとけ」
といった、ノウハウの属人化・ブラックボックス化が進みます。
若い世代がなかなか継承できず、組織全体のリスクにもなります。

業界最前線—技術革新と現場適応の“ギャップ”

AIセンサやIoT活用が現場にもたらす未来と課題

近年はAI搭載やセルフモニタリング型の高機能センサも登場しています。
検出精度やノイズ耐性も格段に向上し、生産設備と連動した自己診断やQRコード管理などで「止まる前の予兆把握」が可能です。

しかし
– 投資コストが割高(既存設備そのままでは使えない)
– 古い装置への組み込み・現場習熟が進まない
– 仕様打ち合わせのたびに現場と本社・メーカーでの意思疎通が難航する
など、現実には導入ハードルが高いのが正直なところです。

現場が求める“理想のセンサ”とは

製造現場の本音から言えば、「安定していて変更が少ない」「故障時にすぐ交換できる」「汚れやノイズに強い」ことが求められます。
加えて、「複数メーカーの互換性」や「交換時の調整が簡単」「取り付け・配線作業の省力化」が現場作業者の切なる願いです。

バイヤー・サプライヤーが押さえるべき“現場目線の本質”

コストダウンよりも“ダウンタイム撲滅”を優先する理由

購買・設計部門が「価格」「標準化」優先で部材選定しがちな一方、現場はトラブルによる稼働停止(ダウンタイム)の甚大な損失を痛感しています。

安価な非純正品、あるいは現場で実績のない新型センサの採用は
「交換したけど現場適応に失敗した」
「保証外トラブルで結局二度手間」
など、“余計な負担”を生みます。

バイヤー、調達担当者には「現場稼働の安定性」や「工程停止リスク」の定量化とその説明責任、サプライヤー提案時の“現場ヒアリング”重視が強く求められるのです。

サプライヤー視点:信頼獲得に絶対必要なアクション

サプライヤーに求められるのは、「カタログスペックの高さ」よりも
– どのような現場環境になら強いのか
– 交換・保守時の現場作業負担
– トラブル発生時、迅速な現場フォローがあるか

といった“現場のリアル”への目線です。
実績を伴う導入事例や、現場担当者への直接ヒアリングを通じ、実際のワーク環境や工程フローまでくまなくサポートできる体制を提示することが大きな信頼につながります。

今、現場で本当に求められる「新たな視点」

アナログとデジタルの“ハイブリッド”思考こそ最適解

「新しいものを入れれば解決」と短絡的に考えず、既存設備の現状把握・ノウハウ見える化・現場作業の無駄取り・段階的なデジタル導入といった“ハイブリッド戦略”が重要です。

たとえば
– センサの定期点検・清掃を作業標準書に明記しルーチン化
– トラブル履歴をデジタル台帳で管理し傾向を数値化
– 重要工程には高機能な新型センサやAI導入し、省力化を段階的に推進

こうした地味な本質的改善を積み重ねることが、現場の“困りごと体験”を減らし、結果として製造業の競争力向上に直結します。

まとめ―現場の声を「ものづくり革新」の原動力に

位置センサ誤検知は、「たかが誤作動」ではなく製造現場を深く悩ませ続けています。
その解決には、設備と現場作業のリアルなギャップ、アナログな伝統と最新技術の狭間にある“真の困りごと”に耳を傾けることが重要です。

「従業員の本音」を正しく理解し、バイヤー・設計・サプライヤーなど多様な立場が現場目線で課題に向き合うことで、初めて真価ある改善が生まれます。
昭和・平成から令和へ。
ものづくりの発展は現場の本音にあり――この視点こそが、今後の製造業イノベーションの根幹だと私は考えます。

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