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ぬれ性の測定と評価による親水性撥水性制御の基礎と応用技術

目次
ぬれ性の測定と評価による親水性・撥水性制御の基礎
ぬれ性とは、液体が固体表面にどの程度広がるか、あるいは弾かれるかという現象を指します。
この現象は、実は身の回りのあらゆる製品の品質や機能に直結しています。
たとえば、自動車のフロントガラスに使われている撥水コーティングや、プリント基板の製造工程における湿式処理、さらには塗装工程の塗液の広がりまで、ぬれ性の調整は不可欠です。
昭和時代から現場で大切に扱われてきた現象ながら、デジタル化の波とともにより緻密な管理が可能となっています。
ここでは、ぬれ性の基礎と現場目線での測定・制御方法を解説し、最先端の応用事例まで紐解きます。
ぬれ性とは何か?
ぬれ性は、液体—固体界面における界面エネルギーのバランスによって決まります。
液体の小さな滴を固体表面に垂らしたとき、滴が広がれば「親水性(ぬれ性が高い)」、丸くなると「撥水性(ぬれ性が低い)」と判断できます。
この性質は、水滴の接触角で定量的に表現されます。
接触角が90度未満であれば親水性、90度を超えていれば撥水性とみなされます。
なぜ、ぬれ性制御が必要なのか
製造現場では、製品機能・品質を確保するためにぬれ性を適切にコントロールする必要があります。
たとえば、塗装や接着工程では、十分な親水性が必要です。
逆に、防汚コーティングのように水や油をはじきたい場合は、撥水・撥油性が重要となります。
また、最先端分野の電子部品や半導体製造では、ごく微細なパターン上で濡れを精密に制御する必要があります。
このように、単純な工程管理の話にとどまらず、“機能発現のための基礎技術”という位置づけになってきています。
ぬれ性の測定方法と現場での注意点
ぬれ性制御を実現するためには、まず「適確な評価」が欠かせません。
ここでは、現場でよく使われている測定評価方法と注意点を紹介します。
接触角法
最もポピュラーなのは「接触角法」です。
液滴を表面に滴下し、その接触部分がなす角度(接触角)を測定します。
専用の「接触角計」では、微細な液滴を垂らし、高分解カメラで輪郭を取り込み、画像解析によって正確に接触角を測定します。
この測定データから、表面の親水・撥水状態を数値化できます。
スプレッド法・ワイピング法
手軽に現場で使われる簡易法も多く存在します。
たとえば「スプレッド法」と呼ばれる方法では、微量の水を表面に広げて、その広がり具合を観察評価します。
また、工場現場では「ワイピング法」といって専用の布で拭き取り後のムラを目視で確認する手法も根強く用いられています。
どちらも迅速ですが、ばらつきが生じやすいため、標準的な評価方法との併用や定期校正が欠かせません。
現場評価の落とし穴
嗜好性の判断や簡易法に頼りきることが、現場トラブルの温床になることもあります。
たとえば、表面の微細な油膜や異物混入による変化は、簡易検査は見逃してしまう場合が少なくありません。
「トラブル現場は、測定データを必ず記録しておく習慣」を根づかせることで、再発防止やフィードバックサイクルの強化につながります。
この“データドリブンな品質管理”こそ、アナログ業界を昭和から令和へと進化させる鍵なのです。
親水・撥水性の制御技術
ぬれ性制御は、素材表面の化学的・物理的特性をコントロールすることで実現します。
その実践手法を系統的に整理してみましょう。
化学的な表面改質
代表的なのが「洗浄」「エッチング」「コーティング」など、素材表面を化学的に処理する方法です。
たとえば、親水性を高めるには界面活性剤による処理やプラズマ・UV照射による高エネルギー洗浄が有力です。
撥水性を付与するには、フッ素系やシリコーン系のコーティングを表面に施す方法が採られます。
実際には、下地の状態や前処理方法に大きく左右されるため、最適条件の探索やライン検証が必要です。
また「いつもの薬液」と「いつもの温度・時間」が本当に最善かどうか、常に現場で確かめる観察眼が問われます。
物理的な表面構造制御
近年注目されているのが、ミクロ・ナノレベルで表面構造を精密に加工する技術です。
たとえば、水をはじくロータスリーフ(ハスの葉)効果は、表面の微細起伏によるものです。
近年では、レーザーパターン加工やナノインプリント技術を使い、人工的に超撥水・超親水の表面を作り出す応用技術も増えてきました。
量産現場での安定再現には、加工精度だけでなく、後工程での表面ダメージの管理が肝心です。
ここに、現場オペレーターの経験則や観察力が今なお高い価値を持っています。
複合的なマルチレイヤー技術
一つの方法だけではなく、複数の改質手法を組み合わせるケースが増えています。
たとえば、親水コーティングを施した後にプラズマ処理を重ねることで、持続性を強化するといった例です。
開発現場と量産現場で工程最適化を行うため、数値的品質の蓄積と実地検証の往復が不可欠となります。
実践的応用と製造業での最新トレンド
ぬれ性制御は、今や単なる工程管理ではなく、製品価値向上のためのコア技術です。
では、どのような分野でどのように求められているのでしょうか。
プリント基板・エレクトロニクス分野
プリント基板のフォトレジスト塗布や半導体ウェーハ洗浄では、極限までの親水性付与や「均一なぬれ状態」が求められます。
表面のわずかな油膜残存がクリティカルな欠陥につながるため、自動車やスマホ、IoTデバイス業界のサプライチェーンでは、ぬれ性測定値の厳格なトレーサビリティ管理が進んでいます。
自動車・航空機などの機能コーティングへの応用
フロントガラスの撥水コートや車体の疎水性・防汚性コーティング、航空機の着氷防止など、高次機能コーティング技術にもぬれ性制御が不可欠です。
超親水性によるセルフクリーニング機能や超撥水性による保護層など、表面改質の目的も多様化しつつあります。
現場では、耐久性・リワーク性など「長期安定実装」のための評価技術開発も進んでいます。
食品・医療・日用品分野への広がり
食品工場のラインでは、水切れのよい親水表面が衛生管理上不可欠です。
一方で、医療用カテーテルや検査デバイスでは、血液や薬剤の流れを制御するため、ピンポイントでの撥水・親水部の切り替え技術が実用化されています。
日用品分野では、メガネや窓ガラスの曇り止め加工、ウェアラブル機器の防水防油コートなど、人々の暮らしに直結した領域へも着実に拡大しています。
バイヤー視点・サプライヤー提案力の強化ポイント
購買・調達担当者やサプライヤーの提案担当者にとって、ぬれ性制御技術への理解は今後ますます重要となります。
ここではバイヤー視点、サプライヤー視点で押さえるべきポイントを整理します。
バイヤー目線の着眼点
– ぬれ性測定データの客観性、標準化への取り組み(JIS規格対応、認証制度など)
– 表面改質工程を含めた一貫生産、およびトレーサビリティの明確化
– 量産・ロット間バラつきや工程安定性に対する再発防止策
– 環境負荷低減(エコ洗浄、グリーンコーティング)の状況
これらは、品質トラブルを未然に防ぎ、サステナビリティや信頼性担保の観点からも重要です。
サプライヤーが身につけるべき提案力
– 客観的かつ定量的ぬれ性データの提出(測定環境・手順まで明示)
– 技術的差別化(独自の表面改質プロセス、長期耐久性テスト結果の開示)
– バラつき要因の明確化と現場支援体制(再現性向上の観点)
– カスタマイズ技術対応力(材料や用途に応じた最適化メニューの提案)
デジタル化時代においては、見栄えやカタログ値だけでなく、データと現場力の両輪が求められます。
まとめ:アナログ技術の進化は“現場力×データ”から
ぬれ性制御の技術は、昭和時代の「匠の勘」と呼ばれる熟練技術が今日のデータ活用へと進化し続けています。
今後も新素材、微細加工、AIによる品質管理など、新たな地平は広がり続けます。
ですが、現場で働く人の観察力・問題発見力・そして粘り強い実地検証力が根幹であることは変わりません。
本稿が、製造現場や購買・提案活動のヒントとしてお役立ていただければ幸いです。
製造業の持続的成長には“ぬれ性”のような基礎現象の深い理解と、現場情報の数字化・標準化が欠かせません。
共に一歩先のソリューションを目指しましょう。
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