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金属腐食防食の基礎と事例および腐食寿命予測

目次
はじめに:金属腐食防食の重要性
製造業に携わっていると、金属腐食という課題は避けて通れません。
部品や設備の寿命、品質、さらには工場の稼働率や安全性にも深く関わるからです。
長年の現場経験からも、腐食トラブルを「ただの経年劣化」と侮って後回しにすることが、後々のコスト増や納期遅延、事故の原因につながる現実を痛感してきました。
本記事では、バイヤー・調達や工場生産に携わる方、またはサプライヤーの立場からバイヤーの視点を学びたい方に向けて、金属腐食と防食の基礎に加え、最新事例や寿命予測のポイントを現場目線で詳しく解説します。
金属腐食とは何か?現場で押さえるべき基礎知識
金属腐食のメカニズム
金属腐食とは、金属が環境と反応して劣化や破壊に至る現象です。
主な原因は、空気中や水中に存在する酸素・水分との電気化学反応です。
たとえば鉄は水と酸素があるだけで「赤さび(酸化鉄)」になりますし、アルミや銅も条件次第で腐食層を形成します。
この化学的現象をしっかり理解しておくことで、どこにリスクが潜んでいるかを事前に察知しやすくなります。
現場で問題となる主な腐食種別
1. 総合腐食(全面的な均一腐食)
2. 局部腐食(ピンホール、孔食、隙間腐食)
3. 異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)
4. 応力腐食割れ
5. 微生物腐食(バイオ腐食)
製造現場や設備保守、輸送過程で発生しやすいのは、「局部腐食」や「異種金属接触腐食」です。
特に近年の多素材化・軽量化が進む中で、異種金属接触による不具合や隣接配線部での局部腐食が増えています。
腐食防食の現場対策
防食の基本アプローチ
1. 環境制御:湿度管理、除湿装置の設置、腐食性ガスの抑制など
2. 材料選定:耐食素材、メッキ、コーティング採用
3. 設計・構造面での工夫:水捌けや清掃性、電気絶縁など
昭和時代から「現場合わせ」のアナログ対策が根付いていますが、現代では標準化や、データによる効果検証が主流になりつつあります。
とはいえ、現場目線の工夫—たとえば、雨や結露のたまりやすい部分への水切りや、接触部分への絶縁—は、今も根強く有効です。
現場でよく見かける腐食防食の具体例
・鋼材にジンクメッキや塗装、防錆油塗布
・水道配管の内部ライニングや樹脂コーティング
・電極や端子部に絶縁グリス・防水シール用ガスケットの適用
・分解清掃可能な設計と点検間隔の設置
特に生産設備や工場内搬送装置等、絶えず稼働して水気や油脂にさらされる部位は、こうした多重防食が非常に重要です。
腐食の実際の現場事例と教訓
事例1:屋外保管中の部材腐食
ある精密機器部品メーカーでは、屋外仮置きしたアルミ製品が短期間で白さびによる変色・腐食に至りました。
原因は、塩分を含んだ雨や湿度上昇による部品表面の水膜化です。
解決策として、保管時の養生・通気確保・定期的な点検体制の導入が挙げられ、工程内での腐食リスク低減に繋がりました。
事例2:異種金属間ガルバニック腐食
生産設備の配線固定金物で、「鉄」と「アルミ」を組み合わせた部分に腐食トラブルが頻発しました。
これは、両金属の電位差により鉄が優先的に腐食した事例です。
部材間を樹脂ワッシャーで絶縁し直すことで、防食性が大きく改善されました。
事例3:メンテナンスコストの爆発
旧来型の工場ラインでは、防食対策が「習慣的な油拭き」「スプレー式の防錆剤散布」だけでした。
数年後には内部腐食進行により機器の交換サイクルが縮まり、総コストで見ると大きな損失になりました。
デジタル点検、各部の腐食診断を組み込むことで、交換タイミングの最適化・ライフサイクルコスト低減が実現できました。
腐食寿命の予測―なぜこれが現場改革のカギなのか
腐食寿命予測とは
腐食寿命予測とは「どのくらいの期間で腐食による機能低下や破損が発生するか」を見積ることです。
これは単なる理屈や理論値だけでは決まりません。
実際には設置環境・使用材料・防食処置・メンテナンス履歴など複数の要素が絡みます。
腐食寿命の正確な把握によって、次のようなメリットが生まれます。
・予防保全の計画がたて易くなる
・ライフサイクルコストの最適化
・トラブル未然防止と品質保証向上
・リスクアセスメントの定量化
寿命予測の最新動向と現場展開方法
近年ではAIやIoT化の進展によって、腐食進行データ、温湿度データなどをセンサーで即時取得・解析できるようになっています。
以下のようにステップを踏むことが主流です。
1. 設備・部品ごとの「過去の腐食履歴」や「材料情報」をデータベース化
2. 定期的な現場点検・IoTセンサーで環境データ・腐食進行度を監視する
3. データ分析によって異常進行や「差し迫った交換」「メンテ要」の部位を可視化
4. 寿命予測と現場判断をクロスチェックし、最適な保全計画を立案
この流れにより、「何となくこの辺が痛みそう」から「何年何ヶ月で機能限界がくる」と定量的に管理できる体制に近づきます。
バイヤー視点・サプライヤー視点で知っておくべき腐食管理の要点
バイヤー(調達・購買)の立場で意識すること
部品や材料の選定時には、単価の安さだけでなく、耐食材料・防食処理有無・メンテナンス体制をチェックしましょう。
見積比較の際、腐食トラブルが起きた場合の実損(交換費用・納期遅延・信頼低下)まで含めた「トータルコスト評価」が現場では非常に現実的です。
また、サプライヤがどこまで腐食保証・アフターケアを行えるかも契約時に盛り込むことが推奨されます。
サプライヤー(供給メーカー)で重視したいアプローチ
単なる材料供給から「腐食管理ソリューションの提供」へ進化しましょう。
例えば、けっして高価な耐食材料だけを勧めるのではなく、現場環境や用途に応じた防食提案、腐食診断サービス、現場教育支援を加えることで、バイヤーからの信頼が圧倒的に高まります。
耐食データや実製品での防食事例を用意しておくことも、選定理由の明確化に役立ちます。
昭和から令和に!アナログ産業で根強く残る腐食管理の課題と未来像
金属腐食防食は、実は一過性の対策や製品だけでは対応しきれません。
現場には「やれば何とかなる」というアナログ的思考も依然根強く、日本の多くの製造現場ではまだデータ管理や標準化の浸透が遅れているのも事実です。
しかし、ダウンタイムや安全性、サステナブル経営やISO対応が求められる今、腐食管理こそ「現場DX化」の突破口となります。
・IoTモニタリングの導入
・劣化診断AIの活用
・設計初期から耐腐食仕様・材料比較
・トータルコストマネジメントと定量評価
現場の知見、職人の勘に加え、データや最新技術を組み合わせることで、腐食トラブルを最大限予防し、製造業全体の競争力強化に結びつきます。
まとめ:現場目線×データで「真の防食管理」へ
金属腐食・防食は、設計・調達・生産・保守の全現場で密接に関係しています。
昭和から令和へ、伝統的な知恵を活かしつつ、現代的なデータ活用・予測管理を組み合わせることで、トラブルを未然に防ぐ「攻めの腐食対策」が実現できます。
バイヤー・サプライヤー両方の立場で視野を広げることが、製造業全体の発展へとつながっています。
現場での小さな腐食不良を「見て見ぬふり」せず、一つ一つ丁寧に掘り下げる――
その積み重ねが、設備・製品・会社全体の未来を変える大きな一歩となるでしょう。
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