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FOWLPファンアウトウエハレベルパッケージの基礎と最新技術および将来展望

目次
はじめに:FOWLP(ファンアウトウエハレベルパッケージ)とは何か
FOWLP(Fan-Out Wafer Level Package、ファンアウトウエハレベルパッケージ)は、近年の半導体実装技術において、革新的な進化を遂げているパッケージング方法の一つです。
この技術は、従来のパッケージングプロセスに比べ、より高密度かつ高性能なチップ実装を可能とし、IoTやスマートフォン、車載電子機器、AI向けデバイスなど幅広い分野で急速に採用が進んでいます。
製造業の現場でも、品質、歩留まり、調達効率のバランスを常に求められるなかで、FOWLPはその各面において大きな影響を及ぼしています。
FOWLPが注目される背景:業界動向と課題
近年、電子デバイスの小型化や高性能化のニーズがますます高まっています。
かつて主流だったワイヤボンディングやリードフレームパッケージでは、微細化・多端子化・高速伝送といった現代の要求に応えるのが困難になってきました。
さらに、サプライチェーン全体では「省スペース」「コスト低減」「信頼性の向上」といった観点が求められています。
従来のパッケージでは、基板スペースの制約や、回路間の配線長増加による信号遅延、発熱・熱劣化などの課題が顕在化していました。
その中で、FOWLPはウエハレベルでのプロセスとパッケージングを融合させることで、こうした課題を一気に解消し、高密度かつ高信頼性、高速処理を実現しています。
FOWLPの構造と基本プロセス
基板レスを実現する技術
FOWLPの最大の特徴は「基板レス構造」にあります。
従来型パッケージはシリコンダイをプラスチック封止し、基板上にワイヤボンディングする、またはフリップチップで実装する方法が主流でした。
FOWLPの場合、シリコンダイを再配線層(Redistribution Layer:RDL)上に配置し、これにより外部端子数を大幅に増やすことができます。
基板が不要となることで、パッケージの薄型化や小型化、そしてコストダウンが実現します。
主なプロセス工程
1. ウエハダイシング
最初に、完成したウエハ(シリコン上に複数のICダイが形成されたもの)を個々のダイごとにカットします。
2. ダイアタッチ
個々のダイを、キャリアウエハあるいは再配列基板上に「ばら撒く」ように複数配置します。
3. モールド
ダイの隙間を樹脂で埋めて一体化させ、新しい大口径のモールドウエハを形成します。
4. 再配線形成(RDL工程)
モールドウエハ上に金属の配線パターン(再配線層)を高精度で形成します。
5. バンプ形成・切断
外部接続用の端子(バンプ)形成後、モールドウエハを個々のパッケージへ切り離します。
この独自の流れが、従来と一線を画するFOWLPの技術的イノベーションです。
FOWLPの最新技術動向
高密度化の進展
最近では、集積回路の設計自由度向上や、配線層の微細化が進んでいます。
また複数のダイ(チップレット)を一つのパッケージ内に集積する「マルチダイ構造」や「2.5D集積」への応用も進展中です。
これにより、例えばSoC(System on Chip)のような大規模集積がコスト効率良く実現できるため、スマートフォンや自動運転デバイスをはじめとする先端電子機器での採用が加速しています。
異種材料集積と熱マネジメント
半導体の高性能化に伴い、発熱や熱特性差による不具合が顕在化しています。
FOWLPでは熱伝導率の高い材料を封止樹脂やRDL層に選択できるようになり、より効率的な熱拡散設計が可能となっています。
また、AIサーバやEV(電気自動車)用パワーデバイス向けには、放熱性と信頼性を両立させるオプション技術の研究も進んでいます。
歩留まり改善と検査・トレーサビリティ技術
パッケージの大規模化や高集積化に伴い、生産現場では微細な不良の早期検出や歩留まり向上策が不可欠になっています。
最近は、高分解能X線検査やAIによる画像認識、自動トレースシステムの導入が進み、工程間での不良解析が効率化されています。
これによって量産ラインのダウンタイム減少や、不良品の未然防止が実現されてきています。
FOWLP導入による製造現場・調達へのインパクト
調達戦略における変革
部品点数の削減や工程短縮により、仕入先選定・管理の難易度は上がっています。
従来は複数の基板・樹脂・金属端子サプライヤーとの調整で多段階構造となっていましたが、FOWLP普及で「材料ロットの大規模化」「高品質素材サプライヤーへの集約」など、調達戦略のパラダイムシフトが起こっています。
バイヤーは「納期の一元化」「最適ロットサイズ選定」といった新たなスキルを求められます。
生産管理から見た課題と対策
FOWLPは従来に比べ工程の集約化が進みますが、その分工程管理や現場オペレーションの難易度も高まります。
例えばRDL形成精度への要求や、モールド時の歪み対策、洗浄・乾燥工程の品質確保など、各工程で現場力が物を言う局面が増えています。
また、昭和時代から続く「現物主義」や「眼で品質を見極める」といったアナログマインドが、最新自動化設備やAI検査と融合することで、より高レベルの品質保証体制構築が進行中です。
サプライヤーの立場から見たFOWLP業界動向
サプライヤー視点でのバイヤー動向把握には、「高品質素材」「短納期供給」「技術提案力」の3点がより重視されます。
FOWLP向けの樹脂や金属、配線材料は連続生産・一貫品質が厳しく問われるため、過去の「物量主義」から質重視へシフトしています。
また、材料サプライヤーとしては、顧客設計初期段階からの技術提案やカスタマイズ力、量産化に向けた安定供給体制の開示が受注のカギとなります。
サプライチェーン全体が従来以上に情報共有と柔軟性を持つことが求められています。
FOWLPの将来展望と、製造業に求められる変化
FOWLPはその進化により、「パッケージレス」「設計自由度の飛躍的向上」「カーボンニュートラル化」「高速・低損失伝送」など、今後のエレクトロニクス産業をリードする技術です。
AI、5G、EV、IoT、メタバースといった次世代分野へも幅広く応用されるため、いち早く潮流を捉え、自社の技術・調達・品質体制をグローバル水準へと引き上げていく事が生き残りのポイントとなります。
また、30年以上も昭和流の手仕事に頼ってきた中堅・老舗メーカーも、FOWLP時代を生き抜くため、現場力×デジタル技術、素材開発力×市場価値創造力をミックスした「ものづくり新時代の現場改革」が不可欠です。
まとめ:現場目線でのFOWLP時代への備え
FOWLP(ファンアウトウェハレベルパッケージ)は、今後の半導体・エレクトロニクス産業にとって、イノベーションの中心的存在です。
バイヤーや生産管理担当は、調達サプライチェーンの最適化と、品質保証、設計部門とのシームレスなコラボレーション力を高めることが求められます。
サプライヤー各社には技術力・提案力・柔軟な供給体制の刷新が重要となるでしょう。
そして何より、「現場で何が起きているか」を自分の目と耳で確かめ、ラテラルシンキングで新たな地平線を切り拓く姿勢が、FOWLP時代の勝ち残りにつながります。
変化を恐れず、経験と先進技術を融合させた“新たな現場力”をぜひ体得していただきたいと思います。
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