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*2025年4月30日現在のGoogle Analyticsのデータより

ライトフィールド技術の基礎とコンピューティーショナルディスプレイへの応用

目次
ライトフィールドとは何か――二次元画像を超える情報量
ライトフィールド(光線空間)とは、空間内を飛び交うすべての光線の位置と方向、波長、強度を四次元以上のパラメータで表現する概念です。
従来のカメラがXY平面における輝度の二次元情報しか取得しないのに対し、ライトフィールドは「どこから/どこへ」光が進むかという角度成分も捕捉します。
この追加情報こそが、撮影後の自由視点生成や被写界深度の再計算、さらには裸眼立体視ディスプレイなど、従来画像処理では不可能だった応用を可能にします。
製造業目線でのライトフィールド技術の魅力
・組立ラインでの外観検査において、ワークの奥行き手がかりを非接触・高速に取得できる。
・技能伝承用VR/AR教材を自由視点で記録・再生し、熟練工の手元動作を立体的に学習させられる。
・完成品プレゼン用の3Dコンフィギュレーターを高精細に実装し、営業・設計・購買のコミュニケーションロスを最小化できる。
ライトフィールドの取得方式――マイクロレンズアレイとアレイカメラ
マイクロレンズアレイ型(MLA)
イメージセンサー直前に数十万個の微小レンズを敷き詰め、各マイクロレンズごとに微細な視差画像を同時取得する方式です。
単眼カメラで済むため光学系がコンパクトで、スマートフォンなどモバイル端末への組込み実績も増えています。
ただし、空間分解能と角度分解能はトレードオフであり、製造業で多用される高解像度外観検査では画素密度不足が課題です。
アレイカメラ型
複数台のカメラモジュールを並列配置し、視差画像を後段で合成してライトフィールドを再構築します。
工場のロボットアーム先端やAGVに搭載すれば、死角の少ない三次元認識が可能です。
一方、キャリブレーションずれが画質に直結するため、量産ラインでは治具精度と温度ドリフト補正の設計が重要になります。
コンピューティーショナルディスプレイの原理――光線を“再生”する
ライトフィールドを表示側で再現する技術がコンピューティーショナルディスプレイです。
裸眼3Dディスプレイやホログラフィックディスプレイ、近年注目の多層LCD+バックライト走査などが該当します。
従来の2Dパネルに「計算」を加え、限られたハードウエアから広い視差・奥行きを生成する点が特徴です。
多層LCD+バックライト走査方式
数枚の液晶パネルをミリ以下の間隔で積層し、各層に異なるサブフレームを同期表示させます。
バックライトをマイクロLED化し、ゾーンごとに輝度を高速変調して光線の角度分布を作り出します。
製造面では、
・ガラス基板の貼り合わせ公差±3µm以下
・液晶層間のパララックス補正アルゴリズム内製化
・マイクロLEDバックライトの歩留まり向上
が歩留まりを左右します。
導入検討フロー――バイヤーとサプライヤーが押さえるべきポイント
1. 目的機能の優先順位付け
自由視点生成、奥行き取得、裸眼立体視のどれを重視するかで、カメラ方式・ディスプレイ方式は大きく変わります。
バイヤーは「解像度」「フレームレート」「視域(視線追従の要否)」の三軸で必須値をまず決めてください。
2. 光学モジュールの調達難易度
MLAやマイクロLEDはまだサプライヤー数が限られ、短納期対応が難しいのが現状です。
発注時は「レンズアレイのピッチ」「LEDチップサイズ」「輝度ムラ補正係数」など、スペックを寸法図面レベルで早期共有し、カスタム品か汎用品かを明確化すると後戻りコストを削減できます。
3. 画像処理SoCとIPライセンス
ライトフィールドのエンコード/デコードにはテラフロップ級の演算が必要です。
FPGAかASICか、クラウド演算かエッジ演算かの選定を誤ると、サイクルタイムが製造ラインの takt time を超えてしまいます。
サプライヤー側は「演算量削減アルゴリズム」「権利クリアランスが取れたIPコア」をセットで提案できると、購買部門の評価が上がります。
品質管理で生きるライトフィールド――三次元欠陥検出の実装例
自動車の塗装肌検査を例に取ると、従来はスリット光や線レーザーでライン欠陥を検出していました。
ライトフィールドカメラを用いれば、微細凹凸の角度依存反射を一度の撮像で取得でき、ライン速度を落とさずに深さ100µm以下のピンホールやサギングを検出可能です。
品質部門は「検出感度」を重視しがちですが、ライトフィールドでは「解析時間」「照明条件の再現性」も歩留まりを左右します。
照明をLEDバーからドーム拡散光に切り替え、反射・散乱を平均化することで、再学習なしに検出率を5%向上させた事例もあります。
昭和的“勘と経験”からの脱却――データ駆動型マネジメントへ
ライトフィールド技術は、記録できる情報量が従来比数十倍に増えるため、「勘と経験」への依存を減らす武器になります。
しかし、データレイクやMESとの連携が不十分なまま導入すると宝の持ち腐れになります。
工場長クラスは「取得→解析→意思決定→フィードバック」のサイクルをKPI化し、担当部署とツールを横串で管理することが成功の鍵です。
今後の市場動向と調達戦略
2025年までにライトフィールド関連の世界市場は年率25%で拡大すると予測され、特にARグラスと医療内視鏡が牽引します。
購買担当者は、
・カメラモジュールの長期供給契約(3年以上)
・ソフトウエアライセンスの使用許諾範囲(OEM可否)
・環境規制(RoHS、REACH)対応
を事前に精査し、価格交渉の場では「TCO(総保有コスト)」で比較するのが有効です。
まとめ――ライトフィールド×コンピューティーショナルディスプレイが拓く製造業の未来
ライトフィールドは単なる撮影/表示技術ではなく、製造業のQC、工程設計、デジタルツインを一気通貫で進化させるプラットフォームです。
バイヤーは「スペック表」だけでなく、「データフロー」と「組織プロセス」まで視野に入れた調達戦略を練る必要があります。
サプライヤーは品質・コスト・納期に加え、「計算」と「体験価値」をパッケージで提案することで選定競争を勝ち抜けます。
昭和のアナログ的ノウハウを尊重しつつも、ライトフィールドを活用したデータ駆動型マネジメントへ舵を切ることが、次の10年を生き残る鍵となるでしょう。
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