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新FTA技法の基礎とトラブル未然防止への応用

新FTA技法の基礎とトラブル未然防止への応用
はじめに-FTAとは何か?
先進的なモノづくりを進めていく上で、「FTA(Fault Tree Analysis)」は不可欠な手法の一つです。
FTAは、日本語で「故障の木解析」とも呼ばれ、起こってほしくない事象(トップ事象)が発生する原因を階層的に掘り下げて分析し、論理的に「なぜ?」を構造的に追究していきます。
1970年代から航空宇宙、原子力業界を中心に使われ始めましたが、現代の製造業、特に自動車や電子機器といった高品質・高信頼性が要求される現場ではますます利用価値が高まっています。
なぜ今、FTAが改めて重要なのか。
それはコスト競争と技術革新の狭間で、「トラブルが起こってから対策」では間に合わない時代に突入しているからです。
FTAの基本的な考え方
FTAは、指定した望ましくない事象(トップ事象)がどのようなメカニズムで発生しうるのかを遡って論理的に展開していきます。
「AND」「OR」ゲートのような論理演算子を用いて、ツリー構造で因果関係を明確にします。
トップ事象
↓
要因A、要因B、要因C…
(それぞれが更に分岐)
このように「木(ツリー)」を伸ばしながら、最終的には具体的な現場での課題や、設計上の懸念点まで掘り下げられる分析です。
昭和時代から根付いている「とにかく気合で現場を回す」「問題はその都度叩く」というスタイルも健在です。
しかし未然防止、根本解決型のアプローチを志すなら、FTAのような体系的分析こそ、今後ますます要求されるスキルセットです。
新FTA技法~従来との違いと進化のポイント~
従来のFTAは主に「紙と手作業」「経験則」に頼る面が強かったですが、新FTA技法には以下の特徴があります。
・デジタル化・自動化の促進
・定量評価へのアプローチ
・現場データ(IoTなど)との連動
・多工程/複雑サプライチェーン対応
たとえば、以前は設計図や仕様書をもとに担当者同士でFTAを作図していました。
現在ではFTA作成ツールや、AIと連携した自動解析、さらに現場のIoTセンサーから得られるリアルタイムデータを絡めた「動的FTA」も可能です。
その結果、従来以上に精緻なリスク予測・未然防止策立案が期待できるのです。
FTAによるトラブル未然防止~実践編~
実際の製造現場でFTAを最大限活用し、トラブルを未然に防ぐにはどんな実践法が有効なのでしょうか。
以下に、20年以上の現場経験から得たノウハウをもとに解説します。
1. トップ事象の正しい設定
FTAの効果を最大化するには「何を防ぎたいのか?」というトップ事象の選定が全ての肝です。
たとえば「焼き付きの未然防止」なのか、「納品不良0件」なのか、「深夜の設備停止回避」なのか。
現場の真のニーズ、指針に沿って精度高く定義しましょう。
言語化できない曖昧な不安には「5W1H」や「なぜなぜ分析」と組み合わせて、具体的な事象に落とし込むコツが大切です。
2. 異常時対応フローのFTA展開
たとえば生産ラインで「数値異常が出た場合、どのようなオペレーションフローに沿うべきか」をFTAで網羅します。
・異常検知→ 自動装置ストップ or 継続運転
・アラートの発報→ 担当者へ通知 or 一時的に無視される
・現場到着→調査手順
このような分岐を丁寧に可視化することで、思わぬ見落としやヒューマンエラーもあぶり出せます。
3. 部品調達・サプライチェーン視点でのFTA
バイヤー、調達担当、またはサプライヤーの立場でもFTAは活用可能です。
「納期遅延」「不良流出」「欠品」のようなサプライチェーン特有のトップ事象を設定し、どの工程で、どんなロスやトラブルが起こりえるかを構造的に検討します。
たとえば「納期遅延」のFTAツリー例:
・図面遅延 -> 設計ミス or 担当不足
・部品調達遅延 -> 仕入先選定ミス or 突発的災害
・物流遅延 -> 通関トラブル or 輸送手配遅れ
バイヤーやサプライヤー双方の情報をツリー上にマッピングすることで、どちらの視点でも対策ポイントが明確化します。
コミュニケーションのミスや勘違いも「見える化」でき、お互いの納得感が生まれます。
4. IoT・DXと連動した新時代のFTA
現代の製造現場では、IoTがあらゆる設備や工程をつなぐ時代になってきました。
IoTセンサーから取得したデータをリアルタイムにFTAにフィードバックすることで、「動的な危険予兆分析」が可能です。
たとえば温度異常、振動データ、サイクルタイムの急変といった指標が高リスク要因として自動的に検知され、FTツリーにシグナル表示されます。
デジタル時代のFTAでは
・早期警戒レベルの設定
・警告アラートの自動発信
・履歴データと突発事象との関連分析
など、単なる予測から実際の「現場オペレーション指示」まで未然防止プロセスそのものが変革されています。
FTAが現場にもたらすメリット
製造現場でFTAを活用する最大のメリットは、「知らず知らずのうちの落とし穴」を早期に可視化し、未然に防ぐ力を持つことです。
・一人の経験や勘に頼らない「標準化された知」として蓄積できる
・これまで想像もしていなかったリスクが浮き彫りになる
・部門横断の対策会議が合理的・短時間で済む
・若手・新人メンバーも「なぜ?」が分かりやすく教育効果が高い
また、品質保証・監査・サプライヤー評価の場でも、FTA分析結果を「見える化」して示すことで、取引先や社外監査人にも高い説明力と安心感を提供できます。
昭和型アナログ思考とFTA~両方の強みを活かす
今なお強く根付いている昭和的なアナログ現場、すなわち「ベテランの勘」「現場の空気」「リーダーの目配り」。
これらが磨き上げてきた「異常感知力」をデジタルFTAと融合させることが、これからの進化のカギです。
例えば
・ベテランが感じる「これは変だ」という予兆をFTAに組み入れる
・違和感メモやトラブル伝承ノウハウをツリー構造に落とし込む
・現場が使いやすいFTAツール/テンプレートを独自開発する
こうした試みが、単なる理論ツールを「現場仕様」「現場主導」にブラッシュアップしていくポイントです。
これからのバイヤー・サプライヤー・ものづくり人材に求められること
新FTA技法と現場スピリットの両輪で、「自分の職場がどんなリスクを抱えているのか?」を自分の頭で考え抜く力が、今後価値を高めていきます。
そして、対策を「横展開」できる人材は、組織内外で圧倒的に活躍の場を広げられるでしょう。
バイヤーを志すなら、サプライチェーン全体でやるべき予兆管理をFTAで提案できるように。
サプライヤーなら、納入品質・納期リスクの事前解析データをFTAで提示し、顧客信頼を勝ち取る動きが不可欠です。
そして現場のものづくり人材は、FTAを通じて「なぜこうなる?」を掘り下げ続け、自分の専門性を磨き続けてください。
まとめ~新FTA活用で未来の製造業を切り拓く
FTAは、「なぜ」を解き明かし、トラブルを未然に防ぐ知恵の結晶です。
デジタル化、複雑化が進む現代のものづくり現場でも、確かな現場知、アナログ力と融合した「新FTA技法」がこれからの製造業の進化を支えていくでしょう。
新FTA技法の実践で、現場力と技術のベストミックスを目指し、日本のものづくりを次代へと引き継いでいきましょう。
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