投稿日:2025年11月3日

スニーカーのかかと部分が型崩れしないための補強カウンター設計

はじめに:スニーカーのかかと型崩れ問題とその重要性

スニーカーは今や日常生活に欠かせない身近なアイテムとなっています。

しかし、スニーカーの「かかと部分の型崩れ」に悩まされた経験がある方は少なくありません。

多くの製造現場で、「なぜかかとが潰れるのか」「どうすれば長持ちさせられるのか」について、議論され続けているのが実情です。

本稿では、かかと部分の型崩れを防ぐための補強カウンター設計について、調達・生産・品質管理経験を活かした現場目線で解説します。

世代交代が進まないアナログな工場でも実践可能なアイデアも交え、最新の業界動向にも目配りしながら、“実践で使える設計のコツ”を掘り下げていきます。

かかと部分が型崩れする本当の理由——現場で起きていること

歩行時の負荷集中と素材特性

かかと部分はスニーカーにおいて最も力が集まる場所です。

歩き始めの踏み込みや、着脱時の指で押す動作、無意識のうちに潰して履くクセなどの“アクシデント”が日常的に発生します。

表面素材(アッパー素材)は柔らかければ履き心地が良いのですが、その一方で簡単に型崩れしやすくなります。

特に、合皮やメッシュといった柔軟性が高い素材はこのリスクが顕著です。

現場が見逃しがちな生産管理・保管の盲点

アナログな現場では、「生産後の保管体制」や「流通時の詰め込み癖」も型崩れの大きな原因です。

輸送用段ボールでぎゅうぎゅう詰めにされたり、長期在庫時の重なり跡で変形が起きたりと、熟練工でさえ見逃すリスクが潜んでいます。

補強カウンター設計の基本原則

内部構造の要:カウンター(ヒールカウンター)とは何か

「カウンター」とは、かかと部分の内側(アッパーとライニングの間)に仕込む補強材のことです。

目には見えませんが、型崩れ防止の“最後の砦”とも言える部位です。

カウンターの役割は主に3つです。

– かかとの形状の維持
– 履き心地の向上・足首の安定化
– 長期的な耐久性の確保

カウンター素材の選び方——知っておきたい特徴

カウンターに使われる代表的な素材は下記の通りです。

– 熱可塑性樹脂(TPR、TPU、ポリカーボネートなど)
– 板紙(厚手のケミカルボードなど)
– 天然皮革(高級靴で使用)
– 成形パーツ(3D成形プラスチックなど)

アナログ現場では依然としてコスト重視で板紙や廉価な合成樹脂が選ばれがちですが、業界全体としては徐々に成形パーツ(3D設計や射出成型)が拡大傾向です。

製品グレードや用途(スポーツ、カジュアル、ワークシューズ等)により、最適素材は異なります。

実践現場でのカウンター設計ノウハウ

形状設計の基本:包みこむのか、押さえこむのか

かかとを「包み込む」設計は足へのフィット感に優れ、一方で「しっかり押さえこむ」設計は型崩れ防止力が高いです。

カウンター全体をくるりと広範囲に回す形は、従来工場で採用されることが多いですが、現場の声は「硬すぎて慣れるまで足が痛い」と言うものも。

最近は“快適と補強の中間”を狙って上下幅を広げず、かかと下部を重点補強する設計も選ばれています。

厚みと硬度の調整ポイント

型崩れに強い分厚いカウンターは耐久力は増しますが、着用時の突っ張り感や重さにつながります。

旧来型は厚みで勝負しがちでしたが、これに対し「局部的な強度向上」と「ソフトエッジ加工」を組み合わせるアプローチが支持されはじめています。

また、異なる硬度を持つ多層カウンターにより、外側は硬め、足当たりは柔らかいという設計も増加しています。

アナログ現場でもできる簡単な工夫

現場改善の例として、「成形カウンター材」にアイロンや加熱機を使って足型に合わせて少しずつ成形する手法などが根強く存在します。

「加温→押し当て」だけでも、型崩れ発生率がグッと減るため、小規模工場にはおすすめです。

また、シューラスト(木型)の改良によるカウンターエリアの最適化もアナログ現場の知恵として伝承されています。

新時代の業界動向:デジタル活用とサステナブル素材

最新トレンド:3D設計×デジタルシミュレーション

CADによる3D設計やデジタルシミュレーションを活用し、歩行時の負荷を数値的に分析して最適化する企業が増えています。

応力分布を可視化できることで、カウンターの厚みや硬度分布をピンポイントに調整できます。

海外メーカーでも「足型データベース」を活用して、個人ごとに合ったカウンター設計を行うカスタムモデル販売が拡大しつつあります。

サステナビリティへの配慮

従来型の樹脂・板紙に替え、リサイクル素材やバイオ由来樹脂を活用する例が徐々に増加しています。

「補強=プラスチック増量」から、「必要十分な補強のみ」でエコロジーと基本性能の両取りを目指す動きが出てきています。

これにより生産過程でのCO2排出削減、廃材削減といったトレンドに後押しされています。

調達・購買担当に必要な目利き力

サプライヤーとの信頼構築と管理ポイント

原材料コスト上昇・社会的要請から、「値段だけ見て仕入れる」時代は終わりつつあります。

重要なのは「狙い通りの硬度・厚み・形状で安定供給される」仕組みです。

購買部門は、少なくとも以下3点をサプライヤーと合意しておくべきです。

– 成形時の許容差(厚み・反りなど)の基準設定
– ロットごとの品質証明体制
– 長期供給体制と代替素材情報

形状不良・硬度バラつきによる「歩き心地のムラ」は、返品リスクや顧客クレームにつながります。

現場・品証・購買が「歩き心地基準」について共通言語で会話できることが重要です。

量産現場の“あるある”課題とその解決策

「初期サンプルは秀逸、量産が始まったらバラつきだらけ」という現象は多発します。

これは設備・技術力の差や材料ロットごとの違い、現場作業のアナログ度合いまで幅広く絡みます。

例えば、「カウンター材の軟化温度が一律でない」「金型や成形方法が現場判断で違う」などが主因です。

解決策としては

– 物性テストの実施(歩行試験、破壊強度、繰返し荷重テストなど)
– 工程監査の随時実施
– 定期的な現場教育(成形加熱温度、冷却時間の徹底)

これらを安易に「経験値」や「勘」任せにせず、標準化していく仕組みが求められます。

サプライヤー側から見たバイヤー目線の理解——現場との協業のヒント

「価格」以外の説得ポイントづくり

購買側は「ちゃんとしたものなら高くても売れる」よりも「安く安定的に仕入れられるか」を重視しがちです。

しかし「使ってみて何年も型崩れしないカウンター」と「数ヶ月で潰れる粗悪品」では、最終製品の信頼が決定的に違います。

サプライヤーは、自社の補強材が実際の現場でどの程度の歩行回数・負荷条件で持続力を発揮できるのか、具体的な数値や試験データをもってアピールすることが効果的です。

サンプル提出時の押さえどころ

– ラスト(靴型)に実装した状態で提出する
– 加熱成形→冷却→繰返し荷重の後どう変形するかを見せる
– 実際の靴製造工程での生産性(柔軟性、作業性)もセットで提示

これにより、バイヤー側は「紙上のスペックでは分からない実質耐久度」を評価しやすくなります。

「品質・コスト・安定供給」三位一体で提案できる姿勢が、信頼獲得の一歩です。

まとめ:かかと補強カウンター設計は製造業力の象徴

スニーカーのかかと型崩れ防止は、単なる補強素材選び以上に、設計力と現場力の総合戦です。

デジタル設計やサステナブル対応といった最新トレンドも押さえつつ、アナログ現場の知恵や、経験値に裏打ちされた“ちょっとした工夫”も尚重要です。

調達購買担当、設計、生産、品質管理、そしてサプライヤー、それぞれの立場から現場で何が起きているかを知り、改善し続ける姿勢こそ、これからのものづくり現場の進化に直結します。

昭和から続く現場文化を大切にしつつ、新時代のアイデアで次世代のスニーカーづくりを共に進化させていきましょう。

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