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プレス成形トラブル対策と有限要素予測で高精度化を実現

目次
はじめに:製造現場で根強いプレス成形の課題
プレス成形は自動車、家電、電子部品、建材など幅広い業界で活用される根幹工程ですが、さまざまなトラブルと隣り合わせです。
現場では「ここ数十年ほぼ変わらず昭和方式でやっている」「経験と勘がものをいう領域」といった声が依然多いものの、グローバル競争に晒される現在、安定生産・高精度化は待ったなしの課題です。
また以下のような現場の悩みが少なくありません。
・加工ムラがなぜ起きるのかわからない
・金型トラブルが頻発し歩留まりが上がらない
・サプライヤーの品質対応がバラバラで再現性が低い
・IT活用やCAEはコストに見合うのか不安
こうした業界の“昭和的”課題に対し、近年は「有限要素法(FEA)」をはじめとしたシミュレーション技術でプレス成形を見える化し、トラブル予測・高精度化を実現するアプローチが重要視されています。本記事では、長年現場で課題と向き合ってきた立場から、典型的なトラブルとその対策、そして最新技術を融合したトラブル未然防止と精度向上の道筋について詳述していきます。
プレス成形の典型的なトラブルと現場実態
経験や勘に依存する現場――なぜトラブルが減らないのか
多くの工場でプレス成形トラブルの発生件数は思ったより減っていません。
未だに「調整できるベテランがいれば大丈夫」という属人的な運用や、記録紙・白板での不具合メモ、問題発生時の暗黙知的対応が中心となっています。
結果、次のような問題が生まれています。
・同じ現象が再発したときに原因究明に時間がかかる
・他拠点やサプライヤーへのノウハウ伝承がしにくい
・設計部門と現場間、サプライヤーとバイヤー間の認識ギャップ
・金型メーカーとの情報共有不足による“手戻り”コスト
よくある成形トラブルの実際例
現場で頻発するトラブルには以下のようなものがあります。
・割れ、皺、しわ、スプリングバック(反り戻し)
・加工面の傷、摩耗、カジリ
・寸法公差外れでのNG発生、歩留まり低下
・金型寿命短縮、加工油の異常消費
・順送型・トランスファー型でのワーク詰まり
これらトラブルに対する対策は意外と「その場しのぎ」が多く、根原因に迫り切れていません。
現場力を高める実践的なトラブル対策
データ収集と現地現物主義の融合
まず基本は「現場の五感+データ」の徹底です。
ベテランの感覚、経験値は極めて重要ですが、それだけに頼らずトラブル発生時の記録ルールを強化します。
たとえば
・加圧力、潤滑油量、成形速度のログ取り
・ワーク材質ロット、板厚バラつき情報の残し方統一
・金型メンテナンス履歴まで含めた情報総合化
こういった記録を習慣化することで、属人性を少しずつ排し再発防止や他ライン展開がしやすくなります。
異常検知・未然防止のための「しきい値」運用
次の段階として、「異常の早期検知」を意識したしきい値管理の導入が効果的です。
・圧力変動の標準偏差
・送りロール力の上限・下限アラーム
・スリップ検知、刃先摩耗回数しきい値
・金型加熱温度の分布管理
こうしたパラメータを管理することで、異常前兆を数値で捉えやすくなり、ライン停止の頻度や影響を最小限に抑えられます。
サプライヤー/バイヤーで共有すべき視点
実は現場とバイヤー、サプライヤー間で「どのトラブル情報が経営的に重要か」の認識ズレが生じやすいです。
バイヤー視点では「安定品質で納めてほしい」という要求が強く、サプライヤーは「加工現場の細かい事情までは伝えにくい」立場です。
この溝を埋めるため、トラブルの内容・発生頻度・対策状況を「工程FMEA」「QC工程表」などで可視化し情報共有とすり合わせを徹底しましょう。
有限要素解析(FEA)による成形トラブル予測と高精度化
有限要素解析(FEA)とは何か?
有限要素解析(FEA)は、プレス成形プロセスの現象(板金の伸びやしわ・割れ・反りなど)を物理法則に基づいて数値化、コンピュータ上で再現できる技術です。
これにより、「どこで、どう割れるか」「板厚がどれくらい減肉・増肉するか」「最終成形後の反り量」などを事前にシミュレーションできます。
金型設計・条件出しの高度化
従来はトライ&エラーで現物成形→都度金型調整、という流れが主でしたが、FEAを活用すれば
・金型形状をバーチャル上で複数検討し最適化
・しわ・割れ・スプリングバック予測で不良リスクを設計段階で低減
・生産初期段階のトライコスト削減とリードタイム短縮
といったメリットがあります。
特に自動車部品、薄板複雑形状品、金型費用の高い案件ほどこの手法の効果が顕著です。
「現場×データ」の協調が成功のカギ
重要なのは、データ上の解析結果と「現地現物」の実際トラブルをすり合わせることです。
例えば、
・CAE上では良好だったが実際には板材ロット依存でトラブル
・解析上は問題なかったのに潤滑油や温度条件の微差で不具合発生
これらを撲滅するために、現場からのフィードバックループを作り「現物-データ一致度」を高めていく文化・運用が大切です。
「昭和的アナログ現場」とFEA最新技術の融合
デジタルとアナログの融合、いわば「昭和レジェンド技能×AI/シミュレーション」の融合こそ、日本製造業が強烈な競争力を維持するカギです。
現場では
・ベテラン技能者の観察眼や音・振動感覚
・日報やホワイトボードの履歴蓄積
これを、“見える化”しつつシミュレーションに反映すれば唯一無二のノウハウが再現性をもって全社展開できます。
導入事例から学ぶ、プレス成形の高精度化
自動車サプライヤーA社:歩留まり向上と海外工場展開
A社は従来、国内拠点ごとにバラついたプレス成形品質で苦しんでいました。
徹底した現場記録データ化と、FEAでのしわ・割れ・反りの解析を統合することで
・不良率3.5%→1.1%まで減少
・品質安定ノウハウを海外工場展開しグローバルな共通品質基盤を獲得
といった成功を収めています。
家電部品メーカーB社:新規金型の立ち上げ短縮
B社では毎回の型トライ回数が平均7回を超えていました。
FEAによる金型条件出しで、初回トライ時から良品化率がアップ。
・型トライ回数7回→2回へ大幅短縮
・対応リードタイムを半分以下に短縮し顧客満足度を向上
製造原価低減とサプライチェーン全体の応答力向上に寄与しています。
今後求められる「現場力×デジタル力」の強化
現場に根付く“昭和思考”を打破するには
デジタル技術は敷居が高いと思われがちですが「現場の小さな問題の見える化」「原因解明の幅を広げる道具」として現場起点で少しずつ導入することが有効です。
また、デジタルツールは最初から完璧を求めず「既存工程の1つでも困りごとを減らす」経験からはじめ、小さな成功体験を蓄積することが現場風土醸成につながります。
バイヤー・サプライヤーに求められる発想転換
バイヤーは単なる購買価格や納期フォローだけでなく「どんな品質リスクが潜在しているのか」「どう設計段階から未然確保できるか」を知る姿勢が必要です。
サプライヤーも「現場で起きている生々しい困りごと」をデータや図面・動画を交えつつ積極的に提案し、真のパートナーシップを築くことで、結果的に“選ばれる存在”へと変わっていけます。
まとめ:競争力強化に不可欠なプレス成形の高度化
プレス成形は一見単純な工程に見えますが、実際は大量の「暗黙知」や「属人技能」に支えられています。
時代が変わる中で高精度化・安定化の取り組みとしては、まず現場記録・異常管理をシステム的に行い、小さな困りごとを可視化。さらに有限要素解析(FEA)など先端技術を現場とすり合わせ、現物とバーチャルを重ねていく姿勢が重要です。
昭和流アナログと最新デジタルの融合がなければ、激化するグローバル競争で生き残ることはできません。
現場一人ひとりが「過去のやり方に捕らわれない」チャレンジ精神を持ち、バイヤーもサプライヤーも一体となって“価値あるものづくり”に挑戦し続けましょう。
今こそ日本発の現場力をデジタルとともに世界にアピールできる千載一遇のタイミングです。未来のものづくりを担う現場人材の皆さまに、この記事が次なる一歩のヒントとなれば幸いです。
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