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異種材接着設計理論と環境対応構造用接着剤応用ガイド

目次
はじめに
現代の製造業において、異種材の接着技術はものづくりの常識を覆す大きな革新ポイントとなっています。かつてはリベットやボルトといった機械的接合が主流でしたが、軽量化・複雑化の流れ、そして設計の自由度向上により、構造用接着剤の需要が急速に伸びています。特にカーボンニュートラルやSDGsが社会の重要テーマとなる中、異種材を効率よく、かつ環境負荷低減の観点から強固に接合する“設計理論”と、それを支える“環境対応型接着剤技術”がトップランナーの現場力につながるのです。
本記事では、アナログ思考から脱却しデジタル時代のものづくり現場で即実践できる異種材接着の設計ノウハウと、最新の環境対応接着剤を選定・応用するガイドラインをご紹介します。また、購買・調達担当やサプライヤーが知っておくべきバイヤー目線も掘り下げ、お互いの価値を高め合うヒントも盛り込みます。
異種材接着の基本設計理論と成功のポイント
なぜいま異種材接着が注目されるのか
自動車や家電、建築分野だけでなく医療機器や精密機械でも軽量・高剛性化は時代の要請です。鉄-アルミ、樹脂-金属、CFRP-アルミなど、異種材料の最適組み合わせはコスト削減、機能向上など多くのメリットをもたらします。
機械的結合では熱膨張差や腐食、強度ムラ、重量増といったデメリットが顕著ですが、構造用接着剤なら「点から面」へ応力を分散。複雑形状・薄肉部品にも自由度高く適用できるため、設計者や現場から高評価を得ています。
設計初期段階からの“接合”意識が重要
成功する異種材接着の大前提は「設計初期段階で接着を前提とする」ことです。従来型の“後付けで接着”発想は、残念ながら多くのトラブルや失敗に直結しています。たとえば以下3つの視点が特に重要です。
・接合面の形状・面積の確保
・接着剤が機能するクリアランスや厚み設定
・接合部で発生する応力分布シミュレーション
昭和型ものづくりの現場では、“なんとなく従来通り”で進めがちです。しかし設計者、調達担当、製造オペレータが一体となってこれらポイントを詰めることで、予期せぬ剥がれ・強度不足を防げます。
力のかかり方を読む、柔軟な「応力分散設計」
実際の製造現場で筆者が繰り返し目にするのは、「線接着・点接着」による局所応力集中が起点となるクレームや不具合です。構造用接着剤は応力を均一に分散させる“面接着”が基本です。
具体的には、
・テーパー加工を施して剥離強度を高める
・張力・せん断力・剥離力の方向を考慮し最適な接合角度を設計する
・厚み(ガップ)コントロール治具やスペーサーによる安定化
などのアプローチを実践しましょう。設計・製造両輪で微細な配慮を積み重ねることで、想定以上の製品信頼性を確保できます。
表面処理で強靭なインターフェースをつくる
異種材接着の泣きどころは「表面処理の最適化」です。アルミやステンレス、CFRP、樹脂など、それぞれ最適な前処理(脱脂・プライマー・サンドブラスト等)が違います。
製品量産前の段階で表面分析(SEM・EDS等)や実接続テストを入念に行い、最適な組み合わせを数値で“見える化”しておくと現場トラブルや品質保証で大きな力を発揮します。
環境対応構造用接着剤の選定・応用ガイド
今求められる「グリーン」な接着剤とは
脱炭素社会実現が世界中で叫ばれる中、VOC(揮発性有機化合物)削減、リサイクル対応、廃棄時容易剥離性などが注目されています。一方で、機械的・化学的性能も妥協できない現実とのバランスが課題です。
現在、業界大手メーカーでは以下のような特徴を持つ新世代環境対応接着剤が増加しています。
・溶剤フリー(無溶剤)型エポキシ・アクリル系
・低VOC水性接着剤
・マスバランス認証バイオ素材配合製品
・リサイクル素材対応型(デタッチャブル)接着剤
用途や製品ライフサイクルに応じて、技術情報などを積極的にサプライヤーから入手し、「なぜその接着剤を選ぶのか」を論理立てて社内外に説明できるスキルが今後ますます重視されます。
調達購買・バイヤー視点でのポイント
バイヤーが接着剤を選ぶ際の評価基準は、
1. 接合強度および長期耐久性(熱・水・外力への信頼性)
2. 環境負荷適合度(REACH法、RoHS、VOC規制などへの対応)
3. 塗布作業性・生産効率への影響(工程短縮や自動化への親和性)
4. トレーサビリティ・情報開示性(SDS、適合証明書)
5. 価格と納期安定性
が必須条件です。
価格だけでなく、持続性・生産現場の現実・規制動向までを勘案した上で、サプライヤーとの情報交換や共同開発提案も効果的です。現場の声と「調達の目」を連携させましょう。
サプライヤー側から見た“バイヤーの期待”を読む
サプライヤーとしては、単純なカタログスペック提供に留まらず、実際の接合用途や現場課題、将来的なリサイクルシーンにおける剥離提案など、「バイヤーが本当に知りたい未来像」を具体的に提示できることが差別化ポイントです。
また、新素材やモビリティ用途では各部品との相互作用(ギャルバニック腐食、熱影響、複合応力等)まで想定したトータルソリューション提案が今後の主流となるでしょう。
事例に学ぶ 最新接着技術の現場適用
CASE1:自動車CFRP-アルミ一体化への挑戦
国内大手自動車メーカーで実際に採用されたのは、溶剤系から無溶剤型エポキシへ置き換えた異種材接着ソリューションでした。現場からは「作業環境の改善」「工程短縮」「剥離や未硬化の不良減少」など多くの副産物が生まれています。
設計段階でCFPRに専用プライマーを適用+ガップ管理によって長期信頼性を担保し、一方で生産現場では混練・塗布ライン自動化も進行。調達と生産、サプライヤーの三位一体連携が実現した好例です。
CASE2:家電樹脂-アルミ筐体の環境対応接着化
これまで従来型のウレタン接着剤を用いていたところ、RoHS・VOC対応やリサイクル適合要件から「水性アクリル系」への切り替えが進められました。
結果として
・現場の匂いや作業服への付着低減
・同等以上の接着性能維持
・解体時の容易な剥離対応が可能
となり、顧客・消費者から高い評価を受けました。また、バイヤーとサプライヤーで解体現場の実証テストを共同で行うことで、リスク低減・現場適応力が大幅に向上しています。
今後の展望と製造業バイヤー・サプライヤーに求められる姿勢
高度化・複合化が続く異種材接合では、設計・材料・調達・生産といった分業思考を乗り越える「ラテラルシンキング」(水平思考)がカギとなります。古い慣習や“なんとなく”のやり方に疑問を持ち、変化を恐れずデータで会話する姿勢がものづくり企業の存続力へ直結します。
また、バイヤー・調達担当は「価格交渉屋」から「価値共創パートナー」へ、サプライヤーも単なる材料提供から「現場課題を一緒に解決するチーム」へ進化が求められています。異種材・環境技術を契機とし、持続可能な製造業の新たな地平線をともに切り開いていきましょう。
まとめ
異種材接着設計理論と環境対応構造用接着剤の応用は、単なる技術トレンドに留まりません。設計・調達・生産・サプライヤーという多面的視点と、ラテラルシンキングによる新発想、そして現場起点での実践の積み重ねこそが成功を導きます。これからも製造業の進化を担う皆様に、即実践できる知恵とヒントを発信し続けます。
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