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投稿日:2025年7月4日

EMC電界磁界問題を避ける高周波技術基礎と機器設計時の要点

はじめに:EMC電界磁界問題と製造業の現場

製造業に携わる皆さん、そしてバイヤーを志す方々やサプライヤーとしてバイヤーの視点を知りたい皆さんへ。
EMC(エミッション コンプライアンス)、つまり電磁適合性は、現代のものづくりで無視できないテーマとなっています。

成熟した製造業界にあっても、高周波技術の基礎やEMC対策の重要性が現場できちんと理解されていないケースは少なくありません。
とりわけ昭和時代からのアナログ文化が根強い工場現場では、場当たり的なノウハウに頼ったままの設計や購買がまかり通っていることもしばしばです。

本記事では、20年以上の現場経験と管理職としての視点から「電界・磁界問題を避けるための高周波技術基礎」と「EMCを意識した機器設計時の要点」について、実践的かつ現場目線で解説していきます。

EMCと電界・磁界:なぜ対策が求められるのか

現場で問題になるEMC

EMC(Electromagnetic Compatibility)は「電磁両立性」と訳されます。
これは電子機器やシステムが、他の機器に悪影響を与えることなく、また逆に外部からの電磁妨害に対しても誤動作しないようにする総合的な適合性のことです。

昨今、工場ではIoTデバイスや高周波インバーター、ロボット、無線通信機器など、さまざまな電子機器が導入されています。
多くの機器が複雑に絡み合う生産現場では、とくに高周波によるノイズ(伝導性・放射性いずれも)が設備全体の品質や安定稼働を脅かすリスクとなっているのです。

電界と磁界、それぞれに迫るリスク

EMC対策が必要な理由は、高周波回路から漏洩する「電界」と「磁界」による影響です。

– 電界ノイズは配線の間や筐体の隙間をぬって、他の回路へ飛び込みます。
– 磁界ノイズは主に高電流が流れる回路の近傍で生じ、ケーブルやプリント基板(PCB)を通して拡散します。

これらは、場合によっては近隣機器の誤動作や、工場全体のライン停止につながる重大事故を招きかねません。

昭和的アプローチからの転換:アナログ設計はなぜ限界か

昭和世代の現場では、「とりあえず金属シールド」「配線はとにかく離す」「ノイズフィルターを大きめにつける」など、経験則重視のアナログ対策が根強く残っています。
いまだに「ノイズは現場でなんとかするもの」という空気が蔓延し、「設計段階からEMCを考える」という発想が薄い現場も少なくありません。

しかし、IoT化・スマートファクトリー化で工場ネットワークが多様化した現代では、局所的な「現場力」だけではカバーしきれません。
しくみや原理を押さえていない場当たり的な処置では、むしろ根本原因を悪化させるケースが増えているのが現状です。

なぜ設計段階でのEMC対策が重要なのか

設計段階では
– 高周波ノイズの発生源(IC、インバーター、スイッチング電源など)を特定し、
– 伝搬経路(プリント基板、筐体、配線など)を意識し、
– 受信側(アナログ回路やマイコン、通信回路など)に悪影響が生じない構造設計

を意識的に織り込むことが、コストを抑えつつ安全で高信頼な製造現場を構築する鍵となります。

高周波技術の基礎:EMC的観点での要素分解

高周波ノイズの振る舞いを知る:伝導と放射

高周波ノイズは大きく「伝導ノイズ」と「放射ノイズ」に分かれます。
– 伝導ノイズ:電源線や信号線などを伝わって広がるノイズ
– 放射ノイズ:空間中に電波として放射されるノイズ

高周波領域では、導体(線や基板パターン)は「アンテナ」として働いてしまい、予期せぬ放射ノイズ源となることがままあります。

インピーダンスマッチングとノイズ対策

アナログ部や高周波回路の設計では伝送ラインのインピーダンス整合が特に重要です。
インピーダンスが合っていなければ、不要な反射や共振が起こり、EMCの観点で想定外のノイズが発生するリスクも増大します。

– コネクタやケーブルの選定
– プリント基板のレイアウト
– グランド層の設計

など、「伝搬経路」のインピーダンス特性を理解しているか否かで、現場のトラブル発生率が大きく変わります。

近接カップリングの理解

「近接カップリング」とは、物理的に近い導体同士が、電界や磁界でエネルギーをやりとりする現象です。
基板上で高周波信号線がアナログ信号線に隣接していると、ノイズが混入しやすくなります。
製造現場のトラブルの多くが、設計段階で近接カップリングの影響を軽視しているのが原因です。

EMC対策の実践的ポイント:設計と部材調達の留意点

部品選定:EMC視点でのバイヤーの役割

現場目線では、以下のような観点での部品選定が求められます。

– メーカーが公開するEMCデータやCE/FCC適合の有無の確認
– EMIフィルター(電源ライン用/信号ライン用など)の実装箇所・性能確認
– コネクタのシールド性能と、結線のグランド処理
– 基板材料の特性と金属シールドケース

バイヤーは単なる価格や納期だけでなく、EMCリスクを低減できる性能に目を向けることが、今後の“攻めの調達”につながります。

レイアウト設計:ノイズ伝搬の最低限の知識

– 高周波回路とアナログ回路は基板上でできる限り離して配置
– 高速クロック、電源インバーター周辺は十分なシールドやグランド処理
– 電源と信号ラインの交差部分では、必ず直角になるように敷設
– 不要輻射防止のため「ループ面積」を最小化(配線を極力短く、密接化)

これらは「ものづくりの現場で自然体でできる」よう、設計及び購買の両部門で共通意識化することがカギです。

現場確認・立ち上げ時のポイント

量産前の現場立ち上げ時には、
– 高周波スペクトラムアナライザでノイズの実波形確認
– 有資格者によるグランド・シールドの施工確認
– 予測される伝搬経路を意識した現場ラウンド
を実施し、不具合の“兆候”を感知できる体制づくりが重要です。

サプライヤー、バイヤー、現場設計者の協働が不可欠に

昭和型の「現場任せ・何とかなるだろう」という文化から脱却し、サプライヤー、バイヤー、設計者が「知識を共有すること」こそが、これからのスタンダードです。

EMCの実務トラブル例をサプライヤーから共有してもらったり、設計情報をバイヤーと早期にオープン議論するなど、分業制に陥らない体制こそ品質向上の第一歩です。
また、調達交渉では「EMC部材の追加購入コストが、最終的に工場の全体最適に寄与する」ことを数字ベースで合意できる仕組みづくりも肝要になっています。

今こそ脱・昭和、DX時代のEMC強化を

IoTや5G対応のスマートファクトリー化、一方で多品種少量化・サプライチェーンの複雑化。
この二つの流れに対応するためには、現場に根ざした高周波技術知識とEMC対策は欠かせません。

知識重視でしっかり設計段階から対策された工場こそが、これからの製造業バリューチェーンで高い競争優位を誇ります。
「現場で何とか」から「設計・調達段階で準備万端」。
あなたの現場でも、今日からEMC対策の見直し、始めてみませんか。

まとめ:現場が主役のEMC対策を実現しよう

– EMC電界・磁界問題への対応は、21世紀のものづくりに不可欠
– 古い慣習・場当たりノウハウだけでは時代の変化に耐えきれない
– 設計・調達・現場と、組織横断したEMC強化が新しい“普通”になる
– 高周波技術への理解と現場感覚の統合が、日本の製造業の進化を後押しする

製造現場の皆さん、バイヤーを目指す方、サプライヤーの皆さん。
ともに知識を深め、高周波EMC対策の新しい地平線を切り開いていきましょう。

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