投稿日:2025年8月21日

供給元が単一拠点に依存しており災害時リスクが高い課題

供給元が単一拠点に依存しており災害時リスクが高い課題

はじめに

製造業の現場では、安定した部品・材料の調達が生命線となります。
特に近年、世界規模で自然災害や地政学的リスクが増加する中、ひとつの拠点やサプライヤーに頼り切る状態は、企業存続にかかわる致命的なリスクとなりつつあります。
昭和から続く、長期取引や属人的な調達調整が今も色濃く残る現場では、つい「おたくに任せておけば安心」と気を抜きがちです。
しかし、想定外のリスク発生時、「ウチのラインが動かない!」と叫ぶ事態に直面するのが現実です。
本記事では、単一拠点依存の課題と本質的なリスク、その対策の本質について、現場目線で掘り下げます。

単一拠点依存が生じる理由

単一拠点依存が根強い背景には、いくつかの業界特有の文化や慣習があります。

ひとつは、長年の信頼関係に基づく「御用聞き」体制です。
昭和の高度経済成長期から続く「大口顧客最優先」「口約束重視」の調達姿勢が、今なお強く現場に残っています。
加えて、ロットごとのコストダウン要請や、短納期対応のしやすさなど、「一本化」することで見える直接的なメリットも無視できません。

また、部品や材料のスペックが高度化・専用化するにつれ、「ここでしか作れない」というサプライヤーも増えました。
図面のやりとりや生産ノウハウの蓄積も、サプライヤーが一社に偏りやすい土壌を作ってしまいます。

人手不足・高齢化も、要員確保や管理の煩雑化回避の観点から「できるだけシンプルにしたい」と考える現場責任者の思案材料となっています。

現場が実感した災害時リスクのリアリティ

2011年の東日本大震災や、近年頻発する豪雨災害、さらには新型コロナウイルスによる都市封鎖……。
私自身も現場で数々の調達トラブルに直面してきました。
例えば、部品の80%を熱海市のサプライヤー一ヵ所から仕入れていた際、突如として大規模な土砂災害に見舞われました。

道路は封鎖。工場は一時稼働停止。
運良く人的な被害は無かったものの、在庫は三日で尽き、顧客納期は絶望的になりました。

その後、現場はどう動いたか。
別サプライヤーの開拓を急ぎましたが、図面や生産技術資料の流用ができず、新規立ち上げまで数ヶ月。
その間、本来なら得られた数千万円の売上が消え、既存顧客からの信頼も大きく損なわれました。

このような経験は、国内外の多くの現場で繰り返されてきています。
特に半導体や精密部品など、供給網が複雑・グローバル化している分野ではその影響は計り知れません。

「リスクが高い」と分かっていても変えられない現場の事情

では、「多拠点化」や「複数サプライヤー化」が良いと分かっていながら、なぜ現場は変われないのでしょうか。
この背景には、様々なジレンマや現場固有の壁があります。

まず、新規サプライヤーの開拓には時間とコストが掛かります。
打合せ、図面・仕様書の展開、見積もり交渉、試作・品質確認。
この一連のプロセスを並行して何社とも行うのは、現場にとって大きな負担です。

さらに、調達先ごとに工程や品質レベルが揃わず、調整や指示が増大。
特に厳しい品質要求や独自加工が求められる場合、現場担当者の管理負担は倍増します。

また、サプライヤー側も「うちは二次サプライヤー止まりが前提で、客先との直取引は初めて」「図面やノウハウを第三者に出すのは不安」といった警戒感が根強く、大手であっても外部委託開拓に消極的なことも多いです。

結果、「分かっているけど今はやらない」状況が慢性化しているのが現状です。

災害時リスクにどう備えるか?現場視点からの抜本解決策

ここからは、単一拠点依存のリスクを本質的に低減する具体策を現場視点で考えます。

まず、「可視化」がカギです。
複数拠点調達の重要性は指摘されても、実際にどの部品・材料が「どこ」に依存しているか、一覧できている現場は少数です。
構成部品表(BOM)やサプライヤーマップを活用し、調達先が物理的に「どこの工場・倉庫」なのか可視化しましょう。
可能であれば、地理情報システム(GIS)を使いハザードマップと重ねることで、リスク領域が一目で分かります。

次に、「パートナリング」と「サプライヤー育成」です。
単なる複数化では、品質や納期面で逆効果になることもあり得ます。
候補サプライヤーの技術力・品質保証体制をじっくり見極め、中長期的なパートナーシップを意識した関係作りに投資しましょう。
契約の汎用化・図面の一部ブラックボックス化・標準化など、共通化の工夫も有効です。

さらに、BCP(事業継続計画)策定の一環として、「イフ・シナリオ」を現場で具体的に考えておくことも重要です。
「A工場が止まった場合、どこなら何日で再立ち上げ可能か」
「Bサプライヤーが被災したら、誰がどのサプライヤーに連絡・打診するのか」
事前にシミュレーションを重ね、業務マニュアルのようなものを用意しておくと「いざ」という時にパニックになりません。

最後に、最近注目されているのがDX(デジタルトランスフォーメーション)の活用です。
製造業の多くは、「紙とFAX」がいまだに主流です。
しかし、クラウド型の部品情報管理や、AIを活用した最適サプライヤー選定システムなど、「少ない人数でも回せる仕組み作り」は不可欠です。

バイヤー、サプライヤー双方に求められる“意識変革”

単一拠点依存から多拠点・複数サプライヤーへの転換は、調達側だけでなくサプライヤー側の姿勢変化も不可欠です。

バイヤーにとって重要なのは、「コストだけでサプライヤーを選ばない」という思考の転換です。
最安値・単一拠点化で得られる短期的な利益よりも、「止まったらどれだけ損をするか」という損失想定や、レジリエンス(回復力)の観点を重視しましょう。
災害時の相互救済や、現場感覚を活用した「やれるリスト」の備えが強い企業こそ、取引先として信頼され続けます。

一方、サプライヤー側にも「自社設備が被災した場合、お客様の生産をどう守るか」という視点が必要です。
サブ工場の準備や、近隣企業との協業体制、情報開示や標準仕様化への前向きな姿勢が、今後の受注拡大に直結するでしょう。
また、B to Bプラットフォームなど効率的な情報連携ツールの導入も一手です。

まとめ:今こそ“ポスト昭和”の供給網再設計を

現場のオペレーションは、いまだに“昭和の香り”が色濃く残る領域です。
しかし、「何かあってからでは遅い」のが供給網リスク管理の本質です。

単一拠点に依存する仕組みには必ず理由がありますが、その理由を問い直し、ひとつずつ地道に潰していくこと。
地震・水害・パンデミックなど、従来の想定を超えるリスクを“現実”として受け止め、バイヤー・サプライヤー双方が共通の言語で対話する土台作りを始めましょう。

市場優位性は“最安値調達”でも、“無理な単納期対応”でもなく、「止まらない供給網」を構築できるかどうかにかかっています。
そのために、現場一人ひとりが日々の仕事の中で「もしも」を具体的に想像し、小さな準備と改善を重ね続ける姿勢が、昭和時代を超える「新しいものづくり」の基盤になるはずです。

供給拠点の多角化、サプライヤーとの真のパートナーシップ、情報共有とデジタル化——。
今できることから一歩ずつ始め、リスクに負けない現場を、一緒に作り上げていきましょう。

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