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ホットメルト低圧成形導入ガイドと量産設計成功のコツ

目次
はじめに:ホットメルト低圧成形の需要拡大と業界動向
近年、電装部品やセンサー類といった小型・精密な製品を保護するための新たな封止技術として、「ホットメルト低圧成形」が注目を集めています。
従来のポッティングやインジェクション成形に比べ、設備投資や材料費の低コスト、そして生産工程での省力化・短納期化が強みです。
特に、昭和世代のアナログな現場が多い日本の製造業界でも、この技術導入による生産性変革が起こりつつあります。
本記事では、20年以上にわたる現場経験をもとに、ホットメルト低圧成形の基礎知識から、量産設計を成功させるための具体的なコツ、導入時の落とし穴まで、徹底的に解説します。
ホットメルト低圧成形とは:基本原理と他工法との比較
ホットメルト低圧成形の仕組み
ホットメルト低圧成形は、加熱した熱可塑性樹脂(主にポリアミド系ホットメルト)を低圧(0.1~1MPa)で金型内に注入し、電子部品や配線基板などを一体的に樹脂封止する技術です。
最大のポイントは、従来の高圧インジェクション成形に比べて樹脂圧力が極めて低いため、基板や部品、ワイヤーの損傷リスクが激減する点です。
また、硬化時間も短く、ほぼ即時に硬化するため、生産タクトの短縮にも貢献します。
従来工法との比較
代表的な封止工法には次の3種類があります。
・ポッティング(液状樹脂注入+硬化)
・インジェクション成形(高圧注入)
・ホットメルト低圧成形
それぞれ比較すると、ホットメルト低圧成形は以下の特徴があります。
– 材料コスト:ポッティングより可、射出よりやや高いがトータルコストは安価
– 設備投資:インジェクションより安価
– サイクルタイム:最速(10秒~30秒/shot)
– 作業性:自動化、ハンドリング容易
– 損傷リスク:最小
つまり、“傷つけたくない”デリケートな部品を大量・安定・安価に封止するには最適な工法です。
導入の現場目線:なぜホットメルト低圧成形が受け入れられるのか
「現場が変えたくない」という壁
日本の製造業、特に昭和世代が多い工場では、「今までのやり方(ポッティング等)を変えたくない」「新技術は故障やトラブルが心配だ」という現場の強い抵抗があります。
ですが、昨今の省人化・自動化の潮流、またIoTやEV化拡大による新規部品の増加を受け、今までの“手作業ポッティング”や“量産インジェクション”が通用しなくなりつつあります。
現場で一番響くフレーズは「誰でもできる」「歩留まりが良い」「人が減らせる」「金型も低コスト」という現実的なメリットです。
設計・購買・生産管理の立場から見るメリット
– 設計部門:基板配置や端子形状の自由度が広がる、短納期対応用の開発治具設計にも適合。
– 購買部門:材料・設備の初期投資抑制、コスト低減への寄与。
– 生産管理:少量多品種でも段取替えが素早く対応できる、生産計画の柔軟性向上。
つまり、「現場」「設計」「購買」それぞれの観点からコスト・効率・品質維持のバランスが取れるため、多くの企業で導入が進んでいます。
ホットメルト低圧成形導入ステップ:現場定着までの道のり
1. 適否判断(自社に合うかどうかの見極め)
– 製品特性:小型電子部品、センサーユニット、配線コネクタなど、熱や圧力に弱い製品が向いています。
– 生産数:小ロットパイロット~中量産で最もメリットあり。10,000個/月前後が目安。
– 既存工法トラブル:ポッティング不良・気泡混入・手作業バラツキなどが課題なら候補。
2. 材料・金型・機械選定
– 材料:耐熱グレード、難燃グレード、透明性など要件に合ったポリアミド・EVA系などを選定。
– 金型:製品形状・材料流動性を考慮して設計。後で形状変更や多品種展開しやすい設計を。
– 成形機:小型~中型。先行メーカーの中古機も導入コスト抑制に有効。
3. トライ&エラーと現場教育
– 始めてみると「樹脂の流動性不良」「離型性トラブル」「部品ズレ」など現場トラブルが頻出します。
– 本質は、金型温度・成形条件・部品固定治具を“実物合わせ”でベストバランスに仕上げることです。
– 現場隊長(班長・職長)と設計者が一緒になりPDCAサイクルを「リアルな現場感覚」で数回まわしましょう。
4. 生産体制固め・量産体制移行
– 「試作OK」→「量産開始!」で終わらず、検査部門や管理部門と共同で量産用FMEA・工程チャート整備を進めましょう。
– 管理職目線として、突然のトラブル時に「元のポッティングに戻せるバックアップ運営体制」の整備も重要です。
量産設計を成功に導く5つのコツ
1. 初期段階での多部門連携
設計・製造・購買・現場を初期段階から巻き込む。いわゆる“フロントローディング”。
ホットメルト樹脂の流動性、離型、収縮、余剰ランナー材発生まで多方面の意見を取り入れることで、失敗リスクを減らせます。
2. 金型設計は“柔軟”が命
少量多品種、派生品開発に対応できる可変部品や交換プレート採用を推奨します。
初回から金型コストをかけすぎず、将来に柔軟に対応できる「拡張性」が量産当たりコスト低減のカギです。
3. “簡単”自動化を意識
ホットメルト低圧成形こそFA(ファクトリーオートメーション)導入のチャンスです。
単純な部品着脱工程、成形後の自動搬出工程などを自働化し「人でやらない」工程を設計段階から意識しましょう。
アナログ現場ほど、“手元作業の省人化”が効きます。
4. 材料と歩留まりの視点を欠かさない
ホットメルト材は流動性・収縮性が製品によって異なるため「無駄流れ=材料ロス」が発生しやすいです。
初期段階で成形不良率(歩留まり)のシミュレーション、材料コスト試算をしっかり行い、逸失コストを抑える工夫が重要です。
5. 量産までに“標準書→動画化”まで進める
昭和世代現場では「引き継ぎは口伝」文化が残っており、トラブルが起きたときの再現性が低くなりがち。
工程標準書のデジタル化、部品セットや樹脂注入映像の動画保存といったナレッジ共有を徹底しましょう。
この仕組み化が、現場作業の属人化を防ぎ、新人戦力化を加速します。
導入現場で見られる失敗パターンとその対策
1. 油断による「樹脂漏れ」
成形治具や型締め不良による樹脂漏れが多発します。
解決策:型治具の定期点検・ウエアプレートの簡易交換設計化・現場パトロールによる早期発見体制。
2. 温度管理不良での「ショート・ヤケ」
加熱温度や時間のわずかなズレで製品の変色やショートが発生します。
解決策:現場温度センサーの二重化。加熱温度履歴の自動記録や「作業日報のデジタル記録」を徹底する。
3. SCM(調達・購買)部門の“材料入手難”
海外原料高騰やロット長期化で材料遅延→ライン停滞が懸念。
解決策:2~3社のホットメルト材料サプライヤーと日頃から情報共有、条件サンプル確保。
また新材料・グレード追加の定期探索も重要です。
バイヤーとサプライヤー、それぞれの視点でつかむべき要点
バイヤー(調達・購買)の視点
– 材料選定時の「汎用性」と「長期供給安定性」を重視しましょう。
– とくに歩留り改善・材料無駄流れ削減へのエンジニア視点の確認を欠かさず実施。
– 部材トレーサビリティ確保(ロット管理・メーカー保証)を要求できる供給元を選定しましょう。
サプライヤー(材料・金型・成形サービス)の視点
– 課題発見力こそ競争力。ユーザー現場の日常的な不便や“何とかしたい”に対し、ソリューションを現物提案できるかがカギです。
– 樹脂流動・密着・離型など、単なる「材料の販売」ではなく「成形条件・工程改善」までコンサルできる体制を持ちましょう。
– アフター対応の速さこそ顧客信頼の源泉です。
まとめ:現場の変革、未来の製造業へ
ホットメルト低圧成形技術は、これまでアナログに頼ってきた日本の製造現場にとって、「誰でも・安く・確実に」工程改善できる大きな武器です。
現場の声を反映し、多部門協業での成形最適化、日々の小トラブルを見過ごさない管理職の目線が、量産設計の成功を左右します。
今後も絶え間ない技術革新やコスト競争が続く中、「現場知」「ラテラルシンキング」を存分に発揮して新しい地平線を切り拓いていきましょう。
ホットメルト低圧成形の導入が、あなたの工場と日本の製造業の生産性向上の起爆剤となることを期待しています。
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