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ワイシャツの襟が立つ仕組みとアイロンプレスの工程を知る

目次
はじめに:ワイシャツの襟はなぜ型崩れしないのか
私たちが日常的に着ているワイシャツ。
特に、その襟がいつもピンと立ち、美しい形を保ち続けている理由について考えたことがあるでしょうか。
実はそこには、緻密な製造技術と職人のこだわり、そして最新の自動化設備が活躍しています。
この記事では、製造業の現場で実際にワイシャツの生産管理や品質保証に携わった経験から、ワイシャツの襟が立つ仕組みと、それを実現するアイロンプレスの工程について詳しくお伝えします。
製造現場で働く方、サプライヤーで付加価値を考える方、またはバイヤーとしてワイシャツ製造工程を知りたい方にも必ず有益となる内容です。
ワイシャツの襟が立つ「カラーステイ」と内部構造
襟を型崩れから守るキーパーツ:カラーステイの存在
ワイシャツの襟がいつも美しく立っている理由の一つに、カラーステイ(カラーキーパー)と呼ばれる部品の存在があります。
カラーステイとは、襟先に差し込む細長いプラスチックや金属の板で、襟部分の形状を保つ役割を果たします。
ワイシャツの襟の内側、左右の先端部分にポケット状のスペースが縫い込まれており、そこにカラーステイを挿入します。
多くは取り外し可能ですが、高級ワイシャツや業務用ユニフォームでは縫い込み式も存在します。
芯地(インターフェーシング)による構造強化
もう一つ重要なのが「襟芯」と呼ばれる構造です。
襟の布地と布地の間に、硬さや厚さの異なる芯地を樹脂で貼付けることで、襟全体のコシやハリをコントロールしています。
この芯地の選定や貼り方によって、シャープな襟、柔らかな襟、ボリューム感のある襟など、目指すワイシャツの印象を自在に調整できます。
また、長期間型崩れしないためには、芯地の材料や厚み、接着方式にも最新技術やノウハウが詰まっています。
襟を美しく仕上げる製造現場のアイロン工程
昔ながらの職人技から最新自動化設備まで
襟を立てる最大のポイントは「アイロンプレス」の工程です。
これは工場の作業現場で「二次加工」と呼ばれることもあります。
昔ながらの工場では、熟練の職人が一枚一枚、襟の裏から丁寧に蒸気アイロンをかけていました。
手作業ならではの繊細な力加減で、芯地の接着や襟ラインの美しさ、細部のエッジ感などを仕上げていきました。
一方、現在の大手工場では「襟プレス専用機」があり、あらかじめ温度と圧力、プレス時間、蒸気量など細かく設定し、100枚単位の大量生産に対応しています。
人が仕上げチェックをしながら、より高品質な襟を安定して生み出すことができるようになりました。
アイロンプレス工程のフローを分解する
一般的なワイシャツのアイロンプレス工程は、以下のような流れになっています。
1. 襟部分の裁断
2. 襟芯(インターフェーシング)の貼り付け
3. 襟パーツの縫製と表地・裏地の合わせ
4. 仮プレス(接着を強固にする)
5. 襟全体の仕上げプレス(襟山・襟先までくっきりとプレス)
6. 本体と襟の縫製後、最終仕上げプレス
この一連の工程の中で、最も気を遣うのが「仕上げプレス」です。
芯地のしわ、波打ち、縮み防止のため、温度・湿度・時間の管理は秒単位・度単位の調整が求められ、機械×人のダブル品質保証がないと量産品質は維持できません。
昭和から続くアナログ現場が支える高品質
近年の自動化や外注化が進む中でも、ワイシャツ製造の多くの現場では「最後は人の手で美しく仕上げる」。この思想が根強く残っています。
理由は二つあります。
一つはデザイン変更や小ロット生産にも柔軟に対応できること。
もう一つは、肩や襟周りなど曲線形状のクセがアイロン機では均一化しにくく、微細な調整は職人の手でしか実現できない点です。
たとえAI・ロボットが台頭しても、「最後は人間の指先による品質保証」こそが付加価値とされる―これは昭和から現代に至るまで変わらない現場の知恵と言えるでしょう。
バイヤー・サプライヤーにとって知ってほしい3つの視点
1. 製品スペックだけでなく、工程と現場の匠を評価すべき
コストダウンや納期重視が前提となる中、自動化設備への投資だけでなく、現場作業者の訓練や継承ノウハウに目を配ることが不可欠です。
大量生産品であっても、特定の工程は属人的な技術が品質支えるのがワイシャツ業界の現実です。
カタログスペックには表れない、現場の努力にもしっかり着目しましょう。
2. アナログ×自動化のハイブリッドを見抜けるか
最新生産ラインでも人が担当する微調整部分や点検フロー、逆に旧来工場でもIoTやAIを活用して品質トレースを行うなど、多くの現場では「完全自動化」よりも「ハイブリッド方式」が主流になっています。
調達先やサプライチェーンの選定時は、単なるコスト・納期比較だけでなく「どの工程がどこで担保されているか」を現場目線でヒアリングしてみることが重要です。
3. サステナビリティ・ESGの観点での進化
今後は工程の短縮や省エネルギーだけでなく、環境配慮型素材(リサイクル襟芯、バイオマス由来カラーステイなど)の導入も加速しています。
調達バイヤーやサプライヤーとしての立場からも、こうした最新の業界トレンドを意識しながら、安定供給と高品質を両立させる選択が求められます。
襟が立つワイシャツを支える業界動向と未来
ワイシャツ製造の現場では、効率と品質、伝統と最新技術が常にせめぎ合っています。
コストだけを追求すれば海外生産や完全自動化が正解にも見えますが、日本のものづくりの現場では、「着る人が着心地よく、毎朝美しい襟でスタートできるように」という心配りが絶えず息づいています。
今後も自動化設備は進化しますが、現場オペレーターや職人の「品質観」は失うべきではありません。
それがワイシャツ業界の“日本品質”を支え続ける最大の強みです。
まとめ:ワイシャツの襟が立つには守るべき伝統と進化がある
ワイシャツの襟が立つ仕組みとアイロンプレス工程には、誰にも真似できないノウハウと昭和から続く現場の努力が息づいています。
カラーステイや襟芯といった部材選び、機械×手作業の工程構成、サプライチェーン全体の品質意識が一体となって、ようやく一枚のワイシャツが完成します。
これから製造業や調達・バイヤーを目指す方は「現場の目線」の大切さを、サプライヤーの方は「工程の背景」まで理解していただきたいと願っています。
メーカーとバイヤー、サプライヤーが同じ地平線でワイシャツの価値を語れる日が来れば、“日本らしいモノづくり”がもっと広く世界で評価されると思います。
ワイシャツの襟は、形あるものの象徴であり、職人技術や製造哲学を伝える立派な名刺でもあります。
その背後にある技術や現場目線を、ぜひ今後の業務や新たな戦略に生かしてください。
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