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アグリテック分野におけるシステム共同開発の進め方

目次
アグリテック分野におけるシステム共同開発の進め方
はじめに:アグリテックで新たな価値を共創する時代へ
アグリテックは、農業とテクノロジーを融合させ、食料生産の効率化や持続可能性の向上を目指す新たな産業分野です。
IT企業や機械メーカー、農業生産者、さらには流通・運送、研究機関など多様なステークホルダーが関与します。
この分野における最大の特徴は、「システム開発=単なる発注/受注」という昭和的な垂直取引ではなく、現場知見・技術・データ・資本を持ち寄り真に価値を共創する“共同開発”が重要だという点です。
私は20年以上、製造業の現場で調達購買、生産管理、品質管理、工場の自動化など、現場目線で数々のプロジェクトを推進してきました。
その経験をもとに、アグリテック分野でシステム共同開発を成功させる実践的な方法論を、ラテラルシンキング(水平思考)を活用して深堀りし、新たな道筋を提示します。
アグリテックの共同開発が難しい理由とその本質
多様性の壁:言語も利害も、異なる「現場」
アグリテック共同開発では、農業従事者、ITエンジニア、メーカーの各現場が接点を持ちます。
それぞれの「常識」や「成功体験」は大きく異なり、理解し合うのが難しいのが現実です。
農業現場の方は、畑・圃場の感覚、経験値、「作業の都合」という時間軸で考えます。
その一方、ITやメーカーサイドは、「どの機能が必要か」「どうすれば効率化できるか」「どれだけのROIが見込めるか」といった数値化された思考やシステム標準化の視点を重視しがちです。
この“言葉の壁”を越えなければ、せっかく協力しても「机上の空論」「現場で使えない」仕組みができあがるだけです。
昭和的な発注‐受注構造のままだと、イノベーションは生まれない
かつての日本の製造業は、明確な発注者(バイヤー)と受注者(サプライヤー)が分かれていました。
調達担当者が「要件定義書」を作成し、仕様どおりのものを納入させることで品質・コスト・納期を担保してきました。
しかしアグリテックでは「正解」がわからない領域です。
業務要件も流動的であり、「作ってみて初めて分かる課題」に頻繁にぶつかります。
昭和型のトップダウン方式から一歩抜け出し、真の意味でパートナーシップを築かなければ、共創は成り立ちません。
アグリテック共同開発推進の実践ノウハウ
1. “現場”と“技術者”の間に立つバイヤー的調整役を置く
調達購買のベテランとして痛感しますが、開発プロジェクトの最重要ポジションは、現場と技術者の橋渡し役です。
アグリテックの現場では、従来の「購買=価格交渉役」とは異なり、“ビジネスエンジニア兼ファシリテーター”が求められます。
例えば、現場農家から「手元で管理したい」「昼休みにまとめてデータ入力できないの?」といった要望が機械メーカーやエンジニア陣に正しく伝わらなければ、投資は無駄打ちになります。
一方で、開発側の「あるべき論」ばかり並べる提案も現場にフィットしません。
調整役には、下記の三つの資質が不可欠です。
– 現場の仕事を理解している(数字と現実を往復できる)
– 技術やITに基本的な知見がある(システム用語を翻訳できる)
– お互いの言葉で対話し合意をファシリテートできる(合意形成力)
この役割を各社のメンバーから混成チームでアサインし、「バイヤー目線+現場感覚+開発リテラシー」を備えた人材を中心に据えましょう。
2. プロトタイプ(MVP)で「早く作り、現場で早く壊す」
昭和的な産業構造は、要件定義書+多重下請構造+入札+一括発注という流れが主流でした。
しかし今は、「まず小さく作って現場で試す」「違和感があれば即座に軌道修正」という“検証主義”が有効です。
アグリテックでは、自然条件・人的要因・地域差など、机上で想定できない要素が数多く登場します。
たとえば土壌センサーが思ったほど現場で故障しやすい、データ入力のタイミングが作業リズムと合わない、といったことが後から分かります。
ですから最初から完璧なものを目指すより、「実際に農業現場で使える“最低限の機能(MVP=Minimum Viable Product)”」を素早く作り、ユーザーのフィードバックをもとに次の改善サイクルに素早く入っていくことが肝心です。
3. 契約方式も柔軟に:標準化×アジャイルの融合
共同開発の現場でよく陥る失敗が、「何をどこまで誰が、いつまでに完成させるか」が不明確になりがちという点です。
アグリテックでは、最初から厳密な契約を結ぶのはリスクが高いですが、曖昧すぎても開発責任やコスト配分、知財帰属のトラブルにつながります。
近年は「アジャイル型」「タイム・アンド・マテリアル型」など、工程ごとに優先度を見直しながら柔軟に進める契約が増えています。
ただし、最低限押さえておくべきポイントは明確に文書にしておきましょう。
– 最終的な製品像の共有(全体像のイメージ・目標値)
– 検証用段階ごとのゴール(プロトタイプ開発・実証導入・運用支援など)
– 成果物と知的財産の取り扱いルール(共同所有、将来の利用権等)
– 投資コストの配分や持ち寄り方(費用分担、成果を出した場合のインセンティブ等)
– トラブル時の解決手続(第三者検証やステージゲート方式の有効活用)
こうした基礎ルールをもとに、現場のフィードバックや検証の結果を毎回最優先して内容を見直し続ける――“標準化とフレキシビリティ”のバランスがアグリテック共同開発の成功要件です。
業界の動向と昭和からの脱却、そして新たな潮流
レガシー企業こそ強みが活きる共同開発の時代
一部では「古い体質の会社はアグリテックなどの新分野にはついていけない」と思われがちです。
しかし、実際には昭和から続くアナログ産業の中には、現場力・調達の目利き・現物管理の粘り強さなど、簡単にデジタル化できない財産が多数残っています。
たとえば生産管理で培った「ジャストインタイム」「かんばん方式」「現場の困りごと把握力」などは、データドリブン時代でも本質は変わりません。
むしろDX推進ブームの中、現場知や中間管理職が果たす役割は再評価されつつあります。
昭和的な知恵を、デジタル時代の「現場フィードバック→改善ループ」の中にどんどん溶け込ませ、昭和と令和の“ハイブリッド型共同開発”を志向することが、これからのアグリテックの勝ちパターンになるでしょう。
「産業の壁」を越える:異業種人材の巻き込み方
共同開発の強みは、IT・メーカー・現場農家だけでなく、物流・金融・小売・行政など他業種の知恵も巻き込めることにあります。
現場目線では想定できない新しい事業モデルも生まれやすくなっています。
バイヤーや購買担当者の皆様、ぜひ自社内の枠組みにこだわらず、提携先選定や外部人材の登用にチャレンジしてください。
今まで組んだことのない異業種とこそ、本当にユニークなソリューションが生まれます。
まとめ:現場力とラテラルシンキングでアグリテックを進化させる
アグリテック分野におけるシステム共同開発は、「現場の知」を最大化し、「業界の壁」を越えるための新しい試みです。
製造業で培われた現場感覚・調達力・品質重視の姿勢は、昭和から令和へと形を変えつつも、本質的な価値を失っていません。
垂直統合型・一括委託型から、水平共創型・検証最優先型への転換。
現場と開発チームの対等な議論。
異業種や新興企業も巻き込んだ、新しい“ものづくり”文化。
今、アグリテックはもっとも現場知が輝く分野のひとつです。
購買担当者、バイヤー志望者、サプライヤーの皆様、そして現場を支えるすべての方にこの新たなパラダイムでの「共創」の醍醐味を体感していただきたいです。
これからのアグリテック分野が、昭和の知恵と令和の技術が融合した日本発ものづくりの新時代になることを願っています。
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