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OEM受託先の技術を応用してヒット商品を生み出す市場ニッチ発見の方法

目次
はじめに:製造業にとって「技術の応用」がもたらす価値
現代の製造業は、単なるモノづくりの時代から「新しい価値創造の時代」へと大きく舵を切っています。
特に、OEM受託先が持つ技術を自社の強みや市場のニッチに応用するアプローチは、競争が激化する市場で生き抜く鍵となります。
筆者は20年以上の現場経験を通して、多くのOEMパートナーと関わりながら、数々の“技術転用による市場ニッチ開拓”を目にしてきました。
本記事では、OEM受託先の技術をどのようにヒット商品へと転換するのか、その実践的なアプローチと、アナログ体質の強い製造業界でこそ役立つ考え方を、現場目線で解説します。
OEM受託先の「技術」とは何か?
OEM(Original Equipment Manufacturer)とは、受託者が委託者のブランドで製品や部品を製造する形態です。
概して、受託先は特定分野で独自の製造ノウハウや加工技術、設備を有し、コスト・スピード・品質いずれかに突出した強みを持っています。
バイヤーや製造業に携わる方は、受託先を単なるアウトソーサーではなく、「自社が持ち得ない技術を持つパートナー」として認識する必要があります。
多くの場合、その技術は“元来の用途”に閉じて使われているだけで、「応用」や「新規市場開拓」の視点は希薄です。
そこにこそ、市場ニッチの可能性が眠っています。
受託技術の応用がもたらすブレークスルー
例えば、ある精密部品の射出成型メーカーA社が持つ「超微細成型技術」は、もともと家電部品向けでした。
しかし、ヘルスケア業界の新興企業がA社の工場視察時に技術力に気づき、「点滴針の新規デバイス部品」への転用を相談した結果、数年で大ヒット商品を生みました。
このように、技術の“異業種流用”には、現場が思いもしない市場価値と、受託先自身も気づいていない付加価値創出の可能性があります。
昭和的「発注指示」から「共創」への現場マインドの転換
従来のアナログ的な調達・購買プロセスでは、「カタログから選ぶ」「図面上の指示通り発注する」ことがルールでした。
しかし、市場ニッチ発見の本質は、受託先との「技術目線の対話」や、設備・工程そのものを知る現場交流の中にあります。
工場長経験の立場から強調したいのは、OEMパートナーに「我が社の困りごと相談」を持ち掛けたり、逆に「どんな技術応用例があるか」「どんな課題があるか」をオープンに語り合うことです。
この姿勢が、単なる価格交渉相手止まりになるOEM関係を、唯一無二の市場共創へとアップデートさせます。
市場ニッチ発見のための5ステップ
1. 受託先の現場に足を運ぶ
現場を知ることが、あらゆる発想の出発点です。
設備ライン、工程、技術者の手つき、使用材料…OEM受託先の現場を五感で体験してください。
固定観念を捨てて、どんな小さな違和感・発見も記録することが重要です。
2. 「本来用途」ではなく「技術の特徴」で捉える
技術を“何のためにあるのか”でなく、“何ができるか”の視点で整理しましょう。
「超微細成型」「高速インクジェット」「極薄コーティング」「高耐腐食性鍍金」…。
これらを“性能の羅列”としてメモし、その技術が持つ「本質的な特徴」と「制約条件」を洗い出します。
3. ニッチ市場の不(不足・不満・不便・不衛生…)をリサーチ
大手メーカーは大市場しか狙いませんが、中小や専業メーカーには「量は少ないが困っているニッチ層」が山のように存在します。
医療機器、福祉用品、ロボットパーツ、農業サポート部品など、業界横断で「不が放置された現場」を探すことがポイントです。
現場ヒアリングや小規模展示会、専門雑誌などの情報にもヒントがあります。
4. 受託技術とニッチの“痛点”をマッチングさせる
現場ニーズの“痛点”と、受託先の技術特性が交差した時、初めて「ヒットの萌芽」が見出せます。
研磨の例でいえば、電子部品の極微細研磨技術を歯科用ツールに転用するといったイメージです。
この時、両者の強み・制約を素直に共有し、“試作品レベルから素早く実験”できる体制が肝となります。
5. 小ロット・短納期でクイックテスト&現場フィードバック
ニッチ市場は「小口小ロット・高速フィードバック」が最も重要です。
試作品を現場顧客へ直接見せて、生々しい意見や改善要望を集めてください。
昭和時代には「量産性=仕事の良し悪し」でしたが、今は“問題を早期に修正し続けられる柔軟性”がヒットへの必須条件です。
OEM受託先も、小型生産ラインや試作フローが構築できれば新たな商機となります。
実践事例:OEM技術転用によるヒット商品の裏側
筆者が関わったヒット事例から、OEM技術流用による成功パターンをピックアップします。
事例1:食品搬送用ロボットのグリッパー開発
包装機メーカーとの共同開発で、精密樹脂成型のOEM パートナーの「耐油性・高摺動樹脂技術」を転用。
この技術を用いて、水分や油分が多い食品を確実にピッキングできるロボット用グリッパーを開発。
ヒットの要因は、現場で日常的に起きていた「食品搬送の滑り事故」にOEMパートナーが着目したことでした。
事例2:医療向け精密ディスポーザブル部品
もともとプリンター用微細部品を製造していたOEM工場は、製品特性の「高精度」「低バリ」「高衛生性」に強みがありました。
そこで、異業種の医療機器ベンチャーと共に「ディスポーザブル血液検査用部品」の試作に成功。
小ロット生産と自動検品装置を組み合わせることで、医療現場からの信頼を勝ち取りました。
どちらのパターンにも共通するのは、「従来用途」で埋もれていた技術が、“困りごと”と“新しい領域”で価値を花開かせたことです。
OEM技術応用の障害と現場組織の越え方
OEM技術の市場転用を阻む壁として、工場現場にはまだまだ昭和的な「情報非公開」「部門ごとのタコツボ意識」「やったことがないことへのアレルギー」が強く残っています。
「現場の守り」に徹することも大切ですが、“成功事例をオープンに語り合う社内文化作り”や、OEM・ODM技術者同士の「勉強会」「ショールーム見学」など、ハードルの低い交流が切実に求められています。
また、購買バイヤーが技術に疎いと「安ければいい」「仕様通りならOK」という狭い視野に陥りやすいです。
サプライヤー側も「何か提案しても結局価格しか見ていない」「図面以外の話は信用されない」という苦い経験も多いでしょう。
だからこそ、両者の架け橋となる“技術翻訳役”や“チャレンジ経験者”の存在が、社内外でいっそう必要となる時代です。
今さら聞けない!OEM技術応用でバイヤー&サプライヤーが得られるメリット
・価格競争から脱却できる(技術+市場提案で差別化)
・長期的なパートナー化が進み、情報の囲い込み合戦から開放される
・組織内イントレプレナー(事業開発人材)が育つ
・新規事業の「失敗コスト」が小さくて済む(小ロット応用→量産へ)
バイヤーとしては「相見積もりで一円でも安い発注先探し」から、「自社ブランドの競争力源泉づくり」へと、根本的な役割のシフトが求められます。
また、サプライヤー側も「受け身の仕事」から「顧客課題解決のパートナー提案」へと、従業員や工場の“意識”そのものを変えていく必要があります。
まとめ:OEM技術の応用は「聞く力」「伝える力」から生まれる
OEM受託先が持つ技術力は、実は社外からだと“見えない宝物”です。
その武器を磨き、社内外の枠を超えて新規市場・ニッチ市場に持ち込むのは、現場経験に裏打ちされた「聞く力」と「現場の生きた課題を伝える力」です。
相手の強みに敬意を払い、組織の壁を超えて共創の種を探し続けることで、旧態依然とした昭和的なものづくりから、一歩先の“市場で愛されるヒット創造”の世界へ。
今後も現場から発想し、現場をつなぎ、新しい市場価値を生み出すためのヒントを、惜しみなく発信していきたいと思います。
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