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海外調達の進め方とトラブル未然防止およびサプライヤ開拓・選定のポイント

目次
はじめに:製造業現場で求められる海外調達の実務的アプローチ
製造業を取り巻く環境は、グローバル化の進展やコスト競争の激化により、日々大きく変化しています。
部品や原材料の安定調達、多様なリスクの分散、コスト低減の観点から「海外調達」が当たり前の時代になりました。
しかし、昭和の頃から根強く残るアナログな商慣習や、現場での意思疎通の難しさ、トラブルのリスクも絶えないのが実態です。
本記事では、20年以上の現場経験を踏まえ、海外調達手順とトラブル未然防止策、そしてサプライヤ開拓・選定の勘所について、現場目線で実践的に解説します。
海外調達の基礎知識と現場のメリット・デメリット
グローバル調達の目的と期待できる成果
日本国内調達だけでは実現できないコスト競争力や、安定供給体制の確立。
さらに、新興国サプライヤの優れた技術・独自素材の活用など、多くのメリットが期待できます。
たとえば、アジア圏からの部材調達により材料費を30%以上圧縮できた事例や、複数拠点からのリスク分散で納期遵守率を高めた事例も増えています。
海外調達に内在するリスクと課題
一方で、納期遅延・品質不良・コミュニケーショントラブル・不透明な取引条件など、見過ごせないリスクもあります。
また、「カタログスペック通りに納品されるとは限らない」「文化・言語の壁で意思疎通が難しい」「工場立地のインフラ問題」など、現場ならではの実務課題も顕著です。
現場目線では、価格差だけでなく、上記リスクのバランスを常に意識する必要があります。
海外調達の流れと実効性を高めるポイント
1. サプライヤの情報収集と初期スクリーニング
現場ではインターネット検索や展示会だけに頼らず、既存ネットワーク(商社、現地工業団体、現地スタッフなど)を駆使し、生の声や評判も収集してください。
過去の実績や顧客リスト、取得している認証(ISO、IATFなど)の有無も欠かせません。
ここで「言葉だけ」「カタログ画像だけ」の魅力に騙されない慎重さが必要です。
2. RFI/RFQ(見積依頼)の発行
できれば自社で標準化したRFI・RFQシートを用意し、見積条件や要求仕様、納期、対応可否、アフターサービス体制など、漏れなくヒアリングします。
「現地実査」や「オンライン面談」が難しい場合は、細かなQ&Aをメール等で重ね、不明点を徹底的につぶしましょう。
3. サンプル・トライアル依頼
実現場では、現物・サンプルの確認抜きに本契約するべきではありません。
たとえサンプルが「有償」でも、必ず実施しましょう。
サンプルでの寸法、外観、機能、梱包方法――すべて自社要求を疑いなく満たしているか、現場で確認します。
また、到着日数の確認・通関プロセスのテストも含めてください。
4. 契約条件交渉と合意形成
価格・納期・品質保証などに加え、「納期遅延時のペナルティ」「不良の処理」「支払い方法と為替変動リスク」「インコタームズ(売買条件)」なども必ず盛り込みます。
業界では“甘い条件で押し切られる”ことがよくありますが、現場実務者としては「抜け道を残さない」よう、細かいところまで契約書に明記してください。
5. 量産・本格取引開始後のモニタリング
初回量産時は特に、頻繁な現場レポート・写真記録・工程監査で「現地、今、作っているもの」の動きを見逃さない工夫が重要です。
定型的なやりとりだけでは、製造工程での突貫対応や変更を見逃しがちです。
現場レベルでは「誰が・いつ・何を」責任持って管理しているか明確にし、“海外から帰ってきたら大変なことになっていた…”とならないよう気をつけましょう。
トラブル未然防止の実践知──現場が身につけたい“転ばぬ先の杖”
1. コミュニケーションの壁を超える努力
現場では「伝わっている」という先入観がもっとも危険です。
一歩進んだ方法として、「確認・反復・可視化」を徹底しましょう。
・図面や仕様書は、日本語・英語両方で徹底
・写真付き作業手順書を現地で配布
・ビデオ会議で、納入品や現場の動作をライブ確認
・“Read back”方式(相手側に説明させ理解度を確認)を活用
これらはシンプルですが、実際のトラブルの“8割”は「意思疎通不足」から発生するため、基本こそ確実に徹底してください。
2. 監査・現地視察による裏どり
紙上(メール上)だけでは現場実態は分かりません。
可能であれば現地工場監査を実施し「QA体制」「工程管理」「現場の仕事ぶり」「人員安定度」など、肌で現場空気を感じ取りましょう。
困難な場合は、現地パートナーや信頼できる代理に視察を委託したり、オンラインでのライブ現場映像確認も工夫できます。
重要なのは、“見えない”リスクを可視化する執念です。
3. トラブル発生時の対応体制を明確化
納期遅延や品質不具合が生じた場合、「誰が指揮を取り、どのタイムラインで対応を進めるか」をあらかじめ決めておく必要があります。
業界では“お互いなすりつけ合い”で解決が遅れ、顧客に迷惑・コスト増に発展するケースが多く見られます。
初期契約段階から「緊急時の報告フロー」「代替供給ルート」「損害賠償有無」まで明示し、いざという時の備えを「仕組み」で作る意識が大切です。
サプライヤ開拓・選定のポイント──定性的・定量的な視点から
1. コスト優先だけでは失敗の元、“バランス感覚”を養う
コストは重要な指標ですが、単純な価格追求だけで選ぶと、納品遅れや、標準以下の品質、アフターサポートの不備など、実際の現場では深刻な問題につながります。
調達バイヤー・現場管理者は「コスト」「品質」「納期」「サポート体制」「現地人材の安定度」など、総合的な“バランススコア”で評価する素養が不可欠です。
2. 定量的な評価指標:指名制・点数制・KPI管理
ISO/IATF管理の厳しい現場ほど、サプライヤ評価に定量的基準(KPI)を導入しています。
・納品実績(数量・納期遵守率)
・品質実績(初回合格率・不良率)
・価格競争力(過去2年の推移)
・提案力(VA/VE活動実績)
・現地工場のキャパ・BCP(事業継続)体制
これらを“見える化”しつつ点数化、一定基準を満たさない場合はブラックリスト化するなど、客観性のある選定が望ましいアプローチです。
3. 定性的な現場知見:信頼・現場の肌感・現地の文化的土壌
ただし、最終的なサプライヤ選定では「担当者の人柄・反応の速さ」「現地工場の管理意識」「文化的な信頼醸成力」など、現場感覚でしか分からない要素も重視されます。
20年の現場経験から痛感するのは、“付き合ってみて初めて分かる”ことがどうしても多いことです。
定量・定性の両輪を使い、「トライアル発注→フィードバック→本契約」の段階的な育成型アプローチが最も現実的でしょう。
サプライヤとの信頼関係構築──昭和のアナログ慣習を逆手に取る
日本製造業には、古くからの“付き合い文化”“現場に足を運ぶ精神”が根強く残っています。
グローバル調達でも、「年に1回の現地訪問」「現場リーダーを招いての現場交流」「現地のお祭りや行事に参加」など、昭和的な“泥臭い”信頼醸成は意外なほど今も効果的です。
取引開始からしばらくは「価格だけ」「メールだけ」で済ませがちですが、どこかのタイミングで“ひと手間”踏み込むことで、将来的なトラブル防止やQCD向上につながります。
バイヤー、サプライヤ双方が「相手の立場を体感する」経験は、想定外の危機を救う現場力になります。
まとめ:海外調達を成功に導く“現場力”を高めるために
海外調達は、単なるコストパフォーマンスの追求ではありません。
現場のリスクマネジメント、サプライヤの適正評価、信頼構築に向けた“現場力”が、最終的な競争力につながります。
表面の数字に囚われず、あらゆる現場リスクを疑い、地道なコミュニケーション・現地確認・段階的選定を徹底しましょう。
そして、昭和的な“泥臭さ”を忘れずに。
今後の製造業界を牽引する皆さんの取り組みが、新たな価値創造・ものづくりの発展に必ず役立つことを願っています。
製造業の未来は現場で作られる。
海外調達のプロセスに、皆さんの現場力をぜひ生かしてください。
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