投稿日:2025年10月31日

飲食店が自社ブランド調味料を作るためのレシピ共有と製造ライン構築法

はじめに:飲食店による自社ブランド調味料の必要性

昨今の飲食業界では、他店との差別化や新たな収益源を求め、自社ブランドの調味料を開発・販売する動きが活発になっています。

飲食店にとって、看板メニューの味を支える調味料はまさに“要”です。
そのレシピや品質を安定して外部に展開できれば、ブランド強化と収益多角化の両立が可能になります。

本記事では、長年の製造業経験と現場目線を活かし、自社ブランド調味料開発におけるレシピ共有のポイントや、実際に量産するための製造ライン構築法を詳しく解説します。

また、昭和的なアナログ文化が根強く残る日本の食品加工・製造業界でどのように未来志向のものづくりを実現していくかという点についても考察します。

自社ブランド調味料開発のメリットと今日的価値

オリジナル調味料はなぜ武器になるのか

飲食店の味の要である調味料。

これを自社開発し商品化することで、唯一無二の“味のファン”を獲得することができます。
また、テイクアウトやEC展開と組み合わせることで、店舗以外の販路を得ることができ、ロイヤリティの高い顧客づくりに直結します。

差別化が難しい価格競争よりも、「あの店のあの味」を軸としたブランディングは、長期的な利益体質への転換を図る上でも有効です。

業界トレンドと現場実態

2020年代に入り、SNSで“おうちごはん”ブームが続き、プロの味を家庭で楽しみたいというニーズが高まりました。
コロナ禍で外食機会が減った一方、「アレンジ用調味料」「ご当地グルメ調味料」などに注目が集まり、規模問わず多くの飲食店が自社調味料開発に乗り出しています。

しかし、いざ実際に開発を進めようとすると、レシピの明文化や製造工程の標準化、さらには食品衛生管理や表示義務など、越えるべき課題が山積みです。
現場には「レシピは経験と勘」といった昭和的慣習も根強く残っており、それが標準化・量産化の障壁となる場合も少なくありません。

レシピ共有の壁を乗り越えるためには

レシピの“見える化”とその技術

店舗で日々使われているレシピは、実は「言語化」されていないことが意外と多いものです。
ベテラン料理人の“手の感覚”や“目分量”で成り立っているレシピを、きちんと文書化・数値化することが最初の大きな壁です。

ここで大切なのは以下の三点です。

1. 原材料の正しい計量(グラム・ミリリットル単位で明記)
2. 混合・加熱・抽出など工程ごとに温度・時間を記録
3. 調理工程の“なぜこの作業が必要なのか”を言語化

例えば、「醤油とみりんを1:1で混ぜる」だけでなく、「50度で3分加熱する」「この工程でアルコール臭を飛ばす」のように意図や目的まで落とし込むことが重要です。

アナログ慣習から脱却するためのポイント

昭和的現場では「企業秘密だから」「材料の産地が違うと味も違う」などの理由で、レシピ共有が進まないケースがあります。
しかし、今後の食品製造現場やパートナー工場との協業を意識するなら、レシピの標準化は不可欠です。

「マニュアルにすると品質が落ちるのでは」「職人技こそがうちの売りだ」などの不安や反発も根強いですが、

1. まずは既存メンバーで小さくトライアル(例:日替わりランチのソースを分量記録つきで作る)
2. 比較テイスティングで“標準品”と“職人仕込み”の差を見える化し、議論する
3. うまくいったら第三者(取引先、サプライヤー)にもレシピ伝達を始める

といった段階的アプローチがおすすめです。

製造ラインの選定:自社生産かOEMか

自社で製造する場合のポイント

自社厨房で瓶詰めやパウチ包装を少量生産する場合、保健所・食品衛生法の基準を厳守しなければなりません。

調味料製造のためには以下のポイントを押さえる必要があります。

– 必要な設備(加熱釜、攪拌機、充填機など)の導入
– 衛生的な動線設計(手洗い・消毒・原材料保管の分離)
– ルールに沿った記録管理(製造ロット、原材料トレース、検品記録など)

初期投資やランニングコスト、労働負荷を考慮し、「限定数量だけ自社生産し、仕組みが固まったら外部委託」という段階的展開も現実的です。

OEM(受託製造)を活用する場合

量産や販路拡大を視野に入れるなら、食品OEM企業に委託するケースが増えています。

OEM活用の際のポイントは、

– 自社レシピの再現性(原材料が変わっても味がブレないように調整)
– 試作サンプルでの確認とフィードバック
– 分量・ロット・納期・品質管理のすり合わせ

OEM工場選びにあたっては、
「小ロットから対応できるか」「アレルゲン管理やHACCPなど法対応をしているか」、「自社ブランド開発の実績が豊富か」などを複数社比較して選定することが大切です。

製造業目線で見た調味料量産の“落とし穴”

味の安定化と工程管理

家庭用や飲食店の厨房では微妙な調整が可能でも、量産現場では“正確な再現”が難しい場合があります。
「試作で完璧だったのに、ロットが変わると味がズレる」という事態は食品製造では珍しくありません。

その原因は、
– 材料のロット変動(特に自然由来素材)
– 加熱・攪拌など機械工程の違い
– 充填・容器形状による保存性の差

などが挙げられます。

現場では「なぜこの工程が必要なのか」を全員で共有し、フィードバックと改良の“高速サイクル”を回す仕組みが必要です。

原材料調達とサプライヤー管理

「安定供給できる原材料調達先」と「費用対効果の高い購買先」選びは、製造業のバイヤーが最も神経を使うポイントです。

調味料の場合、「国産●●産しょうゆ」や「地場の香辛料」など、産地やサプライチェーンがブランド価値に直結することも多く、サプライヤーとの信頼関係構築が成功の肝となります。

また、原材料が高騰した場合や、天候不順で調達困難になった際の“セカンドオプション”もあらかじめリストアップしておくべきです。

実践的な製造ライン構築法【STEP別解説】

STEP1:ミニマムで試作→ノウハウ蓄積

まずは厨房・セントラルキッチンなどで実際に記録を取りながら
– 日々の業務の中でレシピを“標準化”
– 作業担当者を変えた時の差異も記録
– 小分け充填し保存性テスト(賞味期限・分離・変色等を確認)

失敗を恐れず、多めに“試し取り”を実施することが、後々の品質安定に繋がります。

STEP2:製造設備を導入または委託

安定した需要・販路が見込めてきたら、次は製造設備の導入か、OEM委託へ。
– 「小鍋→中型釜」など工程拡大時のスケールアップ試作
– 衛生管理の徹底(記録の義務化・HACCP対応など)
– パッケージや充填工程も実際に“ライン止め”が起こらないか確認

STEP3:品質保証体制・トレーサビリティづくり

製造現場だけでなく、
– ロット管理(いつ、誰が、どの材料で作ったか)
– 流通・保管記録まで一元管理
– クレーム・返品時の“流通ルート特定”シミュレーション(演習)

など、より製造業らしい体制を意識した管理モデルを構築します。

まとめ:自社調味料開発・製造の未来地図

自社ブランド調味料の開発・製造は、“飲食店だからこそ”の現場ノウハウと、“製造業だからこそ”の標準化技術が交差する分野です。

アナログな感覚が残る業界でも、現代的ものづくりの考え方にシフトすれば、中小店舗にも新たなブランド価値と販路拡大の可能性が生まれます。

レシピの標準化と工程の言語化、パートナー工場やサプライヤーとの信頼ネットワークづくりが未来のカギとなります。

既存の“勘や経験”に頼る時代から、データと標準工程を共有し、全員で「この商品を作る!」という組織文化へと進化していくことが、今後の飲食業・食品製造業の新たな成長曲線となるでしょう。

恐れず、まずは“小さく始めて早く回す”こと。
この一歩が、あなたの店舗の「味」を“ブランド”に変える原動力となります。

飲食現場、バイヤー、サプライヤー、それぞれの目線で互いの強みを活かしあい、日本のものづくりの新たな一歩を踏み出しましょう。

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