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投稿日:2025年6月11日

分かりやすい技術文書の書き方・構成法とその実践講座

はじめに:なぜ技術文書作成が重要なのか

製造業の現場では、調達購買や生産管理、品質管理といった分野で膨大な数の技術文書が存在しています。

図面、仕様書、手順書、報告書、工程管理表など、日々の業務の中で「何となく読みにくい」「内容が伝わらない」「曖昧でトラブルになる」といった悩みを経験したことはないでしょうか。

実際、昭和時代から続くアナログな文化が色濃く残る業界では、「昔からの書き方」のまま変化がなく、非効率や伝達ミスが温存されています。

一方、グローバル競争やデジタル化の波が押し寄せる中、分かりやすく、ミスが起きにくい技術文書を作成できる人材の価値が急上昇しています。

本記事では、20年以上の製造業実務経験と管理職としての現場感覚を基に、「現場で役立つ・伝わる」技術文書の書き方・構成法、その実践的なテクニックを徹底解説します。

技術文書とは何か ~一般文書との違いを押さえる~

まず、技術文書とは単に専門用語が多い文書ではありません。

技術的情報(仕様・設計・製造・検査・運用等)を、読み手が正しく理解し、行動へつなげられるように記述された文書です。

一般的なビジネス文書と異なるのは「伝達すべき事実や手順、数値、判定基準が明確」「再現可能性とトレーサビリティが重要視される」点です。

このため「書く人の論理性」「現場を理解する力」「誰が読んでも誤解しにくい表現力」が強く求められます。

分かりやすい技術文書を書くための“5つの鉄則”

1.文書の目的・ゴールを最初に明確化する

文書を作成する前に、「この文書で何を伝えたいのか」「誰が読むのか」「読み手にどんな行動をとってほしいのか」を明確にします。

たとえば、調達購買部門がサプライヤへ部品図面を渡す場合、単に図面を送付するのではなく「どの特性を重視してほしいのか」「合否判定はどこで行うのか」まで伝えるべきです。

目的が曖昧なままだと、文書構成や用語選定、情報量にバラツキが出て冗長・曖昧な記述になります。

2.「読む人」を具体的にイメージする

現場では「技術者同士だから分かるはず」「自部門向けなので専門用語でOK」と思いがちです。

しかし、製造現場は多様なリテラシー層が混在しています。

たとえば、バイヤーや営業、現場作業員、海外の協力工場など、全員が同じ前提知識を持っていません。

「始めてその文書を読んだ人」にも誤解が生じない単語選び・図解・注釈が重要です。

3.構成は「結論ファースト」+「端的な根拠や手順」

長文のままダラダラと説明を羅列すると、読み手は混乱し理解度が下がります。

特に製造業の現場では「まず何を決めるのか」「何から作業を始めれば良いのか」をすぐ把握したいのが本音です。

そのため、「結論(要求事項、判定結果)」を最初に記載し、続いて「理由や条件」「実施手順」「確認方法」という順序が望ましいです。

4.曖昧さを排除し「定量的・客観的」に記述する

「適切に」「十分に」「基準内で」などのあいまいな表現では、現場ごとに判断基準がばらつき重大事故・クレームにつながります。

たとえば「十分に乾燥させる」ではなく「60℃×2時間、もしくは水分率1.0%以下まで乾燥する」と数値・測定方法まで明記します。

また、必要に応じて写真・図・表・数式を組み合わせ、再現性の高い文書にしましょう。

5.1文1情報を徹底し、見出し構成・レイアウトで読みやすくする

1文に複数の事象や条件を詰め込まず、1文=1つの情報とします。

項目ごとに小見出し・整理番号を振り、情報の一覧性・属人性排除を意識した構成が有効です。

レイアウト面では「余白」「インデント」「強調」「箇条書き」などを積極的に活用してください。

実践! 現場目線の技術文書構成モデル

ここで、実際によく使われる現場の技術文書(例えば作業手順書、図面、品質報告書)の構成例を紹介します。

1. 作業手順書

1. 文書タイトル:目的・対象
2. 適用範囲:どの工程・設備・部品に関する手順か
3. 使用資材・設備:型番や条件まで明記
4. 事前準備:必須確認事項、注意点
5. 作業手順:ナンバリング、写真、図解、チェックリスト形式を推奨
6. 判定基準・不具合例:OK/NG写真や測定値で明確化
7. 安全注意事項:特に物理的リスクには赤字等で強調
8. 責任者・版数・改訂履歴

2. 図面・仕様書

1. 図面番号・品目名・版数
2. 仕様要求(寸法、精度、材質、表面処理、図示や記号で統一)
3. 使用上の注意点・特記事項(工程条件や限定事項があれば脚注か別表参照)
4. 試験方法・保証範囲
5. 認証印・発行部署

3. 品質報告書

1. 品目・ロット・出荷日
2. 異常の概要(事実として端的に)
3. 原因分析(経緯・現象→解析根拠→真因)
4. 対策(再発防止、改善策、是正確認ポイント)
5. 添付資料(写真、測定データ、工程フロー等)

技術文書作成のための“現場で効く”10のTips

1. まず「冒頭に主旨(何の話か)」を書き出し、読み手の頭を準備させる。
2. 文書冒頭・見出しに「主語(誰が)」「目的(何のために)」をセットで。
3. 専門略語・業界用語は必ず1回目で注釈または用語集を付記。
4. 可能なら「ToDo 形式」「Q&A形式」「Yes/No形式」で行動を明確化。
5. 重要数値・条件は太字 or 枠囲み or カラーマーカーで強調。
6. 写真・イラスト・実線/破線・赤丸など図解効果を最大限に活用。
7. 項目・手順はナンバリング(1→2→3…)で順序性を意識。
8. 複雑な内容は「全体像を示す図」→「詳細説明」と段階的に記載。
9. 誰かに必ずレビューしてもらい“主観バイアス”を排除する。
10. 作成したら「一晩寝かせて」翌日、自分で声を出して読んでみる。

昭和的“アナログ文化”から抜け出すためには

日本の製造業は長年、口伝や暗黙知、手書きの帳票や図面など“非効率なアナログ運用”が蔓延していました。

令和に入っても「前任者の書き方」や「部門ごとバラバラの書式」が温存されるケースが多いです。

この状況から脱却するためには、
1. 文書テンプレートの標準化(社内ポータル共有、ナレッジ化)
2. “なぜこの書き方にしたのか”背景を問うレビューワークの推進
3. 世代交代・多国籍化を見越した多言語・グローバル対応の意識
が不可欠です。

特に現場のリーダー格や工場長レベルには「文書で人を育てる」「誰でも同じ成果が出せる仕組みを作る」強い意志と実行力が求められます。

最新トレンド:デジタル化×分かりやすい技術文書

近年では、AI技術やデジタルツール(例:3DCAD、動画手順書、自動翻訳ツール、ドキュメント管理ICT)を活用した「誰にでも理解しやすい」「現場で迷わない」技術文書の整備が広がっています。

たとえば、製造工程の標準作業をiPadで動画マニュアル化し、新入社員や外国人技能実習生向けの教育期間を大幅に短縮する動きも活発化しています。

一方、「大量のデータや画像、DXツールに頼りすぎて肝心の“中身=現場の論理”が曖昧になる」という落とし穴には注意が必要です。

本質は「現場に即した実践知」「課題を解決できる伝達力」があってこそです。

バイヤーの視点・サプライヤーの視点 ~文書作成で得する関係構築~

バイヤーとしてはサプライヤーに
「仕様も履歴も明確で、お客様(最終ユーザー)へ説明しやすい文書」
を求めます。

反対にサプライヤーの立場なら
「自分たちの強みや工夫、リスクへの配慮が伝わる文書」
が契約・信頼獲得につながります。

文書は“交渉材料”“品質担保”であると同時に、“関係づくりの第一歩”です。

一方通行の「自己都合だけの説明」に陥らず、「相手の立場で何を示すべきか」“ラテラルシンキング”で深堀りし、伝える力を育ててください。

まとめ ~現場の知恵と筆力でモノづくりの未来を拓く~

分かりやすい技術文書の作成とは、単なる“お作法”ではありません。

現場目線で「何を伝え、どう動いてもらうか」を考え抜いた末の、実践知そのものです。

文章力の向上は、現場のムダ・ミス削減に直結し、次世代へ技術伝承する要となります。

自分だけでなく、仲間や未来の後輩たちのためにも「伝わる技術文書」を作れる人材を目指し、日々の業務に役立てていきましょう。

最後まで読んでいただきありがとうございました。製造業の現場発の卓越した知恵が、現場だけでなく業界全体の発展に寄与することを願っています。

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