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技術実用文書における文章作成法とそのポイント・実践

目次
はじめに ─ 製造業の現場で求められる「技術実用文書」とは
製造業の仕事には、数多くの「文書」が存在します。
設計図、作業手順書、品質管理報告書、購買仕様書、設備保全マニュアルなど、その種類は多岐にわたります。
これらを一括して「技術実用文書」と呼びますが、単なる文章力や漢字の正確な使用だけでは足りません。
技術実用文書には、現場で即座に「使える」こと、情報の受け手が正しく理解し、実際の作業に落とし込めることが最重要なのです。
この記事では、20年以上にわたる製造業現場での実体験と、管理職としての視点、日々変化する調達・購買・生産・品質管理の最前線の知見をベースに、アナログ体質が色濃く残る業界や現場でも、誰でも実践できる「技術実用文書の書き方」とその本質を徹底解説します。
なぜ今、「文章力」が製造業の競争力につながるのか
AIや自動化の波が押し寄せる令和の製造業ですが、工場や現場での実際のコミュニケーションは「文章」によるやり取りが主力の一つです。
とりわけ、日本の製造現場は昭和的な口頭伝承が根強く残っており、「手順書に書いてあるけど、みんな実際は違う方法でやっている」などのギャップが頻繁に生じます。
このギャップは、文章を「正しく」「実践的に」書く力が不足しているからこそ発生します。
また、調達購買部門ではサプライヤーと技術的な要件を詰める時、不明瞭な表現やあいまいな仕様が後々大きな品質トラブルやクレーム、コストアップの要因になりかねません。
つまり、製造業の「文章力」は今や生産性・品質の根本を支えるリソースであり、競争力そのものなのです。
技術実用文書の基本構造と「現場で役立つ」ポイント
1. Who, What, When, Where, Why, Howの徹底
現場でありがちなのが、「これで伝わるだろう」と思い込み、省略や行間を読みすぎた文書です。
おすすめしたいのは、作業報告書でもマニュアルでも、「誰が(Who)、何を(What)、いつ(When)、どこで(Where)、なぜ(Why)、どのように(How)」の6要素を必ず入れることです。
このフレームを意識するだけで、必要最小限の情報は過不足なく入り、後日のトラブルも激減します。
2. 現場・読者ファーストの視点を徹底する
技術文書の本質は「読む人がアクションを起こせる」ことです。
現地現物主義を徹底しましょう。
「どんな知識・スキルレベルの人が読むのか」
「間違えやすいポイントはどこか」
「現場でどんな使われ方をするか」
これを徹底してイメージし、必要ならば現場の作業者や受け手側にヒアリングをして「ここで詰まる、ここが間違えやすい情報だ」という生の声を盛り込みます。
また、専門用語や略語には必ず補足説明を添えることも重要です。
3. レイアウトと見た目の工夫が現場を救う
現場で本当に読まれる・使われる文書は、見た目にも工夫があります。
ごちゃごちゃした一文が何行も続くのは厳禁です。
ポイントは、
・伝えたい内容を箇条書きに分割する
・図や写真、フローチャートを効果的に使う
・色や枠線で要点を強調する
このひと手間が、伝達ミスや作業ミスを劇的に減らします。
実践テクニック ─ 購買・品質・生産各部門ごとのコツ
調達・購買担当者向け:仕様書・依頼書の極意
部品や原材料の調達現場では、仕様書が命綱です。
求める品質や納期、必要な検証項目、納入方法、合否判定基準など、具体的な条件を明記し、不明瞭な表現は避けることが鉄則です。
「問題が生じた場合の優先順位」や「リスク想定」もドキュメント化しておくと、サプライヤーとの信頼関係構築に役立つだけでなく、契約トラブルの未然防止につながります。
生産管理・工程管理:シンプルさ重視がカギ
生産計画や工程表、TODOリストなどは、「一目でわかる」「誰でも使えるシンプルさ」に徹することが重要です。
あいまいな表現や主観的な言葉は避け、「○○までに完了」「△△部品納入後、直ちに開始」など具体的な行動に落とし込む表現がベストです。
また、工場のアナログ現場では手書きの補足やチェック欄を空けておくのも有効です。
品質管理・トラブル報告書:事実と仮説を分けて書く
品質記録やトラブル報告書では、必ず「事実」と「推測・原因仮説」を分けて記載します。
例えば、
「○月○日9時、ラインBで部品Aの欠損を発見。現物保管、写真撮影済み。原因は未調査。」
のように、まず「見たこと・起きたこと」→「暫定対応」→「今後のアクション」と構造立てて書くと、第三者が読んでも「再発防止策」のヒントが拾いやすくなります。
ゼロから作る技術文書マニュアルの作成ステップ
1. まずは「現場観察」とヒアリングから始める
技術文書を整備する際に陥りがちなのが、既存の他社マニュアルや「長年の慣習」「とりあえずのコピペ」で済ませてしまうことです。
現場で本当に役立つ文書を目指すなら、ゼロベースで現場作業や機器の動き、会話を観察し、実際に作業スタッフやオペレーターに「どこが困るのか」「どういう所で戸惑うのか」をヒアリングしましょう。
この地味な一手間が、後のトラブル激減を導きます。
2. ドキュメントの骨格を定め、「誰が使うか」を意識する
文書の冒頭に「目的/背景」「想定読者」「適用範囲」を明記します。
そのうえで、現場での使いやすさを最優先に、見出し構造(目次案)を事前に作成しておきましょう。
「何を実現するための文書か」が明確になれば、情報の過不足やブレを防げます。
3. 初稿は「6割主義」で素早くまとめ、その後アップデート
最初から完璧を求めてはいけません。
まずは大枠を6割程度で書き上げ、現場に配布し、数日〜数週間の運用で不備やフィードバックを集めます。
改善点を拾い上げて何度もアップデートすることで、使いやすい実用文書に仕上がります。
4. 定期的なリフレッシュと「なぜやるのか」の再確認
技術や工程は日進月歩で変化します。
少なくとも半年~1年に一度は必ずマニュアルや文書の見直し点検を実施しましょう。
その過程で「なぜこの作業やルールが必要か」という目的を再認識し、不必要な手順やルールは潔く削除・修正してください。
製造業の「紙文化」「伝承文化」を乗り越えるために
現場の多くは、依然として「口伝え」「先輩の背中を見て覚える」が主流です。
それでも、急速な人手不足・技能伝承の断絶・働き方改革によって、マニュアルやドキュメントの整備は避けて通れません。
筆者も現場長時代、手書きのノートや「裏ワザ」が横行する現場を数多く目の当たりにしました。
その経験から言えることは、完璧を求めないこと、ひとりで抱え込まないことです。
現場の知恵や工夫をすくい上げ、共創で文書をブラッシュアップしていく姿勢が、現場に技術文書文化を根付かせる最大の近道です。
まとめ ─ 技術実用文書は「現場を進化させる力」
製造業の技術実用文書は、単なる事務作業でも、資料保管でもありません。
それは現場を進化させ、トラブルの未然防止や生産性向上、技術伝承の土台となる「知的インフラ」です。
アナログ業界の伝統やクセを理解しつつ、徹底した現場目線と読者ファーストで記録・伝達の仕組みを磨くことは、現場で働く全ての人の武器となります。
購買担当・品質管理職・現場スタッフ・サプライヤーにとっても、「文章力」はこれからますます重要なビジネススキルです。
型どおりの文書ではなく、「現場を動かせる」実践的な技術実用文書を、ぜひ今日から一歩踏み出してみてください。
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