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静電気による糸飛びを防ぐ加湿制御と帯電防止処理の実践法

目次
はじめに:製造現場の静電気トラブルとその深刻さ
繊維やフィルム、紙などの素材を扱う製造現場では、静電気による糸飛びや異物付着といったトラブルが後を絶ちません。
静電気に起因する製品の不良や歩留まりの低下は、品質管理上の大きな課題となっています。
とくに昭和から続くアナログ主体の現場では、静電気対策は経験則や「これまでのやり方」に縛られがちです。
しかし、グローバル競争が激化する昨今、こうした古い慣習から脱却し、より科学的で再現性の高い静電気対策が求められています。
本記事では、20年以上にわたる製造現場での経験をもとに、糸飛びや異物付着を防ぐための実践的な加湿制御と帯電防止処理の手法について、現場目線で詳しく解説します。
バイヤーやサプライヤー、現場管理者など、多角的な視点から最適な静電気対策のヒントを提示します。
静電気がもたらす糸飛びのメカニズム
なぜ静電気が糸飛びを引き起こすのか
静電気は、異なる素材が接触・分離する際に電子が移動し、一方がプラス、もう一方がマイナスに帯電して発生します。
繊維やフィルムは特に帯電しやすく、加工・搬送中に静電気が蓄積されやすい素材です。
帯電した糸やフィルムは、電気的な引力や斥力により隣接する糸同士が反発・吸引し合い、「糸飛び」として現れます。
この現象は、巻き取りや織り工程、端材処理などのさまざまな場面で発生しやすく、意図しない交絡や絡みによる品質不良、歩留まりの悪化につながります。
現場でよくある静電気トラブルの実例
実際の工場では、冬場になると「糸がまっすぐ流れていたのに突然浮き上がる」「切断工程で静電気で糸がはじけ、機械内部に絡みつく」「原反が張り付いて剥がれなくなる」といったトラブルが多発します。
こうした現象は一度発生すると作業効率が大きく低下し、不良品の増加や納期遅延などのリスクを高めます。
加湿制御による静電気対策:アナログからデジタルへの進化
湿度のコントロールが静電気発生を抑える理由
静電気発生の大きな要因は「空気の乾燥」です。
空気中の水分が少ないと絶縁性が高まり、静電気が容易に蓄積・保持されます。
逆に湿度が高い環境では、空気が電気を通しやすくなり、溜まった電荷が微小放電や拡散で自然に流れやすくなります。
このため、加湿制御は糸飛びや静電気トラブル防止に非常に効果的なファクターです。
現場で実践されてきた加湿方法とその限界
旧来、製造現場では「加湿器を設置し、室内の湿度を適当に上げておく」といった対処が行われてきました。
しかし、あくまで経験則に頼って湿度を目分量で管理していると、加湿のムラや過剰加湿、インフラコスト増といった課題も生じます。
また、機材の配置やライン変更により、「加湿しても局所的に乾燥エリアができる」といった現象もよくあります。
最新のデジタル加湿ソリューションの導入事例
近年では、IoTやセンサー技術の進化により、工場内の細やかな湿度計測と自動調整が可能になってきました。
各作業エリアごとに湿度センサーを設置し、ネットワークで集中管理することで、必要なエリアだけをピンポイントで加湿できます。
また、スマート加湿システムなら湿度変化の記録と分析も容易になり、「どの工程、どの時期に糸飛びが増えるか」といったデータの蓄積・予兆保全も可能となります。
この「定量的な加湿制御」へのシフトが、アナログ時代から抜け出すための第一歩です。
帯電防止処理の実践法:現場が選ぶ賢い手法
表面帯電防止材の選定と使い分け
帯電防止剤は、主に「界面活性剤タイプ」「高分子タイプ(ポリマー)」などに分類されます。
界面活性剤タイプは、繊維やフィルムの表面に吸着し、空気中の水分と化学反応を起こして導電性の被膜を作り、静電気の逃げ道を与えます。
一方、高分子タイプはフィルムや繊維内部に練り込んで効果を持続させるものが多く、長期間の帯電防止に向いています。
現場では「後加工で処理するか、素材段階で練り込むか」といった判断が求められます。
どちらも素材との相性や製品用途(食品容器なら食品衛生規格対応のものが必要)を考慮し、テスト検証を繰り返すことが必須です。
静電気除去機器(イオナイザー等)の活用
加湿や帯電防止剤だけでは除去できない静電気には、イオナイザー(静電気除去装置)の導入が実効性の高い手段となります。
イオナイザーは高電圧で空気中にイオン(プラス、マイナス)を発生させ、帯電物の表面電荷を中和します。
導入ポイントは「どの工程に設置するか」と「最適な風量・間隔の設定」です。
糸の搬送路や巻き取り直前など、トラブルが起きやすいタイミングにピンポイントで設置することが効果的です。
また、メンテナンス(電極の清掃や交換)も品質管理の一環として欠かせません。
昭和からの慣習を“アップデート”する視点
現場の“なんとなく”を数値化してPDCAサイクルを回す
長年培われた現場の感覚や“勘”にも確かに価値がありますが、それだけに頼るのは時代遅れです。
たとえば、「去年より糸飛びが多い気がする」「この辺だけいつもゴミが付く」という現場の声も、湿度・温度・静電気の測定値として記録・共有し、問題の因果関係を数値で可視化することが肝要です。
このデータを基に、加湿機の増設や帯電防止剤の種類見直し、設備メンテナンスのサイクル短縮など、具体的な改善PDCAを回すことで、属人的な業務から脱却した強い現場づくりが可能となります。
バイヤー・サプライヤー視点での静電気対策の意義
バイヤーは「品質安定性」を極めて重視します。
生産現場の静電気管理状況や工程改善の取り組みを積極的に開示することで、アピールポイントにもなります。
一方、サプライヤーの立場では、「どこに静電気トラブルが発生しやすいのか」「バイヤーが何に困っているのか」を知って対策提案できることが、信頼構築と差別化の要です。
帯電管理の数値データや改善実績の提示は、長期的なパートナー関係の強化に繋がります。
静電気トラブル“ゼロ”を目指す、次世代工場への進化
糸飛びや異物付着に悩まされてきたアナログ工場も、最新技術による加湿制御や帯電防止の徹底で、安定生産・高品質化は必ず実現できます。
現場に根ざした観察力とラテラルシンキング(多角的視点)を持ち込み、「なぜ起きるのか」「他に応用できる手法はないか」を問い続けましょう。
IoTやAIを活用した環境制御、工程に最適化された帯電防止処理の導入など、現場データを“見える化”し論理的に改善策を講じることが、次世代製造業の競争優位性を生み出します。
まとめ:現場力の底上げが製造業の未来を切り開く
静電気による糸飛びや異物トラブルは、製造業における長年の課題です。
しかし、感覚的対処からデータに基づく科学的管理へのパラダイムシフトにより、従来の課題を克服できます。
加湿制御の徹底、帯電防止剤・イオナイザーの最適運用、現場データの蓄積・活用といった一歩一歩の積み重ねが、結果として圧倒的な品質・コスト競争力につながります。
自らの現場だけでなく、供給網全体で知見を共有し、「モノづくり大国日本」の復権をともに目指しましょう。
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