投稿日:2025年10月30日

美容業が海外OEMで製品を作る際の輸入・通関・検査対応の実際

はじめに

日本の美容業界は、国内外のトレンドや消費者ニーズの変化にあわせて、海外OEM(Original Equipment Manufacturer)を活用した製品開発が盛んになっています。
品質やコスト競争が激化する一方、生産現場の実情を見ると、昭和から続くアナログな業務フローや、ルール運用が色濃く残っています。
そのため、理想と現実のギャップに悩む担当者も多いのが現状です。
今回は、実際に美容業が海外OEMを利用して製品を作る際、輸入・通関・検査対応で現場が直面する“リアル”に踏み込み、プロの目線から具体的な対応策を共有いたします。

美容業が海外OEMを選ぶ理由

コスト競争力と独自性の追求

美容業界は、ブランド力や独自の処方、斬新なパッケージデザインが競争力の源泉です。
その一方、原価率の管理も厳しく、品質の安定を確保しつつ、いかにコストダウンできるかが経営課題となります。
このバランスを取るため、海外のOEMメーカーを利用し、独自ブランド製品の開発を進める企業が年々増えています。

内製化の限界とグローバル化の流れ

国内生産では実現できない特殊な処方や、最新の原料開発力、柔軟な生産ラインを求める声も後を絶ちません。
また、一定ロット以上であれば、圧倒的なコストメリットが得られるのも海外OEMの大きな魅力です。
内製化と外部活用、それぞれの“いいとこ取り”が求められているのが現場担当者の実感ではないでしょうか。

海外OEM製品の輸入フローとアナログ現場の壁

計画段階でつまづくパターン

海外OEMから製品を輸入する場合、一番初めにつまづきやすいのが、仕様決定と担当者同士の認識ずれです。
海外とやり取りする際、細かい仕様書・成分規定・パッケージ表記・ロット管理まで“言った・言わない”が頻発します。
これは、現場にアナログなコミュニケーション文化が根強く残っていることが要因です。

書類・現地確認・条件交渉の実態

現場のバイヤーは、現地工場の実態を確認する難しさに直面します。
Zoomやメールでのやり取りに頼らざるを得ず、「先方任せで大丈夫?」「予期せぬ変更は無いか?」と不安がつきものです。
ここで大切なのが、明文化とエビデンス管理。
昭和的な“口約束型商習慣”から抜け出せない業界もまだまだ多く、調達部門には粘り強さと管理スキルが求められます。

通関のリアルとトラブル事例

化粧品輸入に必要な書類と手続き

美容関連製品は、薬機法(旧薬事法)の管理下にあり、輸入する際には特有の書類が必要です。
代表的なものは、成分分析証明、製造証明書、MSDS(化学物質安全性データシート)、INCIリスト、原産地証明書などです。
これらの取得・翻訳・整合性チェックに、現場のバイヤーは非常に労力を割かれているのが実情です。

通関時の“あるある”トラブル

輸入通関では、次のようなトラブルが頻発します。

-書類不備による通関差止め
-成分表記の誤り(例:日本で禁止されている成分が含まれている)
-検疫所のサンプル提出要求
-書類の再提出(追加コストや納期遅延につながる)
現場担当者は、これらに対し“即応”が求められます。
アナログ管理が続く組織では、紙・Excel・個人メールでの覚書管理が原因で、書類紛失や情報共有の遅れが未だ無くなりません。

最新事例:経済安全保障観点の規制強化

近年、グローバル情勢の変化を受けて、輸入検査・表示規制も厳しくなっています。
特に中国OEM製品や新興国由来の化粧品は、成分やパッケージ記載内容への規制が急変するため、現場は日々ルール改定への情報キャッチアップが必須です。
「去年と同じ規定で大丈夫だろう」と油断していると、通関時に痛い目を見ることがあります。

検査対応の現実解と求められるスキル

輸入届&検査対応の流れ

医薬部外品や化粧品を輸入する場合、「化粧品製造販売業許可」、「輸入届出」など、所管官庁とのやり取りが欠かせません。
現場担当者は、未知の成分や初めての規定に追いつくため、常に外部コンサルや検査機関と連携する姿勢が必要です。

工場現場と検査対応の“ズレ”

アナログな現場では、現地工場が最新の日本基準に理解が乏しく、高度な指示が伝わりづらいことが頻繁です。
そのため、「現場主義」と言いつつ、本音は“担当者の個人的スキル”に頼ったやりくりが続きがちです。
現地工場担当者へは、日本側の法令順守や検査基準について、逐一・繰り返し説明し、絶えず信頼関係を築くことが最重要と言えます。

サプライヤーの目線から考えるバイヤーの意図

サプライヤーは“バイヤーがなぜここまで細かく指示するのか?”を早期に理解することが、ビジネス継続の秘訣です。
バイヤー側が「検査対応で困りそうなツボ」を現場と共有できれば、無用なトラブルや揉め事を未然に防ぐことができます。
「言われたまま作ればいい」ではなく、「最終的に消費者の手に渡る“出口基準”」の大切さを共有する意識改革が必要です。

現場を動かす“知恵と工夫”:デジタル活用の具体策

紙・Excel管理からの脱却のポイント

アナログな業務フローから脱却し、輸入・通関・検査対応を効率化するには、以下のようなデジタル活用が効果的です。

-クラウドストレージ(Google Drive、Box、OneDrive等)でリアルタイム書類共有
-ワークフローシステムの導入(申請・承認・進捗可視化)
-チャットツールやタスク管理ツール(Slack、Trello等)の運用
特に“どの工程で誰がどうチェックしたか”の証跡を残すことが、過去トラブルの再発防止に直結します。

ラテラルシンキングで業務改善を

昭和型の前例踏襲文化から脱却するためには、現場担当者が「なぜこのフローが必要か?」と疑問を持ち、背景から仕組みを俯瞰する“ラテラルシンキング”が求められます。
例えば、「検査工数が増える原因は何か?」「紙文化のクセを変えるには?」と本質思考で自問自答し、現状打破の“新たな地平線”を開拓する発想が、これからの現場リーダーには必須です。

まとめ:理想と現実のギャップに挑み続ける

美容業界が海外OEMを活用する際の輸入・通関・検査業務は、理想像と現場の現実にギャップがあるのがむしろ“当たり前”です。
しかし、“現場流”の知恵と工夫で時代の変化にしなやかに適応し、デジタル技術と法令順守を両立させれば、昭和的な壁も確実に崩せます。
バイヤーを志す方、サプライヤーの立場で学びたい方へ。
現場の最前線は決して“正解”が一つではありません。
他業界の知見・他者視点から学び、仲間と知恵を持ち寄って、共に新しい時代の扉を開きましょう。

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