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輸出先での現地販売規制に対応する事前リサーチの重要性

目次
はじめに:グローバル展開における現地販売規制の壁
グローバル市場での成功を目指す製造業にとって、輸出先での現地販売規制は避けて通れない大きな課題です。
経済のグローバル化が進み、日本の製造業も積極的に海外展開を進めていますが、思わぬ現地規制に足をすくわれるケースが後を絶ちません。
特に近年は、各国政府が産業保護や消費者保護、環境保全の観点から法規制を強化する傾向が続いています。
事前のリサーチなくしては、せっかく開拓した市場を失いかねません。
この記事では、製造業の現場で長年培った経験と、昭和から現在に至る業界動向の変遷をふまえ、輸出先での現地販売規制にどう対応すべきか、特に「事前リサーチの重要性」に焦点を当てて解説します。
なぜいま現地販売規制の事前リサーチがより重要なのか
各国で加速する規制強化の背景
近年、製品の安全基準や環境規制、人権対応(サプライチェーンの透明性など)に関する規制が加速度的に強化されています。
たとえば欧州ではCEマーキング、中国ではCCC認証、アメリカではUL認証など、国ごとに独自の認証・検査制度が存在します。
また、一度通ったと思っていた基準が改定されることが頻繁に起こるため、過去の情報では通用しなくなっています。
この結果、規制非対応による「輸出不可」や「リコール」「罰金」といった事態も珍しくありません。
かつての「日本品質神話」の終焉
昭和期には、「日本のものづくり」は世界的に高品質の代名詞でした。
多くの場合、「ジャパンブランド」というだけで現地採用が有利に働いたものです。
しかし、いまやグローバル競争が激化し、海外でも品質・コスト・規制対応のすべてが高いレベルで求められる時代に変わりました。
規制対応を怠った時点で競争のスタートラインにも立てません。
情報は“現地特有”、自社だけで完結しない
紙媒体やFAXでのやり取りが多かった時代には、規制の最新情報の把握が困難でした。
現在はデジタル情報も増えましたが、現実的にはカントリーリスクや文化的な違いも含め、「現地独自の解釈や運用」が多いのが実態です。
そのため、自社だけでの情報収集には限界があり、現地パートナーや専門のコンサルタントを活用することも必須となっています。
現地販売規制で想定される主なリスク
1.製品安全・適合性認証の不備
最も典型的なのは、対象国で必要な認証やラベリング、書類の未取得です。
たとえば電気製品の輸出では、CE・UL・CCC・PSEなど各国の安全認証が必要ですが、日本国内の規格だけでは十分ではありません。
適合しない製品は通関ができないか、最悪の場合は現地当局から回収命令が出されます。
2.言語・記載表示のミス
マニュアルやラベル表示を現地語で作成する必要がある場合、機械的な翻訳や省略によるトラブルも多発しています。
“ちょっとした表記ミス”が消費者トラブルや訴訟につながることもあります。
3.知的財産のトラブル
部品の意匠権や特許、商標の未調査による現地メーカーとのトラブルも頻発しています。
グローバル市場では、知らずに他社の権利を侵害してしまい、巨額の賠償請求となるリスクもあります。
4.人権・環境・社会規制(ESG関連)
昨今は「グリーン調達」や「児童労働排除」などESGへの対応も重要です。
欧州ではリサイクル材使用の義務化、アメリカでは強制労働を排除した証明書の提出が求められるケースも増加しています。
対応していなければサプライチェーンから排除されるリスクも現実的です。
5.輸送・物流面の制約
国ごとに化学品や電子機器の輸送制限が異なったり、港湾で薬事検査にひっかかる場合もあります。
「安全なはずの商品が通関できない」「現地倉庫で足止め」という場合、商機を大きく逃してしまいます。
現場で求められる“実践的リサーチ”のポイント
第一ステップ:法規制・認証のリストアップ
最初に、対象となる製品が「どんな法規制・認証が必要か」を明確化することが必須です。
単に「これくらいは大丈夫だろう」ではなく、政府の公式サイト・現地の業界団体・輸出入業者など複数の情報源を活用しましょう。
現地進出企業の先輩や業界の専門商社から経験談やノウハウを聞くことも有効です。
第二ステップ:ローカル市場の調査—“机上”では見えない実態
カタログ知識やインターネット情報だけでは、“現場”での運用の実態まで把握できません。
たとえば「現地の代理店が再検査や追加書類を独自に求める」「地方によって基準の運用が違う」こともよく起こります。
現地の展示会やビジネスミッションに参加し、生の声・リアルな需要を把握してください。
必ず、実際に“もの”を動かす現地担当者—現場のバイヤーや物流担当、検査官の目線でも確認しましょう。
第三ステップ:サプライチェーン全体の棚卸しと情報連携
調達部門・生産管理・品質管理・法務・営業と、各部門が情報を持ち寄り、全体俯瞰でリスクの洗い出しをします。
自社内だけでなく、サプライヤー・協力工場に「必要な認証や書類」について丁寧に説明し、現地目線でのチェックリストを共有することが重要です。
実際、下請企業が古い設計図や材料証明書で対応し、後で問題が発覚する事例も多発しています。
IoTやデータベースの活用でリアルタイムに情報共有する仕組み作りも有効です。
第四ステップ:現地パートナー・専門組織のフル活用
現地独自の法解釈や規制動向は、自社だけでは追いきれません。
現地の大手代理店・専門商社・法律事務所、あるいはJETROや現地日本商工会議所などを積極的に活用し、最新の規制・運用状況を入手しましょう。
イニシャルコストが発生しますが、事前リサーチ不足で“やり直し”や“損失”が出るよりはるかに安い投資です。
アナログ文化の名残:現場で根強く残る「昭和的落とし穴」
「書類を送れば終わり」という思い込み
日本では、書類を完璧に整えれば問題解決とする文化が根強く残っています。
ところが現実には「現地での運用」「現地語対応」「現場担当者の実務フロー」が整っていなければ、いくら書類を揃えても意味がありません。
制度も“運用基準が直前で変わる”ことが多いので、紙での手続きだけで満足してしまうのは最も危険です。
「自社基準=世界標準」という勘違い
日本の品質管理や標準書は確かに高レベルですが、ローカル規制や文化特有の運用が無視された設計では、グローバル市場で通用しません。
現地調達・現地生産において「自社基準に現地声をどう加味するか」が問われています。
ヒューマンネットワークの欠如
デジタル時代で情報収集しやすくなっていますが、だからこそ「現地の人」との密な協力関係がより重要です。
現地代理店との定例ミーティング、ユーザーからのフィードバック、行政とのコミュニケーションなど“人と人”のつながりが成功のカギとなります。
現場経験者の視点から伝えたい、リサーチ成功のコツ
小さな違和感や現地の声に敏感に
どんなに書類上は合格でも、実際の流通現場や営業先で、「なんとなく違う」「なぜここだけ再検査?」といった“現場の違和感”を見逃さないことが、重大トラブルの回避につながります。
現場に歩み寄る姿勢が重要です。
「見える化」だけで終わらせない、PDCAの徹底
リサーチ結果を「見える化」するだけでは十分ではありません。
実際に手順を書き起こし、現地でもPDCA(計画・実行・評価・改善)を繰り返しながら恒常的に見直すオペレーションが必須です。
「何もしない」ことが最大のリスク
「とりあえず現場で対応する」「困った時に対処する」昭和的対応力ももちろん大事ですが、規制の厳格化が進む現代では「何もしない=市場参入の放棄」となりかねません。
最新情報の収集を怠らず、積極的に外部リソース・現地目線を取り入れて下さい。
まとめ:事前リサーチの質が、グローバル製造業の勝敗を分ける
グローバル展開において、現地販売規制への対応はもはや避けては通れない課題です。
しかも、その「質」こそが後の事業成長を大きく左右する時代に突入しています。
今こそ、アナログ的な思い込みや過去の成功体験にとらわれず、「現場の声」「解釈の違い」「見落としやすい部分」に目を向けた実践的なリサーチが必要です。
これからバイヤーを目指す方、サプライヤーの方も、是非この“事前リサーチ”を徹底し、現地で本当に信頼されるパートナーとなってください。
事前リサーチの一歩が、世界市場で生き残る最大の武器となります。
今後のご活躍を現場から心から願っています。
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