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投稿日:2025年7月4日

鉛フリーはんだ良否判定と不良防止でコストを改善する方法

はじめに:鉛フリーはんだの現場課題と時代背景

鉛フリーはんだは、2000年代初頭から世界的な環境規制強化を背景に、製造現場で急速に普及しました。
RoHS指令やELV規制など、鉛の使用を制限する国際的な動きによって、従来の鉛入りはんだからの切り替えが不可避となりました。
多くのものづくり現場では、鉛フリー化にあたり「はんだ付け良否判定の難しさ」「不良発生頻度の増加」「工程コスト増」といった新たな壁に直面しています。

しかし、鉛フリーはんだだからといって「歩留まりが下がって当然」「不良コストは仕方ない」と諦めてはいけません。
長年アナログが根強い製造業界でも、現場目線の実践的な工夫、DX・自動化技術の導入、そしてラテラル(水平)思考によるイノベーションが、確実にコスト改善に繋がっています。
「現場で使える鉛フリーはんだの良否判定基準」「不良の原因特定とその防止策」「コスト改善に寄与する具体的な方法」を、バイヤーの視点・サプライヤーの視点双方に立って解説します。

鉛フリーはんだの基礎知識と従来品との違い

鉛フリーはんだとは何か

鉛フリーはんだは、鉛(Pb)を含まない、または含有率が極めて低いはんだ材料です。
代表的な成分は「スズ-銀-銅系(Sn-Ag-Cu、通称SAC)」で、従来のスズ-鉛系(Sn-Pb)に比べ、融点が高く、物理的性質も異なります。

鉛フリーはんだ特有の現場課題

鉛フリー化によって、以下のような課題が生じます。

– 溶融温度が高くなり、部品・基板への熱ダメージリスクが増加
– 良好なぬれ性・拡がり特性の確保が難しい
– 初心者では、外観良否判定が一層難しくなる
– はんだ接合部の信頼性(クラック・カラクサ発生など)の管理が厳しくなる

特に昭和時代から続く製造拠点ほど、暗黙知・職人技に頼ったはんだ付けが主流であり、鉛フリー化後の標準化・見える化の遅れが顕著です。

鉛フリーはんだの良否判定基準を“見える化”する

従来の“匠の目”から、共通認識へ

鉛入りはんだ時代、「鏡面光沢」「なめらかな接合形状」が“良品”の証とされてきました。
しかし鉛フリー化では、銀の影響で外観は少しくすみ、鏡面光沢が減る、盛り上がり方もやや異なります。
この変化を厳密に“良否基準”とリンクさせることが、現場生産性と品質安定化の第一歩です。

現場に役立つ主要な良否判定ポイント

1. **ぬれ広がり性**
ぬれ面積がデータシート基準を満たしているかを確認します。
標準参照画像・測定ノギス導入での客観評価が有効です。

2. **接合部の形状**
適度な“どて”形状、余分な山盛りや著しい凹み・ピンホール・ボイドがないかを目視と共にカメラ画像解析でも点検します。

3. **外観欠陥**
はんだ玉の飛散、ブリッジ、濡れ不良、孔食、クラック、明確な異常が無いことを確認します。
デジタルマニュアル、AI画像判定ツールの導入が作業員の手元教育にも役立ちます。

4. **作業履歴のロット管理**
不良発見時もトレーサビリティを維持することで、“原因”への早期アクセスが可能です。

これらの要素を「作業標準書や判定シート」「デジタル管理ツール」に落とし込むことで、属人的な『勘と経験』から誰でも理解・伝承できる品質管理体制へと進化します。

鉛フリーはんだの“不良”原因を構造的に捉える

典型不良と発生メカニズム

鉛フリーはんだに特有な不良の例と主な原因は以下です。

– **濡れ不良**:温度管理不良、酸化膜の除去不良、基板材質の影響
– **ブリッジ**:印刷パターンミス、はんだ量過多、部品ズレ
– **ボイド・気泡**:水分混入、不十分なリフロー設定
– **微細クラック**:過熱、応力集中、冷却速度の異常

これらの原因を“モノ(材料・構造)”、“ヒト(技能・管理レベル)”、“モノ(設備のクセやメンテ異常)”、“方法(作業フローや作業標準)、環境(温湿度や静電気)”といった観点から多面的に分析します。

FH図(フィッシュボーン図)、5Whys、トヨタ式の“現地現物主義”といった多層的手法が有効です。
自工程完結の仕組みづくりが組織全体の品質水準底上げ鍵となります。

アナログ現場の“気づき”をDXで加速する

長年の感覚に頼った「職人芸」もデータ化可能な時代になっています。
例えば自動外観検査装置、温度プロファイル監視システム、作業データ自動収集と分析ソフト活用など現状維持に満足せず、現場の“気づき”を再現性あるルールとデータで可視化・検証しましょう。
そうすることで、歩留まりやコストの“見える化”が達成でき、バイヤー向け報告も説得力が高まります。

不良防止・歩留まり改善の具体策

1. 作業工程管理の強化

作業標準書の徹底、熟練者から若手・派遣作業員への横展開、学習動画やチェックリスト運用など、教育の見える化を進めます。
さらに作業ごとIoTタグを使った履歴管理で、“何が起こったか”をデジタルで記録します。

2. 鉛フリーはんだの最適リフロー条件設計

はんだメーカーテクニカルデータシートを基に、自社基板・部品に最適なリフローカーブ(加熱速度・ピーク温度・冷却タイミング等)を設計管理します。
工程内調整だけでなく、量産初期は必ずプロファイル測定を繰り返し実施しましょう。

3. 設備メンテナンスと環境管理

鉛フリー化では特に、フラックス飛散等で設備内部の汚れ・機械精度低下が出やすくなります。
定期的なクリーニングやキャリブレーションで安定生産を支えます。
加えて、湿度・静電気・ホコリ管理など、設備周辺環境の“見えない不良源”にも着目しましょう。

4. 材料・部品メーカーとの連携強化

不良原因を明確化できるほど、“問題の出にくい材料選定”や“はんだ材料のカスタマイズ”をメーカーと連携できます。
失敗事例・トラブル履歴の共有で“自社専用スペック”へと最適化も進みます。

購買・バイヤー視線から見るコスト改善のポイント

はんだ材料コストの本質的見直し

はんだ材料を単純なキログラム当たりの単価で比較するだけでなく、「歩留まり率」「再作業発生件数」「品質保証コスト」「顧客クレームコスト」などトータルコスト指標で織り込みましょう。

材料コストの“値引き交渉”だけでなく、“工程適合性・歩留まり補償”を含めたベンダー評価を行うことが、結果的にランニングコスト大幅削減に繋がります。

サプライヤーに期待される提案型活動

バイヤー視点では、「材料の改良」「工程診断サポート」「品質改善のデータ提供」など、単なるモノ提供に留まらない“付加価値提案”が採用評価に直結します。
サプライヤーは現場ヒアリング・ベンチマーク協力・トラブル解析報告などの積極提案で、真のパートナーとなりましょう。

まとめ:アナログ現場も鉛フリーはんだで進化する

鉛フリーはんだは、昭和のアナログ時代から続く“職人気質”と最新の科学的管理・IoT・DX技術が融合してこそ、最大のパフォーマンスを発揮します。
属人的だった「良否判定」を客観的基準とデジタル活用で進化させ、不良を原因から根絶する多面的アプローチは、全体コストの抜本改善にも直結します。

バイヤー・サプライヤー・現場技術者それぞれの立場で、時代遅れの常識に囚われることなく、新たなものづくりの地平へと踏み出しましょう。
ものづくりの“質”は、現場目線と横断的な(ラテラルな)発想の転換で無限に高められます。

今こそ鉛フリーはんだの課題を“見える化”し、不良ゼロ・コスト最小・顧客満足最大へ、現場全員でチャレンジを続けていきましょう。

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