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薄膜付着密着性改善と剥離トラブル対策で信頼性を向上

目次
はじめに:薄膜付着密着性がもたらす製造業の信頼性
薄膜付着密着性――この言葉にピンとくる方は、すでに製造業の現場でさまざまなご苦労を経験されていることでしょう。
電子部品、金属部品、樹脂部品など多種多様な製品群において、表面処理やコーティング技術は避けて通れません。
とくに最近では、求められる高性能化・高信頼性化の波が加速度的に強まっており、わずかな剥離や密着不良が致命的なクレームにつながるケースも増えています。
対策としてどのようなアプローチが有効なのか、なぜ“昭和的アナログ運用”がいまだ根強く残っているのか。
本稿では、20年以上大手メーカー現場で試行錯誤を重ねてきた実体験をもとに、現場目線の実践知を交えつつ、薄膜付着密着性の本質と剥離事故の根本対策について深掘りします。
なぜ薄膜の密着不良が起こるのか:原因の本質を見抜く
薄膜プロセスの基本と密着メカニズム
薄膜プロセスには、PVD(物理蒸着法)、CVD(化学蒸着法)、塗布乾燥(ウェットコート)、電着、溶射など多くの手法があります。
これらすべてに共通するのが、“母材と薄膜の界面にいかに強い結合力を作るか”という問いです。
密着力は、主に以下の要素に左右されます。
– 表面粗さの適正化と清浄度
– 薄膜材料と母材の化学的相性
– 湿度・温度など環境要因
– 表面活性化(プラズマ処理やブラスト処理など)
現場では「とりあえず脱脂」「規定の研磨」など、ルーティン作業で済ませがちな前処理ですが、「なぜこの工程をやるのか」「どこまでやれば本当に効果が出るのか」といった深掘りが、密着不良の未然防止には不可欠です。
剥離トラブルの火種―現場あるある
ではなぜ密着不良や剥離トラブルが起きてしまうのでしょうか。
その主な“火種”は以下です。
・現場の属人的運用(前処理や塗布管理が作業者に依存)
・装置パラメーターの再現性低下(経年劣化や微妙なセッティングずれ)
・作業記録/ロット管理の不徹底
・母材サプライヤーの変更やロットばらつき
・技術伝承の断絶(ベテラン退職と属人ノウハウ喪失)
これらは“アナログ体質”と言われがちですが、実はデジタル化や自動化を進めても一朝一夕で解消できるわけではありません。
むしろ管理項目やデータが増えるほど、「調査の迷宮」に迷い込み現象と本質の切り分けが難しくなるケースすらあります。
業界動向:なぜ今「密着性」の再注目が集まるのか
高性能化・軽量化の波と品質リスク
近年、EV/半導体/医療機器といったハイテク産業で「軽薄短小」と「高信頼性」が両立要求されるようになりました。
たとえばバッテリーパックの導電性テープや、多層プリント基板、高機能フィルム分野など。
これらの多層構造製品では、「0.1μm以下の薄膜剥離が致命傷」となるケースも珍しくありません。
このような時代背景もあり、従来なら“許容範囲”だった密着強度不足が、今や「機能不良」「重大事故」へ直結するリスクとして再注目されています。
海外サプライヤー活用と密着品質の管理難化
2020年代以降、部材・加工の海外調達が本格化する中で、現地工場の前処理プロセスや品質管理体制の不透明さが大きな課題となっています。
多品種少量化や短納期対応も拍車をかけ、不具合の早期検知とフィードバックサイクルが回せないまま量産してしまい、後工程で剥離事故が多発……という体験をされた方も多いはずです。
このような状況下、密着性評価手法の“標準化”や“見える化”の重要性がますます高まっています。
現場で進化する密着性改善ノウハウ
“とりあえず”前処理から“なぜやるか”前処理へ
筆者が現場で繰り返し実感してきた最大のポイントは、「前処理の質が密着性を決定する」という事実です。
しかし手順書通りで前処理しても、実際は“バラつき”が避けられません。
たとえば以下のようなラテラルな視点で工程の再設計が求められます。
– 母材表面の油分、手脂がどこまで再付着するか動線を可視化
– パネル1枚ずつの静電気付着リスク・ダストリスクを作業環境要因とセットで分析
– メカニカル前処理(ブラスト)の粒度や衝突角度による密着性変動をデータ化
– プラズマ処理/コロナ処理の有無で粘着テープ試験結果をロット別に定量評価
このような「なぜこれが効くのか」を現場で理屈と実証の両面から見直すことで、属人化を超えた標準化が実現します。
評価の“アナログとデジタル”両輪運用
密着性の検証では、定性的なテープ剥離試験から、プルオフ試験、摩耗試験、界面観察まで多様な評価法があります。
現場ではどうしても人の感覚(はがれやすい/はがれにくい)が幅を持ちがちです。
ここで重要なのは
– デジタルデータ(荷重値/剥離エネルギー)による定量記録
– アナログ観察(割れ方/界面の光沢/反応色)の“現場肌感覚”の記述化
この両輪を組み合わせ、「再現性が高い密着基準」の運用と「想定外剥離の兆候検知」を実現するのが理想です。
密着性向上の工程改善アイデア
筆者が実際に効果を実感した具体的な施策例をご紹介します。
・現場シート、搬送トレイを帯電防止品に切替(ダスト再付着大幅減)
・マスキング工程の再教育+手袋交換頻度を倍加(手脂由来トラブル激減)
・母材LOTごとXPS/SIMSによる表面組成分布の抜取評価(母材ばらつき検証)
・前処理工程で温湿度可視化&固定化治具の自作(作業状態均一化)
このような「現場が自ら気づき・工夫して変える文化」を根付かせることも、密着不良ゼロ活動の大きなカギとなります。
剥離トラブル発生時の実践的な初動対策
発生調査フローの標準化
実際に剥離トラブルが発生した場合、最も危険なのは「急いでリカバリに走ってしまい、原因を見誤る」ことです。
推奨したいのは、以下のような初動フローの型化です。
– どの工程・どのLOT・どの環境で発生したかを棚卸し
– 剥離の界面写真をマクロ~顕微レベルで記録
– 直近変更点(設備・人員・材料・納入ロット)のリストアップ
– 対象品の再現試験(前処理有無違い等)と結果の分解
これを“定点観測”の観点から回すことで、場当たり的対応から脱却できます。
サプライヤー連携でバリューチェーン全体の最適化へ
もしサプライヤー側が密着性評価の考え方や工程管理の重要性を十分に認識できていない場合、単発的な「原因調査」では再発防止になりません。
むしろ、バイヤー側から積極的に現場視察や工程FMEAなどの科学的アプローチを提案し合うことが、本質的改善に繋がります。
また、検査基準/工程パラメーター/教育レベルを「なぜこの水準?」まで深く共有することで、共通言語が生まれ、密着不良が劇的に減った事例もあります。
まとめ:密着性対策で現場が進化する—新たな地平線へ
薄膜付着密着性の強化は、もはや一部の高機能分野だけの話ではありません。
グローバル調達や業界横断での連携が進む現代、「密着性こそが製品ブランドの信頼性・最終価値を左右する」と言っても過言ではありません。
ベテランの勘だけに頼らない。
手順書や規格に“鵜呑み”もせず、「なぜ」「どこまでやれば効くのか」をラテラルに深掘りし続ける。
そして現場が自分たちで“進化”を楽しむ文化が根付けば、昭和から続くアナログ体質も、デジタル時代に向けた“新しい現場力”へと変貌します。
調達バイヤーの皆様、現場オペレーター・管理者のみなさん。
サプライヤーの皆様もぜひ、「密着性」の本質を現場共通テーマとして見直し、より良いものづくりの未来を共に開きましょう。
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