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OEMアウターのデザイン企画で避けるべき非効率な仕様パターン

目次
はじめに:OEMアウターのデザイン企画に潜む非効率の罠
製造業、とりわけアパレル業界におけるOEM(Original Equipment Manufacturer)は、多くの企業が自社ブランドの強化と効率的な商品展開を目的に取り入れています。
しかし、現実の現場では「デザイン志向」と「生産現場の合理性」の間に大きなギャップが生じやすいのが事実です。
特にアウターウェアの開発では、機能性・コスト・納期・品質維持といった要素の他、時に想像力や情熱が裏目に出て非効率を招くことも多くあります。
本記事では、20年以上の製造業経験の現場目線に基づき、OEMアウターのデザイン企画で避けるべき「非効率な仕様パターン」について、実践知と最新トレンド、そして昭和時代から続くアナログ産業特有の落とし穴まで掘り下げて解説します。
バイヤー志向・サプライヤー志向の両面からお届けすることで、実務で役立つ知識と現場力を高めていただければと思います。
OEMアウター企画で生まれる“非効率な仕様”とは
デザイナーの理想と生産現場の現実
アウターのOEM企画では、デザイナーがトレンドやコンセプト重視で仕様を組み立てるケースが多いです。
一方で、縫製や生産工程を熟知した現場担当者から見ると「この仕様では歩留まりが悪くなる」「コストアップの要因になる」「生産リードタイムが想定以上に長くなる」などのリスクが直感的に分かります。
最も典型的な非効率パターンは、サンプル段階でデザイナーと現場が十分に擦り合わせをしないまま「おしゃれ仕様」だけが優先されたケースです。
これにより量産化段階で「このパーツは数が合わない/資材の入手が困難/標準設備で加工できない」などの問題が噴出し、軌道修正のために多大な手間と費用がかかるという流れが頻発します。
現場を混乱させる代表的な非効率仕様パターン
1.不合理なパーツ選定(例:特殊なボタン・逆開ファスナー・通常設備で扱えない金属パーツの多用)
2.縫製負担を無視した複雑な切替や立体パターンの多用(例:やたらとパーツ点数が多い・曲線縫製の多用など)
3.生産工程を意識しない装飾(例:1着ごとに手作業が発生する刺繍・ワッペン貼付)
4.サプライチェーンのリードタイムや季節商材のスケジューリング軽視(秋冬物なのに夏場に主要副資材が未確定など)
これらは一見すると独創性やブランド性を高めるために良いことのように見えますが、現場レベルでは大幅な効率低下やロス率の増加、品質不良率の上昇に直結します。
そしてバイヤーとサプライヤーの信頼関係にもヒビが入りやすくなります。
昭和アナログ体質から抜け出せない業界構造の課題
アパレルOEM業界の特徴的な課題は、いまだ昭和のやり方が根強く残っている“決断の遅さ”と“現場知識の分断”にあります。
会議主義やFAX発注、曖昧な仕様伝達、責任の所在が希薄な体制は、今でも多くの中小OEM企業で常態化しています。
この文化が非効率仕様パターンの温床となり、「現場担当に本音を言わせない雰囲気」や「後戻り修正を前提とした甘さ」が蔓延っているのです。
デジタル化や現場DXで解決すべきポイント
・CAD/CAMによるパターンデータ共有の標準化
・WEB会議でのサンプルレビュー
・進捗・課題・工程設計の可視化(プロジェクト管理ツール活用)
・早期のサプライチェーン巻き込みと情報共有システムの導入
こうしたデジタル化が進まない→アナログ非効率→仕様エラーに気づきにくい→結局COQ(Quality Cost of Outsourcing:外部化コスト)が高騰するといった悪循環に陥っています。
現実的な“効率化仕様”の考え方 〜バイヤー・サプライヤーの両立〜
OEMアウターで“避けるべき非効率仕様”が分かったとしても、ただ「標準品だけ作りましょう」では企画の意味がありません。
では、どのようにデザイン性と生産現場の効率化を両立させるべきでしょうか。
(1)標準化パーツの活用に創造性を持ち込む
例えば、既存の金型や調達可能なパーツバリエーションを理解し、その中で最大限クリエイティブな発想をすることが大切です。
「このボタンは既存ラインで特注色を乗せるだけでもブランドらしさを出せる」
「標準ファスナーでもピッチ変更とリボン色で十分な個性付けができる」
など、コストと納期・品質維持を犠牲にしなくても、バイヤー・サプライヤー・デザイナーのアイデア次第で特色を出すことは十分可能です。
(2)初期段階からの現場巻き込み
一人のデザイナーに任せきりにせず、初期デザイン段階から生産担当・資材調達担当・品質管理担当など、職能横断で仕様チェックを実施するべきです。
その際、現場からの「コストが1.2倍かかる」「現行ラインでは月間◯着しか作れない」などのデータを明確に提示し、企画側に現実的な判断材料を持たせることが効率化につながります。
(3)バイヤー視点の“数字”とサプライヤー現場の“手間”を両方可視化
「デザイン優先で利益が出ていない!」「今月も協力工場の残業が膨らんでいる」といった現場の課題は、最終的にブランド信用を損ない、市場競争力を失う原因にもなります。
バイヤー志望の方はロス率・工数見積もり・不良率・納期遵守率といった指標をセットで見積り評価する習慣を身につけましょう。
逆にサプライヤー側は、「できない」ではなく「この規格なら◯着までなら対応可」「代替提案なら納期短縮も可能」といった前向きな説明を積極的に行うべきです。
非効率を回避するための“現場主導型PDCA”の具体例
OEMアウターの企画生産には、納期・品質・コストのバランスを取るための独自のPDCAが求められます。
【Plan】…工場との共創による“仕様会議”の早期設定
仕様決定フェーズでは、デザイナー・バイヤー・サプライヤー・製造現場・資材調達・品質管理の6者を巻き込んだ迅速な会議体を作りましょう。
最悪のパターンは“机上決定→現場丸投げ”です。
むしろ、現場の冗談や無駄話の中に「そう言えば、このファスナーは前も納期遅延したよね」といった重要なインサイトが眠っています。
【Do】…サンプルレビューでの“現物照合”を重視
2Dスケッチや仕様書だけではなく、サンプルで仕上がりを確認し、縫製現場の職人や熟練オペレーターの目線で「作業負荷」「歩留まり」「品質安定性」の観点からダメ出しを行いましょう。
特に、量産前サンプルのレビュー会議では“非効率の芽”を徹底的に摘み取る姿勢が重要です。
【Check】…仕様トラブルの見える化と情報共有
納期遅延・増産困難・再現性不良が起きた場合には、必ず仕様書・工程表・実際の現品を照らし合わせて、不具合要因を特定します。
このプロセスで得られるナレッジを、設計・開発チーム全体で共有し“属人化”を防ぐこともOEM成功の秘訣です。
【Action】…“次の商談”に必ずフィードバック
失敗や課題の履歴を次の企画やサプライヤー選定時に生かすために、「改善カルテ」を残します。
これにより、非効率仕様の再発防止やバイヤー主導・サプライヤー主導の双方におけるレベルアップにつなげます。
まとめ:OEMアウター企画の成功は“地に足がついた共創”から生まれる
OEMアウターにおける非効率な仕様パターンは、単なる現場の手間やコスト増だけではなく、ブランドの競争力そのものを揺るがしかねない深刻な問題です。
アナログな業界体質が根強く残る今だからこそ、現場知×数値感覚×現実的クリエイティブが求められます。
製造業の現場力を生かし、バイヤー志向・サプライヤー志向の両面から知恵を出し合えば、必ず効率化とブランド価値の両立は達成できます。
これからOEMに取り組む方、すでにアウター企画に関わる方は、現場のリアルな声とデータを大切にしながら、新たな価値を生み出す“共創型イノベーション”をぜひ目指してください。
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