投稿日:2025年6月30日

不良品を出さない検査技術と品質管理設計審査工程設計への応用

はじめに

製造業の現場において「不良品を出さない」ことは、経営の根幹にかかわる重大なテーマです。

不良品が発生すれば、納期遅延やコスト増加、顧客からの信頼失墜といった多大な損失が発生します。

一方で、長年にわたり昭和のアナログな管理手法が根付いている現場も多く、最新技術の導入や製品設計・工程設計段階での「品質づくり」が十分に実践されていないケースも散見されます。

本記事では、現場目線で不良品を未然に防ぐための検査技術や、製品設計・工程設計段階で活用できる品質管理・設計審査について、実践的なノウハウと最新動向を織り交ぜてご紹介します。

これからバイヤーを目指す方や、サプライヤーがバイヤーの求めている品質の本質を把握するための手がかりとしてもぜひ活用してください。

不良品をゼロに近づけるための現場検査技術の進化

1. 検査の目的と現場の実態

検査は、製造工程で発生する不良品を最終的に選別するためだけのものではありません。

本来は工程内の「異常」を早期に発見し、不良の流出を止める現場のセーフティネットとして存在しています。

しかし、昭和期から続くアナログな現場では「目視検査」に頼る傾向が根強いです。

標準書や作業指示書が形骸化しており、検査員の暗黙知や経験値に依存した状態から脱却できていない工場も少なくありません。

このため、検査精度のバラツキや、ヒューマンエラーによる見逃しが発生しやすい現状があります。

現代の製造業では「ムダな検査を減らしつつ、異常を確実に検出する」ことが品質・コスト両面で強く求められています。

2. デジタル技術が変える検査手法

最近のトレンドとして、AIや画像認識技術、自動光学検査(AOI)、センサーデータを活用した自動検査の導入がすすんでいます。

例えば、下記のような具体例が挙げられます。

  • 画像処理による不良品選別(微細なキズ、変色、寸法不良の自動判定)
  • 組立工程でのトルクチェックや挿入深さセンサーによる自動合否判定
  • 音響検査や振動、電気特性モニタリングによる異常検知

これらの自動化技術は、検査工数の削減・抜け漏れの撲滅だけでなく、データ蓄積による「不良発生要因の追跡・分析力向上」でも大きな効果を発揮します。

現場の作業者が、ノギスやマイクロメータを持って一つひとつ確認していた工程は、AIやIoTによる自動モニタリングでカバー可能な時代に変化しつつあります。

3. 検査技術の進化が現場にもたらすもの

自動化した検査技術の導入で、現場担当者の役割も変わります。

従来「作業」の延長線にあった検査員の仕事が、今後は不良傾向のモニタリングや異常値発見時のフィードバック、予測メンテナンス・設備改善提案といった「考える」業務が主軸となります。

この変革を実現するためには、現場担当者自身が「なぜこの検査が必要か」「どんな不良につながりやすいか」という本質的な知識を身につけておく必要があります。

不良品を作らないための「予防的検査」、現場改善につなげる「データに基づいた行動」が、生産現場の付加価値を大きく向上させます。

工程設計と品質管理:根本的な「不良ゼロ」体質をつくるために

1. 品質は設計で作り込む時代

昭和の現場では、生産現場での「検査」と「手直し」で品質を確保する文化が根強く、多くのリソースが後工程での修正やリカバリーに割かれていました。

しかし競争環境が激化し、QCD(品質・コスト・納期)の最適解が求められる現代では、後工程での検査と修正では間に合いません。

不良品ゼロの現場を実現するためには、製品設計や工程設計段階から「作りやすさ」「間違いにくさ」「工程内での品質確認のしやすさ」を実現する設計力が必須です。

この考え方は、「Quality is built in, not inspected in(品質は検査で作るものではなく、設計で作り込むもの)」というものです。

2. 設計段階で活用される品質管理手法

設計審査(DR:Design Review)、FMEA(故障モード影響解析)、工程能力分析といった手法は、昭和から今に至る全ての製造業で生き続けており、さらに進化し続けています。

  • 設計審査(DR):各開発段階で関係部門が集まり、「不良が出る設計仕様になっていないか」「製造工程で不具合が発生しないか」「作業者にとって誤作業・ミスの起こりにくい設計か」など、多面的に設計案を評価します。
  • FMEA:設計段階で想定される全ての故障モード(不良のパターン)を洗い出し、それぞれの発生頻度・影響度・検出のしやすさを数値化した上で、重大なリスクに対して事前対策(設計変更やチェックポイント追加)を講じます。
  • 工程能力分析:実際の製造工程で安定して「いいもの」が作れるか、ばらつきを事前に評価し、設備条件や使用部品の許容範囲を最適化します。

こうした手法が現場に「根付いている」企業は、現代でも強い競争力を維持しています。

逆に、設計がわりきらず「現場で頑張ればなんとかなる」という思考に頼る企業ほど、不良品再発リスク・現場工程の負荷増加・コスト高止まりという課題に苦しんでいます。

3. 設計品質が購買(バイヤー)&サプライヤー関係に与える影響

バイヤーの立場では、「サプライヤーがどこまで設計品質・工程品質にコミットしているか」を極めて重要視しています。

近年は「部品単体の合否」ではなく、「製品として最終工程まで合格できる設計・工程を持っているか」のチェックが活発です。

サプライヤー側も単に「スペック通りの納品」だけを目指すのではなく、「設計段階からのDR参加」「FMEA・工程分析を用いたリスク低減の提案」など、より上流からの取り組みが要求されています。

これは、設計品質の作り込み力が直接、サプライヤーの信頼・取引拡大・利益率向上につながる“新時代の競争力”を意味しています。

現場で活かす!「昭和の知恵」+「デジタルの力」=最強の品質体質

1. 昭和の現場力を捨てない

何でもかんでもデジタル化・AI化だけが正解というわけではありません。

実際に、現場では“ベテランの勘”や“長年の手の感触”が重要な意味を持っているケースも数多く存在します。

たとえば、成形品の寸法変化や機械加工時の「チャタリング音」など、現場感覚が「異変」を気付くきっかけになることも珍しくありません。

昭和時代の現場力(不良の兆候を感じ取る目、話し合いの文化、職場の連帯感)は、今も貴重な品質確保の土壌です。

2. アナログとデジタルの融合が競争力を生む

最先端の技術と、現場に根付いた知恵・コミュニケーションを組み合わせることが、真の「不良ゼロ」体質につながります。

例えば、以下のような取り組みです。

  • 現場のベテラン作業者による「不良兆候リスト」をデジタル化し、AIシステムと連携させて予兆検知につなげる。
  • 現場パトロールやカイゼン提案活動を、IoT現場データ・写真や動画を添付したレポートとしてクラウド共有。
  • 工程内での異常発生時に、すぐに設計・品質管理部門とオンライン会議を実施し、「その場で設計図面修正・標準書改訂につなげる」スピード重視の意思決定体制。

昭和から続く「人の目・手・会話」と、最新の「データ、AI、IoT」をそれぞれ長所を活かして融合すること。

それこそが“アナログ業界”の弱点脱却=「新しい製造業」の道筋です。

まとめ:品質管理・設計審査を武器に変革の波に乗ろう

不良品を出さないためには、単なる現場の検査強化だけでなく、設計審査・工程設計の段階から品質を練り込み、現場からのフィードバックを活かした改善サイクルを回すことが重要です。

まだアナログな管理が主流の工場でも、できるところからデジタル技術を取り入れていくことで、新しい品質管理・検査の形が実現できます。

製造業に携わるすべての方が「バイヤーの視点」「サプライヤーの提案力」「現場の改善意識」「設計~現場のシームレスな連携」を持ち寄ることで、不良ゼロ・信頼度の高いものづくりが実現できるでしょう。

その第一歩として、自分の現場・設計・品質管理を“ラテラルシンキング(水平思考)”で見つめ直し、次の時代の価値創造・現場進化へぜひチャレンジしてください。

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