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購買部門が学ぶべき日本式原価企画と国際調達への応用法

目次
はじめに:製造業バイヤーに求められる知識の転換期
製造業に携わる皆さん、調達購買の現場で「価格を下げれば良い」「納期通りに仕入れることが最優先」だけがバイヤーの役割と思われていませんか。
実は今、グローバル競争やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展で、バイヤーの役割やスキルにも大きな変革が求められています。
本記事では、昭和の時代から根強く残る「日本式原価企画(げんかきかく)」のノウハウを現代の国際調達にどう活かすか。
現場の実体験や、最新トレンドも交えながら、具体的な方法と実践ポイントを解説します。
日本式原価企画とは何か? 〜現場目線で見つめ直す〜
原価企画の基礎:製品の価格を決める根幹思想
日本の製造業、特に自動車や電機業界では「原価企画」が長らくものづくりの中心にありました。
これは「市場が求める製品仕様と販売価格」から、逆算して原価目標を設定するプロセスです。
従来の「コスト集計型」とは逆で、最初から『この価格でなければ市場に受け入れられない』という強い意志が現場で共有されるのが特徴です。
設計、生産、サプライチェーンが一丸となり、原価低減のアイデアを徹底的に絞り出していきます。
その実践は時に厳しく、無茶振りと思われることも多いですが、現場にとっては創意工夫を磨く貴重な機会とも言えるのです。
原価企画のプロセスと購買部門の役割
原価企画を実現するためには、開発初期段階から「購買部門」が関与することが不可欠です。
一般的な流れは次の通りです。
・市場調査・目標原価の設定
・設計/開発段階でのコスト案の検討
・調達先サプライヤーとのコストすり合わせ
・生産準備段階での原価管理と改善案実行
特にこのプロセスで購買バイヤーが担うのは「サプライヤーとのコストダウン交渉」だけではありません。
サプライヤーの技術や設備、生産スキルまで深く理解し、「どうすれば作業が楽になり、ムダが省けるか」「工程を短縮できるか」といった現場改善提案も求められます。
これが昭和時代から根強く残る、日本独自の“ものづくり文化”です。
なぜ今、日本式原価企画が再評価されているのか
グローバル調達の課題と国内回帰のトレンド
近年、グローバル購買の現場では多くの課題が可視化されてきました。
例えば、
・調達先サプライヤーの突然の倒産や納期遅延
・地政学リスクや為替変動による調達コストの乱高下
・コロナ禍や半導体不足問題によるサプライチェーンの混乱
こうした不確実性に対応するため、日本企業のなかでは再び「現場主導型の原価企画」の重要性がクローズアップされています。
サプライヤーと現場レベルで密接にコミュニケーションを取り、“モノ”と“工程”の改善を地に足をつけて実践する、昭和発祥のアナログ的手法が時代を超えて見直されているのです。
最新技術では解決できない「現場力」の価値
クラウド調達、AIによるコスト予測、ビッグデータ活用…これらも素晴らしい技術進化ですが、製造現場には“現場でしか分からない”、アナログな発見や改善余地が無数にあります。
「現場をよく観察し、ほんの少しの手作業やレイアウトを変えるだけで大幅なコストダウンになる」
こうした気付きこそが真の原価低減であり、サプライヤーとも“長期的な信頼関係”を結ぶ礎になるのです。
日本式原価企画をグローバル調達に応用する具体的手法
1. サプライヤー共同による原価改善活動(コストテーブル方式)
グローバルな取引先でも、日本式の「コストテーブル方式」は有効です。
サプライヤーと一緒に、原材料費・加工費・間接費・物流費など全要素をテーブル形式で見える化します。
双方で数値を共有して、1つずつ「なぜ?」「どうやったら減らせる?」を議論するのです。
この地道な作業を数回繰り返すだけで、「工場の工程を入れ替えるだけ」「部品レイアウトを調整するだけ」で大きな効果を得られることは多いです。
これが“机上の空論”でない、「現場基点」のグローバル調達力です。
2. 海外サプライヤーへの“現場改善”トレーニングの導入
日本式原価企画をそのまま海外サプライヤーに求めても、文化や商習慣の違いから最初は戸惑われがちです。
ここで有効なのが、購買部門がリーダーシップを取り、Kaizen(カイゼン)研修や現場ワークショップを現地工場で実施する方法です。
日本人バイヤーが現地に入り、生産ラインを一緒に歩き、「ここをこうしたら良くなる・コストが下がる・品質が上がる」と目線を合わせて伝えていきます。
1回や2回で劇的に変化するものではありませんが、中長期的に継続することで「現場で考え改善しながらものづくりしていく」文化が浸透し、最終的には国を超えた信頼関係とコスト競争力が生まれます。
3. “アナログ×デジタル”のハイブリッド活用
今後重要なのは、アナログな原価企画とデジタル技術(AI分析、IoT、原価シミュレーター等)をハイブリッドで活用することです。
例えば、原価構成をAIで可視化し異常値を抽出したうえで、購買バイヤーが実際のサプライヤー現場に入り“現物”を確認します。
この「現場」「現物」「現実」を重視する“三現主義”は日本の工場で根付いてきた原価企画のDNAであり、グローバル拠点にも応用できる普遍的な原則です。
時代を超える原価企画バイヤーの実践マインド
“人間味”と“数字”の両立が強いバイヤーを育てる
強いバイヤーは「コストを叩いて安く買えた」だけではありません。
現場の職人やサプライヤーと真正面からやりとりし、「なぜ今この原材料を使っているのか?」「古い装置でも工夫できるポイントはあるか?」と一緒に悩み、アイデアを育てる。
そして変化を恐れず、現場の知恵を数字に落とし込み、確実に改善するPDCA(計画・実行・評価・改善)を回せるバイヤーこそ、昭和から令和、そして世界に通用する“日本式バイヤー”です。
業界風土を“昭和型の情熱”で再構築する意義
アナログな改善活動や、現場に入り込んだ対話・観察力はいまも日本の製造業現場に強く根付いています。
無機的なシステムやデジタル化が進んでも、最後は“人と人のつながり”と“地べたを這う現場力”が調達・購買力を底上げします。
-古くて新しい“昭和型情熱”の再発見
-厳しい意見交換を経て得られる信頼関係
-一歩一歩、改善活動を積み重ねていく現場主義
これこそ、世界のどこに行っても揺るぎない製造業の強みです。
まとめ:現場目線×世界目線を持つバイヤーへ
日本式原価企画の精神と実践ノウハウは、単なる「コストカットのための古い手法」ではありません。
グローバル化・不確実性の時代だからこそ、「地道な積み上げ」「現場を大切にする姿勢」が再評価されているのです。
これから購買部門を志す方、現役バイヤーの方、さらにはサプライヤーとしてバイヤーの視点を学びたい方々は、ぜひ一度“現場の空気”を感じ、共に知恵を絞り合ってみてください。
世界に通用するバイヤーとは、「現場と数字」「デジタルとアナログ」その両輪をバランス良く回し続ける、“融和型バイヤー”なのです。
その道のりは決して平坦ではありませんが、必ずや日本の製造業の未来と世界の発展に貢献できると、私は現場経験を通じて強く確信しています。
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