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日本製品輸入の物流効率を高める共同配送スキームの活用

目次
はじめに:日本製品輸入と物流効率化の必要性
日本の製造業製品は、世界各国から高い信頼を得ており、その品質や技術力は国際競争力の大きな源泉になっています。
しかしながら、グローバルなサプライチェーンが複雑化するなかで、物流コストの増大や環境対策、納期対応力の強化といった課題が浮き彫りになっています。
特に近年は、地政学リスクの高まりやパンデミックによる輸送網の混乱、デジタル化の波などを背景に、「いかに効率よく、かつ安定的に日本製品を世界へ届けるか」という物流戦略の見直しが求められています。
そのような状況のなかで注目されているのが、共同配送スキームの活用です。
“昭和的”なピース配送や小ロット多頻度輸送からの脱却、そして業界横断を見据えた競争力強化。
これらを実現するための現場目線のヒントや実践例を、業界の最前線から考えていきます。
共同配送スキームとは何か
共同配送スキームの基本概念
共同配送スキームとは、複数の荷主が同一の輸送・配送ルートを共有し、まとめて物流サービスを利用する仕組みです。
例えば、異なるメーカーが同一の海外バイヤーやサプライヤー、または消費者へ製品を届ける際、それぞれが個別に物流手配するのではなく、ひとつのトラックやコンテナに相乗りして運ぶイメージです。
この考え方自体は新しいものではありません。
それでも、多くの日本製造業では「自社ルール優先」「ノウハウの囲い込み」「旧態依然のオペレーション」など、アナログな業界習慣が根強く残り、なかなか広く普及してこなかった背景があります。
近年注目される理由
近年、共同配送スキームがにわかに脚光を浴びるようになった理由は以下のような変化があるからです。
– SDGsやESG投資といった社会的責任経営の高まり(CO2削減や省エネルギーなど)
– 慢性的なトラック運転手・倉庫人材の不足(2024年問題)
– デジタル化・IoT技術による輸送情報の可視化
– バイヤーやサプライヤーによるリードタイム短縮・コスト低減要望の強化
これらの背景を受け、「競合他社とも手を結ぶ」「情報を共有する」というダイナミックなマインドセットの転換が起きつつあります。
共同配送導入による効果
物流コストの低減
共同配送最大のメリットは、やはり物流コストの削減です。
個別配送では「空車率(積載効率の低さ)」「途中積替え・待ち時間の発生」などがボトルネックとなっていました。
しかし、複数社で配送ルート・スケジュールを調整し、混載便を使うことでトラック1台当たりの積載量アップが可能になります。
また、パレット単位やロット単位でのまとめ発送ができれば、梱包資材の削減や一時保管スペースの省力化にも寄与します。
環境負荷の軽減
環境経営が叫ばれる現代において、サステナビリティへの貢献は重要なファクターです。
共同配送は空車率の低下=無駄な輸送回数・距離の削減に直結し、CO2排出量の抑制、さらに過剰な在庫の抑止にもつながります。
これは、取引先やエンドユーザーからの評価向上のみならず、サプライチェーン全体の信頼向上にも大きく寄与します。
配送リードタイム短縮と安定化
“ギリギリジャストインタイム”や“小口多頻度配送”では、天候や交通事情、オペレーションの属人化リスクなど納期不安がつきものです。
一方、共同配送の仕組みでは、計画的かつ定期的なルート設定が可能となり、不測の事態にも柔軟に対応できる余地が生まれます。
また、配送パターンの標準化や属人化リスクの低減は、全体の“現場安定化”にもつながります。
共同配送実践の現場的ポイント
組織内外の意識改革が出発点
古い体質が根強く残る製造業においては、「他社と組む」「自社情報を開示する」ことへの抵抗が大きいのも事実です。
しかし、“自社内最適”だけでは現場の限界は超えられません。
先進的な現場では、経営層と現場が一体となり、
「なぜ共同配送が必要なのか?」
「会社の将来にどのようなプラスがあるのか?」
をきちんと腹落ちするまで議論します。
調達や購買部門、生産管理、営業、情報システム、さらにはサプライヤー側や販売代理店との意見交換・情報共有を徹底し、“送り手と受け手”双方のメリットを全員で見つけていくプロセスが不可欠です。
データの活用と可視化ツールの導入
以前は、人手や現場勘に頼る部分が多かった物流管理ですが、今やIoTタグやクラウド型の物流プラットフォーム、AIによる需要予測などで「見える化」が急速に進展しています。
複数社の在庫・配送データを一元管理・分析することで、「どのタイミングで混載できるか」「余剰・不足リスクの早期検知」など、新しい調和点を見出すことができます。
特に、原材料や部品など品目単位・ロット単位、生産ラインや案件単位の可視化は、調達担当や現場監督者目線で大きな武器となります。
ルール策定とリーダーシップ
各社の物流スケジュールや荷姿、トレーサビリティの要求レベルが違うことが多いため、現場主導での「新しい共通ルール作成」と、その着実な運用が欠かせません。
– 責任分界点はどこか
– トラブル発生時の一次対応方法
– 混載荷物の識別/管理方法
– 荷崩れ・紛失リスクの共有ルール
組織横断的なプロジェクトチームを作り「やり切る合意形成」と推進力のあるリーダーがカギを握ります。
バイヤー・サプライヤーの立ち位置からみる共同配送活用の真価
バイヤー(調達担当者)の視点
昨今のバイヤーに求められているのは、単なるコストダウンや品質確保だけでなく、サプライチェーン全体“最適化”への貢献姿勢です。
共同配送を提案・導入することで、納期の信頼性向上やトラブル発生時の柔軟な代替輸送の確保、グリーン調達へのPRポイントなど、従来以上の価値提供が可能となります。
また、自社の購買シェアだけでは十分な物量確保が難しい場合でも、業界ネットワーク活用で新たな物流スキームを作る「仕掛人」として主導権を発揮できます。
サプライヤー(供給業者)の視点
サプライヤー側から見ると、共同配送プロジェクトに参加することにより、“競争だけでない新たな協調の場”が拡がります。
– 安定した輸送枠確保による計画生産・納品の実現
– 荷主・バイヤーとの関係性深化(単なる下請けからの脱却)
– 他社の物流ノウハウ・システムを間接的に学べる機会
結果として、受注生産から在庫保有、返品対応などサプライチェーン全体のリスク分散&利益拡大にも寄与します。
昭和的アナログ業界からの脱却 ─ 日本現場のリアルな導入事例
業界横断型コンソーシアムによる混載輸送
ある自動車部品メーカーグループでは、競合他社同士が「物流だけは一緒にしよう」と一念発起し、専任チームを設置。
各社が持ち回りでルートプランを作成し、基幹プラットフォームでリアルタイムに情報を共有。
ドライバーの確保、積み下ろし工程の見直し、集配所の共同運営など“現場でしか分からない”課題の一つ一つを試行錯誤しながら解決し、結果として配送コスト15%削減、CO2排出量20%削減、納期遅延数ほぼゼロという実績を叩き出しました。
卸売業ネットワークを活かした連携配送
異業種混載が成功した例として、工作機械・工具・住宅設備業界など幅広い業種の商社が協業。
一見相容れない荷物同士を、パレットやダンボール区分で「ゾーニング」混載し、同一地区のバイヤー・現場工場へ一括納品。
細かな一時保管ノウハウや搬入フローを工場長クラスから調達担当まで現場主導で見直すことで、運搬効率を最大限に高めています。
今後の製造業物流:共同配送スキームが開く未来
物流の効率化は、製造業にとって避けては通れない課題です。
共同配送スキームを核とした物流改革は、単なるコストや手間の削減にとどまらず、日本ブランドの競争力や持続可能性を押し上げる“大きな成長エンジン”となる可能性を秘めています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)、カーボンニュートラル、パンデミック対策など、時代の変化とともに現場も柔軟にアップグレードされねばなりません。
共同配送は、こうした変革の第一歩として“昭和から令和へ”前進する業界全体の底力を引き出します。
今こそ、サプライチェーンの競争力向上はもちろん、業界の枠を超えたパートナーシップを磨き、新たな地平線へ一歩を踏み出しましょう。
まとめ:現場主義×未来志向の共同配送活用で新時代に挑む
日本製品のさらなるグローバル展開には、物流現場の抜本的な時代進化が鍵を握ります。
共同配送スキームは、調達・購買担当者やバイヤー、サプライヤーにとっても、大きな可能性を持った戦略ツールです。
自社最適から業界全体最適へ。
現場発のアイデアとテクノロジーの融合で、「日本のものづくり」現場を次のステージへ引き上げていきましょう。
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