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投稿日:2025年6月5日

漆技術を活用した高付加価値製品の共同開発方法

はじめに:漆技術の再評価と製造業の新たな可能性

近年、漆技術が再び注目を集めています。
一見すると伝統工芸の範疇に思える漆ですが、実は現代の製造業において「高付加価値」と「他社との差別化」を実現する切り札となり得るのです。
特に、競争が激化し、コモディティ化が進む中で、どうやって希少性や独自性を生み出すかは各社共通の課題です。

そんな中、バイヤーやサプライヤー、製造現場で長年従事する方々が関心を寄せているのが「伝統素材×現代技術」のシナジーです。
本記事では、漆技術を活用し、高付加価値な製品を生み出すための実践的な共同開発の進め方を、現場目線で詳しく解説します。

漆技術とは何か:素材と工程の基礎知識

漆とは、ウルシの木から採れる樹液を精製し、塗料や接着剤として用いる日本伝統の材料です。
乾燥後に硬化し、美しい光沢と高い耐久性・抗菌性を持つことが特徴です。
自動車部品、電子部品、医療機器のコーティングや意匠品など、従来の用途を超えた広範な応用が進んでいます。

製造業の技術者や調達・購買部門の方も、漆の「天然由来」でありながら「耐薬品性」「絶縁性」「微細加工性」といった物性に着目する価値があります。
これらの性質が、新しいビジネスチャンスへと直結するのです。

なぜ今、漆技術なのか?業界動向と付加価値創出のトレンド

漆といえば“伝統工芸”“アナログ”とのイメージが強いですが、実は世界的なESG・SDGs志向の追い風を受け、サステナブル素材や循環型社会実現の文脈での需要が高まっています。

消費者・取引先は今、「安さ」だけでなく、「ストーリー」や「社会的意義」を求めています。
そこで、由緒ある国産伝統素材=漆は、従来の工業素材にはない唯一無二の高付加価値を演出できます。

現場レベルでは、過度なアナログ作業に固執しすぎ失敗した例もありますが、生産工程の一部だけ、または表面処理・デザイン強化などアクセント的に漆技術を“デジタル・IoT技術”と融合させて導入すると、驚くほどの価値創出につながります。
これが、昭和的アナログ業界がジリ貧から脱却する突破口と言えるのです。

共同開発を成功させるためのポイント

1. 目的の明確化とプロジェクト設計

まず重要なのは、なぜ漆を使いたいのか、どんなユーザーニーズや市場性があるのかを明確にすることです。
「デザイン性」「耐久性」「サステナビリティ」「独自性」いずれに重きを置くかで、最適な工程やコストバランスは大きく変わります。

共同開発の場合、単に「良い材料だから」と安易に組み合わせても、現場負担やコストインパクトが大きすぎて頓挫するリスクがあります。
上流(企画・設計)から下流(量産・品質管理)までの流れと責任範囲を明確にしたプロジェクト設計が不可欠です。

2. パートナー選定:伝統技術×現代工場の融合

伝統的な漆職人や地方工房と、最先端設備を持つ工場は馴染みが薄いかもしれません。
しかし、相互理解を深めることで、斬新かつ実現性の高い新製品が生まれます。

例えば、サプライヤー側が「漆は扱いにくい」「歩留まりが悪い」という先入観を持つ場合、バイヤーが工程ごとのリスク・ポイントを分解して共有することが重要です。
現場でよくあるミスや改善事例を持ち寄ることで、お互いのノウハウが蓄積され、信頼関係が強化されます。

3. アナログ工程の“見える化”と標準化の工夫

現実には、「漆技術は職人の手作業・カンコツ」とされていますが、どの工程が手加工で、どこまでが自動化・省力化可能なのかを細かく切り分けていくことが大切です。
たとえば、塗布作業や乾燥工程をIoTのセンサーと連動させるシステム化、ROBOTハンドによる塗装操縦ノウハウの融合などが考えられます。

ここで大切なのは、現場のリアルな定量データ(温湿度、作業時間、異常発生パターンなど)を集め、「勘」から「見える化」へと転換することです。
これにより、バイヤーが「次の発注」や「需要増加時の拡張」を安心して任せられる体制が整います。

現場目線での課題とその乗り越え方

アンチ・デジタル文化&現場の抵抗感

昭和型の現場では、AIやIoTを忌避する風潮が根強くあります。
「伝統技術の魂が失われる」「機械化は品質劣化に繋がる」との議論も無視できません。

ここで大切なのは、現場リーダーが小さな成功事例(たとえば「品質バラつきが20%減少」「1人当たり生産性15%向上」など)を可視化し、積極的に現場発で発信していくことです。
そうすることで、現場全体のマインドセットが「変化=脅威」から「変化=成長」へ転換しやすくなります。

小ロット・多品種対応に潜むメリット

伝統工芸の漆技術は一般に「大量生産には不向き」とされがちです。
しかし、現代市場では「一点モノ」や「限定モデル」「BtoB受注生産」「高単価ギフト需要」が拡大しています。
多品種・短納期・付加価値型の製販一体運営を志向する企業にとっては、むしろ漆技術の小回りの良さが競争力になります。

大手メーカーでの経験から言えば、漆を量産工程に組み込む際は、「多品種短納期のセル生産化」を設計段階で取り入れ、工程管理のノウハウをデジタルで蓄積するのが理想的です。

バイヤーとサプライヤー双方に求められる視点

バイヤーとして意識すべきこと

単なる価格競争に終始せず、「なぜ今、漆なのか」「自社製品のどの価値軸が向上するのか」を論理的に説明できることが重要です。
また調達・購買現場では、コストだけを見るのではなく、「ブランド価値」「新市場開拓力」「素材ストーリーによるPR効果」といったスキルをバイヤーが身につければ、社内外に強い影響力を持てます。
提案型購買の考え方が必要です。

サプライヤー側の戦略

サプライヤーは、「ウチの技術は手作りで古くさい」と思い込まず、「現代技術と組み合わせるとどんな革新ができるか?」を顧客(バイヤー)目線で整理し、提案することが新しい市場開拓につながります。

また、現場作業者がバイヤーや設計者の悩み(「工程負担を軽減したい」「品質変動を減らしたい」等)を知ることで、よりニーズに合わせたイノベーションが可能となります。

高付加価値製品開発の最新事例

例えば、ある自動車メーカーは、「漆塗り+電子基板コーティング」を共同開発し、従来比2倍の耐食性とデザイン性を両立させました。
また家電メーカーでは、天然漆をボディデザインの一部に採用し、素材由来の“唯一無二の風合い”を訴求、百貨店や海外市場でブランドイメージアップに成功しています。

これらの事例に共通するのは、「データ管理」「品質保証」「現場教育」の3点セットです。
伝統技術に新しい工場管理手法(IoT、ビッグデータ活用など)を組み合わせることで、本当に“売れる”高付加価値製品が誕生しています。

まとめ:漆技術とラテラルシンキングが生む新たな地平線

漆技術のような伝統素材を、現代ものづくり現場で実用的に使いこなすには、従来の発想を超えたラテラルシンキングが不可欠です。
「古いものは古いまま」では終わらず、時代と現場のリアルを見極めながら、“デジタル時代の共創モデル”を築くのがこれからの競争力になります。

バイヤーもサプライヤーも、「伝統×現代」「アナログ×デジタル」という対立構図を越えて、市場に新たな価値を投げかけることができます。
ぜひ、身近なテーマから小さなイノベーションを現場ファーストで積みあげ、世界に誇れる高付加価値の日本製品を生み出しましょう。

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