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投稿日:2025年7月3日

軸受選定の重要特性と使用上の不具合防止トラブル対策

はじめに:軸受が製造業の未来を左右する理由

軸受、すなわちベアリングは、製造業の現場では日常的に目にする部品です。
小さなパーツと侮ることなかれ、精密機器から大型設備まで、その安定稼働を支える縁の下の力持ちです。
軸受の選定や管理を疎かにすると、致命的な生産トラブルや想定外のコスト増加を招く場合も少なくありません。
今回は、長年の現場経験で培った実践知と、アナログ志向の業界が抱える課題もうまく織り交ぜて、今あらためて現場で役立つ軸受選定・運用の極意をご紹介します。

軸受の役割と選定がもたらす生産現場への影響

軸受は「止まらない現場」をつくる要の部品

軸受は機械の回転部・摺動部の摩擦を低減し、その機械寿命を大きく左右します。
適正な軸受選定と適切なメンテナンスを怠ると、ライン停止や製品不良などの重大トラブルにつながり、「現場が止まる」、現場が危機的状況に陥るのです。

現場でよくある失敗事例

例えば、国産機械から輸入装置への軸受流用。
あるいはカタログの「最大許容荷重」だけを見て選んでしまい、現場負荷や潤滑条件を見落とす……。
または、急ぎで手配した結果「安いもの・早いもの」で済まし、後で痛い目に遭う――。
現場でこうした失敗は決して珍しくありません。

特に日本の製造業界は、昔ながらの経験則や勘所を大事にしつつも、なかなか設計標準やDX的な情報連携が進まない「昭和の空気」が根強く残る現場も多いです。
だからこそ確かな知見と標準化が現場競争力の肝となります。

軸受選定で絶対に押さえておきたい重要特性

1. 基本定格荷重・寿命

定格荷重(ラジアル・アキシャルそれぞれ)は、軸受の「耐久力」を表す最重要指標です。
設計段階で荷重条件を正確に読み取り、静荷重・動荷重だけでなく、「衝撃荷重」「一時的なピーク」などの実運用リスクも必ず見積もりましょう。

近年はIoTによるモニタリングも普及しはじめ、「荷重履歴の分析」や「稼働パターンの可視化」がより重要になっています。

2. 回転速度・精度

高速回転用途の場合、グリースの飛散や発熱、精度保持の観点で専用の高精度・高速型ベアリング選定が不可欠です。
軸受精度(等級)は、JISやISO規格で明確に規定されており、具体的な回転速度・振れ・騒音値の要求仕様と突き合わせたうえで、適合するものを選ぶことが肝心です。

3. 使用温度・使用環境

高温環境では、グリースの耐熱性、軸受自体の材料(標準はSUJ2、特注品で高Cr鋼やセラミックス)やケージ素材(鉄・樹脂・真鍮など)、シールの材質なども検討ポイントとなります。
また、水分やダスト環境では、シールド・シールタイプの選定や、ステンレスシリーズを検討することがベターです。

4. グリース/潤滑方式

長期無給油が求められる場合、封入グリースや固体潤滑材入りベアリングを選ぶことも1つの施策です。
また、現場によっては「自動給油装置」と併用して故障リスクを軽減している例も増えています。

5. サイズ・取付け性・メンテナンス性

交換サイクルが短い現場では、取付け部周囲のスペース・分解容易性も重要ポイントです。
また、「勝手に置き換え品」や流用品が蔓延しやすい現場では、型式管理と標準化の徹底も設計段階から盛り込んでおくべきです。

軸受トラブルの発生要因と、現場でできる防止対策

現場の「三大トラブル」パターン

主な軸受トラブルは「転動体やレースの損傷」「異音・振動の発生」「焼き付き・潤滑不良」に集約されます。

具体的な要因は以下の通りです。

  • 荷重オーバー・偏荷重
  • 芯ズレ・取り付け不良
  • 不足潤滑・異物混入
  • 寿命超過・使用限界越え

現場の本音としては、納期や稼働優先のため、定期交換周期を無意識に超過して使用し続けるケースや、応急修理で済ました箇所の再発事故も多発します。

ヒューマンエラー・情報伝達の壁が不良再発の温床

昭和時代から引き継がれてきたアナログ現場では、「見て覚える」「積み上げてきたノウハウの口伝」「属人化した作業」が根強く残ります。
そのため劣化予兆の記録やフィードバックが体系化しにくく、なぜか「同じ場所ばかり壊れる」「誰も原因が分からない」といった不具合が繰り返されやすい傾向があります。

不具合を未然に防ぐための現場実践対策

1. 設計段階の情報徹底共有と標準化

メーカーが公表しているカタログ表記やWebでのスペック公開情報だけでなく、「現場の生の稼働データ」や「実際の不良・停止事例」を設計・調達・現場運用側が随時共有できる仕組みを作ることが不可欠です。

また、軸受ごとにQRコード管理やトレーサビリティ強化・現物写真添付・選定理由の記録など、誰でも分かる管理体制を推し進めるべきです。

2. 職場での教育・点検ルーティン化

ベテラン社員の経験則や感覚値を形式知として可視化し、点検・交換基準などに落とし込む努力が重要です。
定期的な軸受点検会議や、取付講習会(メーカー主催セミナーなど)を組み込む現場も増えています。
また、IoTセンサー(温度・振動・回転数モニタリング)を活用し、早期異常検知や予兆保全体制の導入も積極的に進めましょう。

3. 取引先サプライヤーとの連携強化

価格のみに目が行ってしまうと、短期的コストダウンは実現しても、長期的には故障増・品質低下を招く場合があります。
信頼できるサプライヤーと連携し、「不良解析レポート」や「技術派遣」などのサービスも積極活用しながら、PDCAサイクルを回すことが双方向のメリットを生みます。

また、調達購買の現場では、軸受サプライヤーとの協力で「現場環境ヒアリング」や「現場でのテスト検証」をおこない、最適仕様を一緒に探す姿勢もこれからの標準となります。

バイヤー/サプライヤーの双方に求められるマインドセットの変革

バイヤー(調達担当)が意識したいポイント

  • 単なる「コスト」ではなく、生産安定性・部品寿命・メンテ工数といった「全体最適」の視点で比較・交渉する
  • 現場へのフィードバックや不具合傾向を定期共有し、データ主導型改善を進める
  • 軸受に限らず、標準部品・消耗品の情報もDX的に連携し、「ムダ」や「属人化」を外した運用体制をつくる

サプライヤー側もバイヤーの期待・現場実態を知る

  • 現場でどのようなトラブルが繰り返されているのか、納入製品の実際の使われ方まで踏み込んで調査する
  • 単なるスペック訴求ではなく、「どの現場でどんな課題が解決できそうか」を提案資料や納入実績データをもとに分かりやすくアピールする
  • 技術派遣や問題解析レポートを通じて、顧客現場の「一員」として課題解決に積極参加する

アナログ現場の「古き良き」から「新しい知恵」への進化を目指して

製造業界の多くの現場では今も「人の勘」や「昭和のノウハウ」が生きていますが、トラブル原因の多くもまた「昔からのやり方」に起因している場合がほとんどです。
過去の成功体験に固執することなく、IoTの活用や現場情報の水平展開による標準化・共有文化への進化を、この軸受管理という小さな部品選定から始めていくべきでしょう。

軸受の選定・管理は、地味ながらも工場の安定運転・生産効率維持の基盤そのものです。
「なぜ不良が起きたのか」を深く掘り下げ、「どうすれば再発しないか・未然に防げるか」を論理的に突き詰めることで、新たな現場改善の地平線が開けます。

まとめ:軸受から読み解く製造業現場の未来

現場で起きている軸受トラブルの大半は、正しい知識と設計標準、現場情報の共有によって未然に防ぐことができます。
バイヤー・サプライヤー・現場が一枚岩となって、情報や知恵を循環・可視化し、「点ではなく面」でトラブルを根絶できる体制づくりが不可欠です。

アナログとデジタルの知見を融合させ、「昭和の伝統」は活かしつつ、「現場至上主義」から「データ及び現場の知見・論理性」へとシフトさせていく。
それこそが、これからの製造業が世界に通じる強さとなり、健全かつ先進的な工場運営につながるのです。

これから軸受選定や不具合対策に関わる全ての方へ――。
一歩先の実践へ、徹底的な現場目線とラテラルな発想で、より良い未来を一緒に創っていきましょう。

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