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EV用モータのコアと基盤調達のポイントと最新動向

目次
はじめに:EV用モータ市場と調達環境の現状
EV(電気自動車)用モータの需要が世界的に急拡大しています。
地球温暖化対策として自動車業界全体が急速なEVシフトを進める一方で、部品の調達やサプライチェーンの構築がこれまで以上に重要な経営課題となっています。
特にモータの「コア」と「基盤」は、品質・性能・コスト・納期すべての観点でバイヤーや購買担当者が最も神経を使う部品の一つです。
昭和から続くアナログ的な取引慣行の残る製造現場では、最新動向をどれだけ理解し、どう現場目線の調達活動を進めていくかが競争力に直結する時代へ突入しています。
本記事では、自身の現場経験や管理職(工場長)としての視点から、EV用モータの「コア」と「基盤」調達のポイントおよび業界最新動向、さらには今後のトレンドも交えて、実践的な情報をお届けします。
EV用モータのコアと基盤とは何か
モータコアの役割と構造
モータコアは、電動モータの磁気回路を構成する中心部品です。
一般的に珪素鋼板を数百層から数千層重ねてプレスし、ラミネート構造で組成されます。
これによって磁気損失を最小限に抑え、より高効率のモータを実現します。
EV用モータコアは、従来の自動車用モータよりも遥かに厳格なスペックを要求されます。
抱える課題は、素材調達の安定性・材料コストの高騰・プレス金型の高精度化・薄板加工技術など、多岐にわたります。
モータ基盤(インバータ基板)の重要性
モータ基盤はインバータ回路の土台となる部分であり、パワー半導体や制御回路、センサなどが組み込まれています。
この基盤が高信頼性・高耐熱性・高絶縁性を有していなければ、EV駆動システム全体の安定性に関わります。
最近では、放熱性向上のためアルミ基板や、低抵抗配線を実現する銅厚基板の採用も増えています。
また、PCB(プリント基板)の多層化、狭ピッチ化による実装技術の高度化も目覚ましいスピードで進んでいます。
コアと基盤調達の現場目線ポイント
課題1:品質基準の明確化と妥協なきサプライヤ選定
EV用モータコアと基盤は、車載用であるがゆえに「信頼性基準」が圧倒的に厳しいです。
IATF16949(自動車産業品質マネジメントシステム)の認証取得は、サプライヤ選定のスタート地点でもあります。
部品調達で失敗しやすい典型例は、過去に他業界向けに実績があるからと言って「車載用途での力量検証」をスキップしてしまうケースです。
現場ではPPAP(生産部品承認プロセス)の適用や、サンプル段階での電磁損失・発熱試験など「見える化」検証を必ず実施しましょう。
また、中小サプライヤーの場合は経営基盤や納期遵守力のチェックを怠らないことが重要です。
課題2:グローバル調達と地政学リスク
モータコア主要原材料となる珪素鋼板や、先端基板材料は日本・中国・韓国・欧州などグローバルな調達網が必要となります。
近年は米中摩擦や主要サプライヤーの独占状態が強まる中、リスクヘッジの観点から「複数調達」は必須です。
また、サプライヤー監査の際には「材料の一次サプライヤー(ミル)」まで遡ることが大切です。
調達現場では、地政学リスク低減と、新興勢力の見極め(例:台湾・インド系素材メーカーの活用)をラテラルシンキングで検討することが求められます。
課題3:生産管理と納期・コストバランス
需要変動が大きいEV市場では、サプライチェーン上の柔軟な生産調整能力が極めて重要です。
コアや基盤はスペック変更が多発する傾向があり、現場のリードタイム短縮・部材調達スピード・内製外注バランスを最適化し続けなければなりません。
アナログ業界にありがちな「紙と電話とFAX」運用は、緊急時の情報伝達の遅さが致命傷になります。
少人数でもIT活用(調達Eサイト、EDI連携、自動発注システム等)を進め、デジタル対応の遅れを組織横断的にリスクと認識して改善しましょう。
最新動向:モータコア・基盤分野のイノベーション
1. ハイグレード珪素鋼板の開発競争
日本勢(日本製鉄、JFEスチールなど)と中国メーカーの間で、低損失かつ高磁束密度の珪素鋼板開発競争が進んでいます。
最薄部で0.15mm以下の極薄鋼板、日本オリジナルの積層技術、無方向性材の新規組成など、新素材投入が市場の大きな差別化要因となっています。
バイヤーはスペック表だけではなく「加工性」「長期供給体制」「脱炭素への対応」まで含めてトータルで評価する必要があります。
2. カスタム基板とモジュラー設計の広がり
基盤側では、カスタムインバータ&モータ基盤の需要が増加しています。
モジュラーデザイン(顧客ごとの仕様に合わせてカスタマイズ可能な設計)が加速度的に進展し、サプライヤーとの共同開発型ビジネスが盛んです。
これに伴い、DFM(Design for Manufacturability:設計と製造の同時最適化)や、APQP(先行製品品質計画)に基づく調達初期からのプロジェクト参画が現場購買の新しいスタンダードです。
3. GX(グリーントランスフォーメーション)への対応
脱炭素・CO2排出量可視化(カーボンフットプリント)の対応が、入札条件やサプライヤー格付けに組み込まれ始めています。
モータコアのプレス工程でのエネルギー源転換、廃材リサイクル比率向上、基盤へのエコ素材活用(バイオレジン等)など、環境配慮型調達も現場担当に求められるテーマです。
経営トップダウンの「ガバナンス」と、現場主導の「技術イノベーション」の両輪が組織に根付くことで、変化の波を乗り越えていくことができるでしょう。
サプライヤー側が知っておくべきバイヤー視点
調達現場における「現物」と「現実」のずれ
バイヤー(購買担当者)は、実際の調達現場・工場生産ラインと、会議室での数字(見積・計画納期・資料)とのギャップに常に悩んでいます。
サプライヤーとしては、コストや品質データのみならず「異常時の連絡体制」や「トラブル未然防止策」をセットで提示できるか否かが差別化の鍵になります。
サンプル生産時にあえて厳しめのテストパターン(自然災害や突発欠品を想定した納期変更)を組み込むことで、実運用レベルでの信頼構築につながります。
「協調」から「協働」へ、価値共創型パートナーシップの構築
昭和世代のアナログ取引では、価格・納期・品質などバイヤー主導の「言い値」が強かったのが現実です。
今後は、モータコアや基盤分野でも、設計初期段階から巻き込むことでコスト・機能・品質ベストミックスを目指す「共創型アプローチ」が主流です。
単なるピンポイント対応でなく、材料開発・工程効率化・グローバル調達の相互提案など、バイヤーと一体になって価値創出する姿勢が最重要となってきます。
今こそ求められるラテラルシンキングの調達戦略
従来型の「安い業者を探す」「既存のサプライヤーに依存する」という垂直思考(ヴァーティカルシンキング)だけでは、EV時代の変化に追いつけません。
むしろ、最新のトレンドや技術が自社・自部門の枠組みを越えている時代だからこそ、調達現場でも「ラテラルシンキング(水平思考)」が必須です。
・異業種(家電/IT/航空等)のサプライヤーから新しいモータコア加工技術を学ぶ
・国内外の展示会やラボで現場感覚を養い、自社仕様に持ち帰る
・サプライヤー同士の連携で新たな製造方法やリサイクルスキームを共同構築
など、視野を広げて多面的に考えることが製造業の発展の原動力と言えるでしょう。
まとめ:未来を創るEV用モータ調達の実践ポイント
EV用モータのコアと基盤は、高い技術革新スピード、グローバル供給網の複雑化、環境規制強化など多様な課題を内包しています。
昭和時代のアナログな商慣行から、最新デジタル対応やグリーン調達、共創型バリューチェーンへ移行できるか否かが、今後の企業・現場競争力を大きく左右します。
調達担当・バイヤーとしては、業界動向や技術革新を常にキャッチアップし、現場のリアルに根差した判断と柔軟な戦略転換が重要です。
サプライヤー側も、バイヤーがどんな課題を抱え、どのような状況判断をしているかを理解することで、より強固なパートナーシップを築くことができます。
「過去の成功体験」や「前例」に固執せず、ラテラルシンキングと現場起点の実践力で、製造業の新しい地平線を共に切り開いていきましょう。
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