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英語図面の表記ポイントと具体例

目次
はじめに:なぜ英語図面が重要なのか
日本の製造業では依然としてアナログな業務スタイルが根強く残っていますが、グローバル化やデジタル化の波は確実に押し寄せています。
特に、調達や購買、生産管理の現場では、国内外を問わず英語で記載された図面の取扱いが増えてきました。
英語図面を正しく理解し、スムーズなコミュニケーションを実現することは、品質管理の向上やコスト競争力の強化、海外との取引拡大に不可欠です。
この記事では、長年の現場経験をもとに、英語図面表記の押さえておくべきポイントと具体的な実例について詳しく解説します。
製造業界で働く方や、これからバイヤーを目指す方、サプライヤーの立場からバイヤーの意図を理解したい方にも役立つ内容です。
英語図面の基礎用語と必須知識
1. 英語図面と日本語図面の違いとは
英語図面は、英語を基調とした表記で設計情報が記載された図面です。
ISOやASMEなど国際的規格に則って作成されていることが多いのが特徴です。
寸法単位(mm/inch)、公差記号、表面粗さ、材料、加工指示など、細部の表現が日本語図面とは異なります。
一方、日本独自のJIS規格に基づく図面は、指示内容が日本語や国内特有の表現含まれている場合が多いです。
たとえば「止まり穴」や「下穴」など独自の表記や、「参考」「仮付」などの指示も日本語特有です。
英語図面ではこうした記載がISO規格やASME規格に則った英語表現となり、誤読や解釈違いが発生しやすいポイントです。
2. 英語図面でよく使われる記号と略語
他業種の方から見れば、製造業の図面は“暗号”のように映るかもしれません。
具体的には、以下のような略語や表記が頻繁に登場します。
– THRU: 貫通穴 (Through Hole)
– C’SINK: 皿穴 (Countersink)
– C’BORE: 座ぐり穴 (Counterbore)
– DIA: 直径 (Diameter)
– TYP: 同一形状同一寸法 (Typical)
– REF: 参考値 (Reference)
– FINISH: 表面仕上げ (Finish)
– MAT’L: 材質 (Material)
– QTY: 数量 (Quantity)
これらの略語や表記は日本語図面にはあまり出てきませんが、英語図面では“世界共通言語”として使用されます。
各記号の意味をきちんと理解し、不明点があれば曖昧なまま進めずサプライヤーやバイヤー双方で確認を徹底する姿勢が肝要です。
現場で使える!英語図面表記の実践ポイント
1. 寸法と公差の表記方法
寸法は「25.0mm」や「1.00in」など、小数点以下を明確に記載するのが国際規格のルールです。
また、公差は「±0.1」「+0.2/-0.1」といった具合に、左右対称もしくは非対称で明示されます。
具体的な例を挙げると、
25.0 ±0.1
(25mmで上下0.1mmの許容範囲)
1.00 +0.05/-0.00
(1インチで上限0.05インチ、下限基準値)
といった表記があります。
公差記号としては下記が代表的です。
– ±:プラス・マイナス
– ∅:直径
– R:半径
– SQR:角度
– ±0.05: 基準値からの許容範囲
– REF: 参考値(品質保証の対象外)
このあたりをしっかり読み解ける力が、調達・購買・製造のどの立場でも必要となります。
2. 表面粗さ・仕上げの指定
「Ra 3.2」や「Surface Finish: 1.6 μm」など、表面の滑らかさを国際単位系で指示する場合が増えています。
日本語図面では「Vブロック研磨仕上げ」など、工程や設備名が直接書かれることもありますが、英語図面ではあくまで最終性能値で指定することが多いです。
加工工程に過度に縛られず、クリアすべき品質だけ明示するのが、グローバル標準です。
3. 材料と熱処理・表面処理指示
材料の指定は「SUS304」「AISI 4140」など、国際的な規格に基づき表記されます。
また、表面処理についても「Anodized」「Black Oxide」「Zinc Plated」など、工程や仕上がりを具体的に指示されます。
これらを読み違えると品質事故や商流トラブルにつながるため、必ず仕様書や材料規格書も併読し、審査・検図を徹底してください。
バイヤー・サプライヤー両方で役立つ英語図面実例
1. 穴加工指示(THRU、BLIND、TAP)
【英語図面例】
4-∅8.0 THRU
(M10 TAP, 20.0 DEEP)
これは「直径8mmの貫通穴を4カ所、さらに同位置に深さ20mmのM10ねじ穴加工を施す」という指示です。
THRUは貫通穴、TAPはねじ穴、DEEPは深さを表します。
従来の日本語図面では「4-φ8 貫通、M10下穴 深さ20」といった指示内容になります。
しかし、「下穴」や「貫通」の略記は英語図面では伝わりません。
明確な加工方法や仕様を英語で表記し、現地の作業者と認識齟齬が出ないよう、図面の構成を標準化していく必要があります。
2. 参考寸法(REF)や典型寸法(TYP)の取り扱い
【英語図面例】
25.0 ±0.1
(4 PLACES TYP)
60.0 (REF)
「4 PLACES TYP」は「同一形状・寸法を4カ所に適用する」意味です。
「(REF)」はあくまで参考値扱いで、製造や検査保証の範囲外となります。
日本では「参考」や「略」など補足指示が多用されますが、英語図面ではしっかり明示し、曖昧さをなくします。
これは海外サプライヤー・バイヤーとの取引でも重要な心得です。
3. 表面仕上げ・熱処理の例示
【英語図面例】
Surface Finish: Ra 1.6 μm
Material: AISI 1045
Heat Treatment: Quench and Tempered, HRC 40-45
表面仕上げが「Ra 1.6μm」に指定されていれば、日本の「鏡面仕上げ相当」になります。
材質はAISI規格で1045(S45C相当)、熱処理は「焼入れ焼き戻し HRC40-45」指定であり、日本で用いる「焼入れ」や「焼戻し」と同義だと判断できます。
ただし熱処理などの工程は国・地域ごとで基準が異なるため、図面だけでなく仕様書・検査成績書も併せてチェックし、書類上の不一致を早めに抽出することが品質クレーム防止策となります。
現場から見た英語図面対応のあるべき姿勢
1. 「読める」だけで安心しない、積極発信の重要性
単に英語図面を“読める”というだけでなく、実際にどのような仕様で納品されているのか、トラブルが発生した場合にどこの記述が原因だったのかを体系的に把握しましょう。
曖昧な記載を見つけたら、「貫通穴?」と黙って進めず、必ずバイヤーや設計者に問い合わせる勇気が現場力を高めます。
海外案件では「聞かなかったお前が悪い」と言われることも少なくありません。
日本的な“空気を読む”文化から一歩抜け出し、お互い腹を割って確認し合うカルチャーの確立が、今後の業界発展に不可欠です。
2. 英語図面教育とデジタル化対応のススメ
若い世代やベテラン世代問わず、英語図面の読み方研修や現物を使った演習、国際規格や標準記号への理解促進を組織的に展開することが、これからの製造業のテーマです。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)対応では、2D図面だけでなく3D CADやデジタルデータ内での仕様記載も主流になりつつあります。
これらに“追従する”のではなく、“自分たちで主導権を握る”姿勢が、現場競争力強化につながります。
まとめ
日本のものづくりは、アナログ時代の蓄積と緻密な現場力が強みです。
しかし、英語図面という世界共通言語への対応力は今後ますます重要になるでしょう。
英語図面における表記の正しい理解や曖昧さ排除、国際規格・デジタル基準の活用は、バイヤーにもサプライヤーにも共通した大きなテーマです。
現場目線での気づきや積極的な改善提案、日々の勉強とアップデートを忘れず、昭和的な感覚に安住せず新たな時代のものづくりをリードしていきましょう。
製造業現場の未来は、あなたの一歩から変わります。
英語図面を、あなたの強みにしてください。
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