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投稿日:2025年6月9日

技術シーズを新事業・新製品開発へ展開する成功のポイントと手法および事例

はじめに:技術シーズが未来を切り開く時代へ

技術シーズを新規事業や新製品へ展開することは、多くの製造業が生き残りを賭けて挑戦しているテーマです。

しかし現場のリアルな実感として、ただ新しい技術を持っているだけでは実際のビジネスに結びつけることは難しいという壁に直面することが多いです。

本記事では、技術開発型のメーカーで20年以上の現場経験がある筆者が、今なお根強く残るアナログ文化や昭和的発想、そして現場ならではの実践的な視点から、技術シーズを新事業や新製品につなげるための成功のポイントと手法、具体的な業界動向や事例について深堀りしていきます。

技術シーズとは何か?本質的な理解が成否を分ける

技術シーズとニーズの違い

まず、技術シーズとは何かを正しく理解することがスタートラインです。

技術シーズは「自社が持つ独自の技術や知見、アイデアの種」です。

一方で、マーケットニーズは「市場や顧客が本当に課題と感じている要求」であり、この二つは似て非なるものです。

現場でありがちなのが「自社の技術(シーズ)がすごいからきっと売れるはずだ」と思い込むことです。

しかし、実際にはその技術が顧客ニーズに口を揃えてマッチすることは稀です。

このギャップへの正直な自覚こそが、シーズ展開のスタート地点です。

なぜシーズ起点の新規事業や新製品開発は難しいのか

新製品開発の会議で「これまでにない高性能部品を開発したから売れるだろう」「競合に真似されないテクノロジーを作ったから面白いはずだ」と盛り上がる場面は多々あります。

しかし、現実は甘くありません。

既存の市場が受け入れるとは限らないうえ、そのギャップを埋めるためのマーケティングや顧客開拓、そのための社内調整・説得・リソースの確保──昭和的なヒエラルキーや縦割り組織が色濃い製造業では、こうした工作が想像以上にハードルになります。

技術シーズを成功に導くカギ:現場力+戦略的思考

社内外の“壁”を乗り越えるマインドセット

ものづくり現場では、長年培われてきた固定観念と社内ルールが深く根付いています。

そのため、新しい技術シーズが芽を出す前に「前例がない」「やったことがない」「工場が対応できない」とブレーキがかかることが多いです。

現場の管理職経験者として言えるのは「なぜそれが必要なのか?」を現場目線で丁寧に説明し、「困った時には現場と一緒に手を動かす」姿勢を見せることが、最初の突破口になります。

昭和期の「トップダウン指令」だけで動かすのではなく、現場・開発・営業などの壁をまたいでコミュニケーションが取れるファシリテーターの存在が極めて重要です。

バイヤー視点のインサイトを知る

シーズの事業化に際して忘れてならないのが「バイヤーの本音」を知ることです。

バイヤー(購買担当者)は「仕入先の技術がどれだけ自社の課題解決や競争力強化に繋がるのか」という点を厳しく見極めます。

自社目線で「面白い」「新しい」と思い込むのではなく、バイヤーが何を重視し、逆に何をリスクとみなしているのか、その深層心理まで考察することが差別化への第一歩です。

アナログ現場で根強い業界動向:なぜシーズは広がらない?

いまだにFAXや手作業が残る現場では、ITやデジタル化は“流行り物” として扱われがちです。

しかし、逆にアナログだからこそ困っている「定形業務に埋もれた現場の知恵」や「潜在的な課題=ニーズ」を拾うこともできます。

現場観察やヒアリング、横断的な部署連携によって、既存業務の中に潜む「本質的な困りごと」を見つけ、そこに技術シーズを当てはめていく泥臭さが、成功の近道だと実感します。

技術シーズを形にする実践的なステップ

1. マーケットファクトの徹底的な収集

どんなに優れた技術シーズでも、それが「どこの誰の課題」になっているかリサーチしなければスタートラインに立てません。

現場への直接ヒアリング(現場改善担当やサプライヤーへの訪問)、既存客からの声の吸い上げ、展示会や業界紙の徹底チェックなど、地に足のついたマーケットファクト収集が基本です。

特に下請・孫請企業ほど、現場の課題やリアルな優先順位を知っているため、川上・川下の両方の現場で情報収集することを勧めます。

2. ターゲット顧客の絞り込み&価値提案の具体化

シーズに合致する顧客セグメント(業界・業種・会社規模・地域・工程など)を明確にし、「この技術が誰のために、どんなメリットがあり、どこが変わるのか」を絵解きで伝えることが重要です。

要件定義やPoC(実証実験)を小回りよく提供し、顧客現場で一緒に課題を解決していく「共創・並走型」のアプローチが効果的です。

何よりも「バイヤー自身のKPI達成や昇格評価につながる」成果を見せられる提案にすることで、話が一気に進みやすくなります。

3. プロトタイピングと現場テストの繰り返し

開発サイドが独りよがりにならないためにも、早い段階からプロトタイプやサンプルを作り、実際の現場でテストすることが不可欠です。

レビューやフィードバックをもとに改善→再テストというPDCAサイクルをいかに小さく回すかが、シーズ展開のスピードを決めます。

昭和型の「できあがるまで関係部署に見せない」といったクローズ文化を打ち破るチームビルディングも大切です。

4. 社内外ステークホルダーの巻き込み戦略

経営企画部門や営業、開発、製造、場合によっては主要サプライヤーも含めたプロジェクト体制を構築し、タテ・ヨコの連携を図ります。

現場力を理解してもらうためには、時にはワークショップ形式でアイデアを可視化する、試作品を共同開発するなど「実体験」できる仕掛けが有効です。

また、外部パートナーや産学連携を上手に使うことで、社内リソースだけでは解決できない“しがらみ”を打破することも可能です。

5. 成果を“理論+エモーション”で訴求する

理屈で正しさを説明するのは当然ですが、実際には「導入後の現場の変化」や「利用者の満足度」など、感情に訴える要素も非常に重要です。

実際に使った現場担当の声や、顧客企業でのビフォーアフターの写真・動画など、五感に訴えるアプローチで共感を得ることが、技術シーズの浸透・拡大に繋がります。

現場目線の成功事例に学ぶ:シーズ起点の新製品・新規事業化

ケース1:工場の自動化技術を横展開し、全く新しい市場を開拓

ある自動車部品工場では、工程内の搬送作業の自動化を目指し、AGV(自動搬送車)の社内開発に着手しました。

元々は自社の効率化・省人化が目的でしたが、サプライヤーや同業他社の現場担当と意見交換する中で「食品・医薬・物流業界の搬送現場でも同じような課題がある」と判明。

パーツの変更や制御システムの簡素化を施すことで、全く異業種の現場にもフィットするソリューションに成長。

今では食品や医薬の大手にも採用されるまでになりました。

現場でボトルネックを可視化し、技術シーズを異業界ニーズにマッチさせた好例といえます。

ケース2:アナログ業務の“困りごと”をIoT化、小規模スタートで拡大

昭和から続く部品メーカーでは、「月次棚卸しや在庫管理がアナログすぎてミスが多発」という悩みがありました。

そこで工場現場と協力しながら、「RFIDタグ」と「クラウド自動集計」をミニマム構成で実験したところ、棚卸し作業が半日から30分まで短縮。

さらに効果が実証されたのち生産管理システム全体と連携させ、サプライチェーンの透明化に繋げました。

現場目線の困りごとを拾い上げ、小さなPoCから成長させていくステップが、シーズ展開の王道であることを示す好例です。

バイヤー・サプライヤーから見た“シーズの魅せ方”とは

バイヤーが重視するポイントを押さえる

新しい技術シーズを提案するとき、バイヤーが知りたいのは「選定理由が社内で説明できるか」「リスクや導入後の差別化が明確か」という点です。

コストインパクト・納期(リードタイム短縮)・トレーサビリティや環境面など、自社の調達方針・課題とマッチしているかどうかが問われます。

技術的優位性だけをアピールするのではなく、「この技術を使えば御社のどんな課題が解決し、どのように利益に繋がるか」までブレずに示すことが求められます。

サプライヤー目線の“心に響く提案”の鉄則

「開発担当者がいくら熱意を持っても、購買・品証・現場が納得しなければ話が進まない」というのが現場経験者の本音です。

サプライヤーは“御用聞き”にならず、「この技術で一緒に新しいビジネスモデルを作りませんか?」と、共創パートナーの意識で挑むことが重要です。

事前に顧客企業やバイヤーの業界動向、現行業務の課題、競合分析まで徹底調査し、場合によっては提供価格やサポート体制にも柔軟性を持たせる。

そういった提案力が、グローバル化・デジタル化が進む今こそ問われています。

まとめ:ラテラルシンキングで新たな地平を拓こう

技術シーズの新事業・新製品開発は、単なる技術力の競争ではありません。

「顧客の深層ニーズに斜め上から切り込み、現場目線の泥臭さと戦略的な視点を融合させる」ことで初めて突破口が見えてきます。

アナログな製造業界だからこその悩みや昭和的な文化を否定するのではなく、その中にこそヒントがあるものです。

ぜひ現場のリアルな声とバイヤーの本音、そして時に業界の“常識”をラテラルシンキングで打ち破るというチャレンジ精神をもって、次世代のものづくりに挑戦してみてください。

読者の皆様が、この知見をベースに1歩前に踏み出すこと、そして日本の製造業がさらに進化することを願っています。

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