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投稿日:2025年5月25日

紙でできた消臭材の共同開発における重要なステップ

紙でできた消臭材の共同開発における重要なステップ

はじめに:製造業の現場から見た共同開発の現実

製造業の現場では、日々数多くの課題に直面しながらも、世の中に新しい製品を送り出すために努力が続けられています。

特に近年、エコ素材や環境配慮製品への要求が増しており、そのなかでも「紙でできた消臭材」はサステナブル社会の実現に向けた解決策として注目を集めています。

こうした製品の開発には、多くの場合、複数の企業や部署が力を合わせる共同開発の手法が用いられます。

昭和から続くアナログな仕事の進め方が色濃く残る一方で、モダンな開発フローやコラボレーションの必要性も同時に高まっています。

この記事では、私が現場で経験した視点を交えつつ、紙素材の消臭材を共同開発するうえで押さえておくべき重要なステップについて解説します。

なぜ「紙製消臭材」なのか?時代背景とニーズの変化

まず、現在なぜ紙製の消臭材が求められているのでしょうか。

従来、消臭材にはプラスチックや化学繊維が多く使われてきましたが、SDGsの流れ、高まる環境意識、海洋プラスチック問題への取り組みなどを背景に、「使い捨てでも環境負荷の少ない素材」が強く求められるようになっています。

また、スーパーやドラッグストアでの簡易包装、小型パッケージへの移行も進み、「家庭やオフィスで余分なゴミを出さずに消臭できる」という利便性もポイントです。

サステナビリティとコスト削減を両立させるためにも、紙の持つ加工性・リサイクル性に注目が集まっているのです。

共同開発を成功させるためのステップ

1. プロジェクト設計と目標の明確化

製造業の現場でもっとも見落とされがちなのが、初期段階での「共通目標の明確化」です。

紙製消臭材のような新領域の共同開発では、個々の企業・担当者が持つゴールイメージが異なることが珍しくありません。

例えば、
・デザイン性重視なのか、
・機能性を最重視するのか、
・コストを極限まで削減するのか、
・量産化のしやすさを重視するのか、
といった意図を、最初にきちんと調整する必要があります。

このステップを曖昧にしたまま走り出すと、「後戻り作業」や「仕様変更」が多発します。

昭和時代のような職人芸と現場信頼だけに頼るアプローチでは、スピード感と柔軟性が損なわれてしまうのです。

2. サプライヤーとバイヤーの「利害調整」

紙素材の消臭材開発では、サプライヤー(素材メーカーや加工メーカーなど)とバイヤー(企画・販売側、一般的には大手メーカー)が協力するケースが多くなります。

ここで大切なのは、「お互いの立場と困りごと」を事前にしっかり共有することです。

バイヤー側は、「安定的な品質供給と短納期」が最優先のテーマである一方、サプライヤー側には「既存設備での量産適合」や「最小ロット確保」などの事情があります。

このギャップを埋めるためには、
・事前にNDA(秘密保持契約)や契約条件を明確に締結
・お互いの強みと弱みを理解した上で課題を洗い出す
・現場担当者同士で密にコミュニケーションを取る
ことが不可欠です。

「口約束」「阿吽の呼吸」ではなく、文書化と定期ミーティングで仕組みづくりを進めていく必要があります。

3. 試作と評価:現場主導のスピーディなPDCA

共同開発において最大のリスクは、「仕様満たしのための時間ロス」と「期待値の食い違い」です。

特に紙素材は、化学繊維に比べて湿度や温度変化、外部環境に大きく影響されます。

設計図面上では成立していても、現場試作で「思ったより臭いを吸着しない」「成型加工時に裂けやすい」といった不具合が頻発します。

このため、試作段階から現場エンジニアや工場担当、営業・企画も巻き込んだ「多部門連携の迅速なPDCA」を回すことが成功の鍵になります。

昭和的な「俺たちの勘」だけでなく、データや評価指標を明確にして、サンプリングテストや分解分析のフィードバックをガラス張りにすることが重要です。

また、問題発生時には「責任のなすり合い」文化に陥らないよう、イシューを具体化し、現実的な対策を事前に用意しておくことも必要です。

4. 標準化・量産設計とQC(品質管理)の再定義

いざ消臭効果が出ても、小ロットや試作品レベルで満足してはいけません。

ここから量産移行するためには、新しいQC(品質管理)基準を策定する必要があります。

紙素材はロットごとに厚みや粒子分布、含水率が変わりやすく、特に「消臭性能のバラつき」や「外観品質の安定化」が課題になりやすいです。

生産管理部門、品質保証部門が一体となって、
・インライン検査機器の導入
・QC工程図の更新
・トレーサビリティ管理の徹底
を進める必要があります。

また、アナログな現場文化が根強く残る場合には、「目視検査の標準化」やベテラン作業員へのヒアリングも取り入れ、昭和流と令和流のハイブリッドな管理手法を模索しましょう。

5. サステナビリティ証明とコンプライアンス

紙製消臭材のアピールポイントは「環境対応」であるため、第三者機関による認証や環境負荷低減の証明が欠かせません。

FSC認証やエコマーク取得を検討し、サプライチェーン全体でコンプライアンスを徹底します。

また、消臭加工に使う薬剤や付加材料についても、人体や環境に与える影響を十分に調査・管理することが必要です。

リスクを未然に防ぐには、初期段階からMSDS(製品安全データシート)やSDS(安全性データシート)の整備、サプライヤーと共通テンプレートで管理しておくことを推奨します。

バイヤー・サプライヤーの「見える化」マインドセット

相互理解を深める対話の場の設定

共同開発の成否を左右するのは、一重に「コミュニケーション」です。

昭和時代は「現場同士の阿吽の呼吸」や「最終的には飲みニケーション」での解決が一般的でしたが、デジタル時代は「情報の見える化」と「双方向の対話」が求められています。

バイヤーは「なぜここまでコストが下がらないのか」「なぜこの工程が省けないのか」という現場の都合を理解し、サプライヤーは「なぜ短納期・急な仕様変更が要求されるのか」を理解する。

現場レベルの座談会やオンライン会議を定期化し、課題や障害について率直に話し合うヨコ軸の連携が不可欠です。

業界のアナログ文化をどう変革するか

製造業ではいまだに「FAX発注」「電話一本の鶴の一声」「紙ベースの伝票起票」といったアナログ文化が根強く残っている企業が多いです。

共同開発プロジェクトを進める上では、こうした業界独特の習慣が障害になることもあります。

一方で、これを全て切り捨てるのではなく、「現場の実情に即しつつ、徐々にシステム化・DX化していく」ことが重要です。

クラウドを活用した進捗管理ツールやチャットツールの導入、情報共有プラットフォームの利用なども効果的です。

大切なのは、「やらされ感」でなく関係者全員の意識改革を促すコミュニケーションと、現場の負担を減らす実用的なツールを選ぶことです。

まとめ:未来への布石としての共同開発

紙でできた消臭材の共同開発は、単なる新商品開発にとどまらず、製造業全体の「価値観の転換点」とも言えます。

アナログな業界風土の中で、現場力・現物主義を維持しつつ、デジタル活用やサステナビリティへの対応を両立させること。

そこには多くの苦労が伴いますが、長年現場で鍛えられてきた「ラテラルシンキング(分横断的な思考)」こそが、新たなソリューションの礎となります。

バイヤーを目指す方、すでに現場でサプライヤーと協働する方にとっては、「現場目線の実践的なステップ」と「お互いの立場への理解」が、真のイノベーションを生み出すカギです。

今後も紙素材などサステナブルな製品の市場はますます拡大が見込まれます。

ぜひ本記事の内容を参考に、現場から新たな地平線を切り開いていきましょう。

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