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DRBFMを効果的に運用するための作成ノウハウと実施ポイント

目次
DRBFMとは何か? 製造業の現場で注目される理由
DRBFM(Design Review Based on Failure Mode)は、トヨタ自動車が開発した設計上のリスク低減手法の一つです。
従来からあるFMEA(Failure Mode and Effect Analysis:故障モード影響解析)と同様の構造を取り入れつつも、その考え方や運用方法には大きな違いがあります。
従来、製造業の現場では「トラブルが起きてから対処する」「徹底的にチェックリストを回してリスクを消し込む」といったアプローチが主流でした。
しかしこれでは、複雑化・高度化する製品や工程において新たに発生する“見えないリスク”には対応しきれなくなります。
DRBFMは「変更点」にフォーカスし、その変更がどのような波及的影響を与えるかを実際の現場のメンバーが集まり、徹底して議論する点で優れています。
昭和から続くアナログ的な発想でも現場主体の“違和感”や“懸念”を拾いやすいのが特長です。
DRBFMを効果的に運用するための基本フロー
DRBFMを現場で実践する際には、以下の基本フローがあります。
1. 変更点を明確にする
まず設計や工程で「どこを変えるか」を明確にします。
これは例えば部品の形状、素材、サプライヤの変更、工程順序の見直しなど多岐にわたります。
現場の図面や工程表を前に、過去との「違い」を洗い出していきます。
“なんとなく変えた”という曖昧な現場感覚もしっかり記録することで後工程のトラブルを未然に防げます。
2. 変更点による影響を検討する
次に、その変更点がもたらす“影響”について細かく分析します。
ここで大切なのは、机上だけで済ませず、実際の現場担当者や多部門(例:設計・製造・品質・調達)を巻き込んで、リアルな「現場感覚」を議論に反映させることです。
たとえば「この形を変えたことで、現場での組み立て性に悪影響がでないか」「部品調達リードタイムに遅延が起きないか」などです。
3. 議論の記録と対策立案
出てきたリスクや問題点は必ず記録します。
それぞれのリスクに対し、「どう予防するか/検知するか/対応するか」まで具体的な対策を合意し、責任者を明確に定めます。
4. フィードバックと継続的改善
DRBFMは“やって終わり”ではありません。
実践後、実際に発生した不具合や想定外の事象を必ずフィードバックし、同様のトラブルを繰り返さないための根本的改善につなげます。
現場での知恵や経験を活かして“生きた教訓”とすることが大切です。
DRBFM実施のノウハウ:現場で使えるポイント
全員参加で「違和感」を拾い上げる
DRBFMの価値は「多様な視点のぶつかり合い」にあります。
現場作業者、エンジニア、品質担当、サプライヤなど、できるだけ多くの関係者を巻き込みましょう。
ベテランの一言や、サプライヤが持つ“業界しか知らないアナログリスク”への感度も大切にしてください。
議論を妨げないファシリテーション
上司や設計主導だけの一方通行になってしまうと、率直な意見が出なくなります。
自由に発言できる雰囲気づくり、議論が脱線しすぎないよう柔軟に軌道修正するファシリテーションが求められます。
「気になる」「心配だ」といった感覚的な指摘も否定せず拾い上げることが重要です。
「見落とし視点リスト」で抜け漏れ防止
変更点や影響検討の際、どうしても「想定外」に対する網羅性が薄くなりがちです。
代表的なリスクや業界過去事例を“見落とし視点リスト”として事前にまとめておくことをお勧めします。
これにより思い込みによる抜け漏れを防げます。
現場の見える化と実地確認
ペーパーワークや会議室での議論だけでは、想定しきれないリスクが隠れている場合がほとんどです。
変更となる現物(サンプル品・現場の現物・デジタルツインなど)を必ず確認し、その場でイメージギャップを埋めることが絶対条件です。
定期的なレビューとアップデート
DRBFMの“生きたツール化”のためには、定期的に会議体を設け、前回出た改善点やフィードバック事項の進捗を確実にフォローアップしましょう。
これにより運用が形骸化することを防げます。
昭和的アナログな業界でも活きるDRBFM活用事例
多くの製造業(特に伝統的な下請・中小工場)では、「とりあえずやってみる」「昔からこれでやってきた」方式が根強く残っています。
しかし、DRBFMの現場中心・変更重視の考え方は、こうしたアナログ的な文化とも親和性があります。
たとえば金属加工業では、治具や工具の形を若干変更するだけで、現場作業者の手元作業や段取り替えの“肌感覚”が大きく変化します。
こうした属人的“違和感”をそのまま会議で表現し、全員で知見を共有しておくことで、微細な変化に伴う大きな工程ミスを未然に防ぐことができます。
新しい手法を一から導入しようとせず、既存の確認手順やQCサークル活動にスポット的にDRBFMの「変更視点」を取り入れるのも効果的です。
また、アナログ現場では「書類にせず口頭文化」で伝わった情報が失われやすいため、DRBFM導入を機に「議事録を残す」「写真で変更内容を共有する」などの改革を進めるケースが増えています。
これが現場ナレッジの標準化、次世代育成にも寄与します。
バイヤー・サプライヤーの立場から見るDRBFMの重要性
バイヤー視点:サプライヤとの合意形成に不可欠
バイヤーがサプライヤとの取引において、変更リスクをコントロールしコストや納期・品質トラブルを防ぐことは大前提です。
DRBFMを活用し、設計変更点や部品切り替え時のリスク洗い出しをサプライヤと共有することで、責任範囲や必要な検証内容を明確にし、合意形成をしやすくなります。
また、納入仕様書や品質保証協定の、ただの「お役所的チェックリスト」化を防ぎ、現場担当者とのリアルな温度感を合わせることができます。
これは、グローバル化が進む今後の製造業にとって避けては通れません。
サプライヤ視点:顧客の本音と優先度を見抜くツール
サプライヤにとっても、バイヤーがDRBFMを進める背景には「何を重視しているのか」「どこに一番のリスクを感じているのか」といった“真のニーズ”が隠れています。
DRBFMの議論の中で、顧客の心配点や優先事項を的確に把握し、提案力や提案スピードに活かすことで他社との差別化ができます。
更に、自社でも類似トラブルや知見をもとに提案型のリスク対策(「その変更なら、ここも見ておいたほうがいい」といった+α提案)を積極的に行うことで、バイヤーからの信頼度も確実に上がります。
これは“守り”の品質管理から“攻め”の営業活動にもつながります。
DRBFM活用の今後~アナログとデジタルの融合へ
近年は、DRBFMの“変更見える化”をDXツールで自動化・データ蓄積する動きも活発です。
各種PLM(製品ライフサイクル管理)システムや現場のIoT情報と連動し、「いつ・誰が・どんな議論をしたか」「どの変更時にどんなトラブルが出たか」という履歴が資産となります。
ただし、ツール化が進むほど、現場の温度感やアナログ的気づきをどう記録・伝承していくかも今後の課題です。
現場の“違和感を表現する文化”をDRBFMというフレームワークで育て、デジタル化された新時代の「現場力」に進化させていくことが、今後の製造業競争力に欠かせないといえるでしょう。
まとめ:DRBFMは現場の未来をつくる「対話の場」
DRBFMは単なるリスク管理手法ではありません。
現場の暗黙知やノウハウ、作業者の肌感覚など、“人”を中心に据え、対話を通じてリスクを見える化し、全員で共有・未然防止する新たな現場文化を育てる「対話の場」です。
昭和時代から続くアナログなものづくりにおいても、DRBFMの問題発見・合意形成力は絶大です。
これからバイヤーを目指す方、サプライヤーとして現場力を高めたい方、製造業の現場変革を目指す皆さんは、ぜひDRBFMを“自分ごと”として活用し、より安全・安心で高品質なものづくりを実現してください。
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